ポストSIビジネス:新規事業開発とは「できないこと」を何とかする取り組み
新しい事業に取り組もうとするとき、「どうすればこれまでの事業を守れるだろうか?」と考えてしまうのは当然のこと。しかし、既存事業を前提に考えれば、新たな発想はなかなか生まれてこない。また、今できることの範囲で、新たな事業を考えようとする。自分達が今持っている人材やスキル、資金余力、顧客チャネルなど、限られた範囲で「できること」を考えようとする。
「できること」を起点にすると・・・
- できることの範囲でうまく行く、自分達に都合の良い市場を作り上げてしまう。
- そこで、自分達に都合良く振る舞ってくれる顧客を作り出す。
- 都合の良い統計データを集め、そういう市場と顧客があたかも存在するかのような都合の良い解釈を沿えて、上司を説得するためだけの事業計画書を作り上げてしまう。
私は、これを「新規事業の3つの創造物」と言っているのだが、そんな都合のいい話は存在しない。所詮は「想像」の産物としての「創造」であり、うまくゆくはずはない。
「どうすればこれまでの事業を守れるだろうか?」という発想をいったん棚上げし、「もし既存事業がなければ、何をすべきだろうか?」と考えてみる。今の自分たちは「何ができるか」ではなく、「何をすべきか」をまず考える。
「変わらなければいけない」との想いだけで、どこへ向かうかを定めないままに動き出すのではなく、まずは目的地を定めること。そこに描かれた「あるべき姿」と現実には大きなギャップがあるはずだ。そのギャップを「見える化」する。そうしなければ、何にどう対処すればいいのかわからない。
こんな取り組みをしてみてはどうだろう。
1.具体的なお客様の顔を思い浮かべる
どの会社のどの部門で、何をしている誰々さんを、名前と顔と共に思い描くこと。そして、その人にとって、困っていること、やりたいことは何かを具体的にイメージすること。
2.「何をすべきか」をどう実現するかを考える
当然、自分達に「できること」と「できないこと」が明確になる。「できること」は、放っておいてもできるので、むしろ「できないこと」をどうすればできるようになるかを注力する。提携、買収、育成などいろいろと知恵をめくらせることで、「できないこと」をできるようにする。こうやって、「やるべきこと」が実現できる。そして、そこには具体的なお客様がいる。「できないこと」こそがギャップだ。これをできるようにして行く取り組みが、新規事業開発だ。「できること」だけで何とかしようでは、うまく行かない。
3.ギャップを明らかにし、あるべき姿を起点に、逆引きでマイルストーンを刻んでゆく
そのつながりを物語として描いたものが「戦略」だ。定めたマイルストーンごとにKPIを定め、前節で紹介した組織・体制や運営方法で新しいビジネスを起ち上げる。
「顧客開発モデル」や「イノベーション」についてスタンフォード大学などで教鞭を執るスティーブ・ブランク氏は、既存事業を抱える企業が新たな事業を始めるためには、次の4つの取り組みが必要だと述べている。
- 既存事業部門の外部に新しい組織を作ること
- 10件のうち1件しか成功しないことを覚悟すること
- 新しい組織に対し、ヒト、モノ、カネを安定的に提供し続けること
- 新しい組織に「創業者」タイプの人間を集めること
覚悟のいる話だ。しかし、そういう覚悟なくして新しい事業が生まれないこともまた覚悟しなければならない。
「我が社が今日どこの位置にいるかはなんの慰めにもならない。市場のほかのプレーヤーより早く前進しなければ、その企業は死んでいるのであり、呼吸が止まっていないだけだ」
GEのCEOを務めたジャック・ウエルチの言葉だ。もはや、立ち止まっている余裕などない。
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