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日本一の下請け屋さん、ウォータフォール型受託開発で成長をめざす!

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「私たちは、日本一の下請け屋さんをめざしています。」

創業2年のシステム開発会社「マイクロネットワークテクノロジーズ(以下、MNT)」代表取締役社長である藤方裕伸氏の言葉は意外なものだった。

「システム開発って、お客様や使う製品について、いろんな情報がなくちゃできません。その情報力は、大手SIerにはとても及ぶものじゃありません。だから、私たちは、彼らの下で開発を請け負っているんですよ。」

ここまでの話ならば、何処にでもありそうな受託開発会社だが、その先が少し違っていた。

「私たちは、徹底して品質を追求しています。品質をしっかりと作り込めば、手戻りもなく、余計なコストはかかりません。当然、下請けですから世間相場の単金ですが、十分に利益が出ますよ。」

お客様に対して責任を果たし、十分な満足を提供できる。同時に自分達も満足を得ている。その要となっているのが「品質保証」だという。では、どうやって、それをやっているのかと聞いてみた。

「仕様をまとめた者がPMも行う。システムのことを一番知っているわけですから、良いシステムができます。開発は、上流から下流へ向けての伝言ゲームみたいなものですから、この伝言ゲームを繰り返すことにより情報が劣化してゆきます。それを防ぐためには、それしかありません。」

品質保証を担当する井川正昭氏がそんな話をしてくれた。そして、つぎのような質問を投げかけてみた。

「確かに理屈は分かりますが、それは同時に属人化を招いてしまうんじゃないですか。そういう個人に依存するやり方で、安定して品質保証なんかできないのでは?」

井川氏は、笑みを浮かべながら次のように応えてくれた。

「それは、心配ありません。私たちには、品質保証のためのチェック・リストがあるんです。これまでの経験によってブラッシュアップされたノウハウの蓄積です。これを使って、一定の品質水準を維持できるようにしています。」

なるほど、これかと合点がいった。

開発しようとしているシステムや現場に熟知しているエンジニアの存在は、絶対に必要だ。ある意味、この部分については、徹底して属人化すれば、現場の信頼を得られるし、判断も迅速に行える。しかし、これにだけ頼っていると、人によって開発品質にばらつきが出てしまう弊害もある。それを標準化された品質保証チェックリストで徹底して確認する。属人化と標準化のいいとこ取りの組合せで、プロジェクト全体の品質を確保しているということなのだろう。

「品質には、外部品質と内部品質があります。前者は見た目の品質で、後者は中身の品質です。品質管理の多くは、この外部品質に偏りがちで、内部品質に徹底して取り組まないからバグが出たり、要求品質を満たせなかったりするわけです。私たちは、この内部品質にこだわっているんです。」

チェックリストはそのためのものだという。

「でも、要求品質は、時間と共に変質しますよね。御社は、ウォーターフォール型で受託開発をされているわけですから、これに対処するのは難しいでしょ。」

「おっしゃるとおり、悩ましい問題です。だから、要求の変更に対応することで損することも得することも、お客様にオープンに説明するようにしています。そうやって、お客様に納得して頂き、信頼を得るようにしています。」

お客様に「決めて下さい」しか言えないSIerも少なくない。お客様に直接向き合い、話を聞き、言うことも言う。品質を作り込むことへのこだわりがしっかりとあるからこそ、こういうお客様との向き合い方ができるのだろう。

「私たちの組織は、ブロックじゃなくて、粘土なんです。」

この言葉も記憶に残った。お案件によって、フェーズによって、必要とされる役割も機能も変わる。その時々に最適な人材をダイナミックに組み合わせて提供することにこだわっているという。

「でも、そんなに人数が多くないのに、そんな柔軟な対応ができるんですか。」

「うちには、ひとりでいろいろなことをこなせる人材がいます。絶対数はそれほど多くはありませんが、そういう人間がいるからチームは柔軟に対応できます。そして、何よりも品質にこだわれば仕事に余裕ができますからね。うちには、時短勤務で働いている女性もいます。それでも十分に仕事はこなせます。」

「人のパワーが、会社のパワーですから。」

今月だけでも16人の社員を新たに雇い80名ほどに増やしたという。品質への徹底したこだわりが、人を育て、効果的で効率の良い仕事を実現している。それは同時に、お客様との信頼関係を築き、ビジネスも成長させてゆく。話を聞いて、なんて当たり前のことをやっているのかと思った。しかし、その当たり前をやり抜くことに徹底してこだわっていることに感銘を受けた。

ウォーターフォール型受託開発と聞くと、まさに「システムインテグレーション崩壊」の最前線であるようにも思えてしまう。

「元請けがウォーターフォールだから、下請けである私たちもウォーターフォールにならざるを得ません。品質へのこだわりと、私たちの方法論は、どんな手法であっても対応できますよ。」

拙著「システムインテグレーション崩壊」の読者でもある井川氏から、「自分のなかでもやもやしていたことを文章にしてもらえてくれてすっきりした」とのコメントして頂いた。そんな彼らだから、人一倍SIビジネスの厳しい現実を知っている。それでもあえて新しいビジネス・モデルにこだわらず、従来型のやり方を追求し極めることで、ビジネスを成長させている。これも、ひとつのポストSIビジネスのカタチなのだと実感した。

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とても明るく、爽やかな印象のオフィスだった。「下請け」を自認する中小のSIerでこのようなところはあまり見たことがない。だから若い人たちも集まり、社員も増えてゆくのだろう。そういうところにも、自分達の仕事への自信、社員への想いが感じられた

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「ITの最新トレンドとビジネス戦略」【2015年3月版】リリース

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*「コレ1枚で分かる最新ITトレンド」を全面改定。
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*IoTの記述を追加し、より分かりやすいものにしました。
  IoTとソフトウェア制御の関係やIoTデバイスのスタックについて整理しました。
*「アナルティクスとビジネスインテリジェンス」のセクションを追加しました。

こんな方に読んでいただきたい!

  • IT部門ではないけれど、ITの最新トレンドを自分の業務や事業戦略・施策に活かしたい。
  • IT企業に勤めているが、テクノロジーやビジネスの最新動向が体系的に把握できていない。
  • IT企業に就職したが、現場の第一線でどんな言葉が使われているのか知っておきたい。
  • 自分の担当する専門分野は分かっているが、世間の動向と自分の専門との関係が見えていない。
  • 就職活動中だが、面接でも役立つITの常識を知識として身につけておきたい。

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目次

  • 第0章 最新ITトレンドの全体像を把握する
  • 第1章 クラウドコンピューティング
  • 第2章 モバイルとウェアラブル
  • 第3章 ITインフラ
  • 第4章 IoTとビッグデータ
  • 第5章 スマートマシン

>> 詳しくはこちらをご覧下さい。

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