「本当にやる気があるのですか?」と首をかしげたくなる提案活動
「この案件を獲るために、お客さま内に大きなシェアを持つA社(大手SIer)の下でやるのがいいように思っていまして、彼らとの関係作りからはじめようと思っています。」
「手近な運用から入り、何を提案すべきかを探った上で、提案をまとめようと考えています。」
「まだまだ、お客さまの考えを十分に聞き取れているとは言えません。もう少し時間をかけて、情報収集をしてから、提案しようと考えています。」
こういう話しを聞くと、「本当にやる気があるのですか?」と首をかしげてしまう。
確かに、適切なアプローチ・ルートを考えることや、情報収集を徹底し的確で精緻な提案内容を組み立てることは大切だ。しかし、それは提案をクローズするために必要なことではあっても提案のチャンスを得るためにすることではない。残念ながら、このようなアプローチを続けている限り、いつまで経ってもどこかの下請けに甘んじるか、自ら進んで競合状況を演出することになる。
提案活動においてまず行うべきことは、ある程度の情報収集の上で、きっとこんな課題を解決したいはずだ、こんなニーズがあるはずだと仮説を立てる。その上で、意志決定に関わる人が誰かを見つけ出し、その方にその仮説を伝え、「これが実現できるなら、私どもの提案を真剣に検討していだけますか?」と確認し、お客様から「お願いします」という言葉を頂くことからはじめなくてはいけない。
具体的には、次の3つのステップをこなす。
「あるべき姿」の合意
課題を解決し、ニーズを満たした結果、「どうなっていたいのか」を合意すること。「どのよう実現するか=手段(To Do)」ではなく、「どのような成果を実現したいのか=あるべき姿(To Be)」を合意すること。
マイルストーンの明確化
次は、どのような段階を経て「あるべき姿(To Be)」に至るかを明らかにすること。具体的な製品やサービスの名称を示す必要はない。それは、もう少し後でも買わない。
意思の表明
最後に、自らの強い意志と安心感をお客さまに与えること。「あるべき姿(To Be)」を実現するにあたり、自らもリスクを覚悟で真摯に取り組む姿勢を示すことで、お客さまに安心と信頼を与えることだ。
お客さまは、常に厳しい現実に縛られている。そのため、お客さまだけでは、どうしても目の前にある様々な制約条件を前提に、手段(To Do)に縛られた解決策しか考えられないことが多い。だからこそ、営業は、そんなお客さまの夢を代弁し、しがらみのない本来のあるべき姿(To Be)を提示してあげるからこそ、存在価値がある。まずは、ゴールをお客さまとしっかり共有すること。それがあって、はじめて、提案活動のイニシアティブを握ることができる。
手持ちの製品やサービス売ることや、お客様からの「こうやって下さい」といった手段(To Do)にばかりとらわれてしまい、結果として「どうなっていたいのか=あるべき姿(To Be)」の合意が曖昧なままにことを進めてしまえば、お客様の満足を得られる保証はない。それ見出すために、時間をかけて情報収集してもなかなか目的を達することはできない。意志決定に関わる人や現場に精通したベテランの方に、「御社でいま大きな負担となっている在庫を半減できれば、成功ということでしょうか」、あるいは、「お客様からの電話やメールでのお問い合わせを、3割減らすことができれば、目標を達成できたと言うことになりますか」といった成功の基準を確認し、合意することだ。
だらだらと時間をかけて調べるのではなく、「あるべき姿はこうですね」と仮説を提示する。こういう議論を先ず行い、その達成のための提案であること、そして、提案の合意を取り付けることからはじめなくてはならない。
提案活動とは、お客さまと「あるべき姿」を合意し、一緒になってそのゴールを目指しましょうと握手することからはじめるものだ。それを実現するルートや手段を具体化することは、クローズのための活動であり、スタートのための活動ではない。
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今版は、特に相当に気合い入れてテクノロジー編を大幅改訂です。「IoTとビッグデータ」と「スマートマシン」をいろいろと手直しをしました。
テクノロジー編(228ページ)で、特にご覧いだきたいポイントは、次のページです。
- WebスケールITについて解説。
- クラウドサービス事業者のポジショニング。
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- コンバージド・システムとハイパー・コンバージド・システムの比較。
- IoTとビッグデータ」とCyber-Physical systemsとの関係。
ビジネス戦略編(51ページ)では、SI事業者の課題とそれに対処する戦略を新たな考察を踏まえ刷新いたしました。
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>> ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA
こんな方に読んでいただきたい!
- IT部門ではないけれど、ITの最新トレンドを自分の業務や事業戦略・施策に活かしたい。
- IT企業に勤めているが、テクノロジーやビジネスの最新動向が体系的に把握できていない。
- IT企業に就職したが、現場の第一線でどんな言葉が使われているのか知っておきたい。
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目次
- 第0章 最新ITトレンドの全体像を把握する
- 第1章 クラウドコンピューティング
- 第2章 モバイルとウェアラブル
- 第3章 ITインフラ
- 第4章 IoTとビッグデータ
- 第5章 スマートマシン