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「2015年問題」の本当の問題

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「今は運用の仕事しかしていません。新規開発の案件はほぼ皆無です。」

ある大企業のシステム子会社の方からこんな話を伺った。この会社は、親会社の仕事しかしていない。親会社には、いまは大きな開発案件はなく、「2015年問題」には無縁だそうだ。

「開発の需要がない訳ではないんです。でも、そこそこ規模があるとオフショアだし、小規模な案件だと自分達でやっちうし、モバイルなんかになると我々も手が出せなくて、結局開発案件がとれないんですよ。何とかしなくちゃなあとは思っているんですけどね・・・」

「2015年問題」の行き着く先を先取りしているような話だった。

  • マイナンバー制度(社会保障と税の共通番号制度)

2016年1月に運用開始。2015年は、全国の地方自治体や政府機関のシステム改修が集中。銀行預金や医療に関する情報もマイナンバーに紐付けされ、企業も従業員の給与支払いなどのシステムを改修が必要。

  • 電力小売り自由化

2016年4月から施行。新電力会社は、料金計算や顧客管理などのシステムを新規開発。電力会社から送配電部門を切り離す「発送電分離」など電力改革に伴うIT需要は1兆円規模。

  • 日本郵政グループシステム刷新

2014年度から2016年度までに4900億円を投じてシステムを刷新。ピーク時には1万人の開発要員が必要。

  • みずほ銀行勘定系システム刷新

2017年1月に運用開始。投資規模3000億円以上、ピーク時8000人規模の開発体制。2015年は開発とテストの作業が集中。

今年から来年にかけて、プログラマーやSE、プロマネが払底する。嬉しい悲鳴である一方、対応できなければ大きな社会問題になることが懸念される。しかし、それ以上にこの業界にとって、大きな問題となるのは、優秀な人材が、新しいテクノロジーに接するチャンスを奪い、スキルの停滞をまねくことだ。

2017年以降、オリンピック需要が始まるとも言われるが、そこに求められるテクノロジーは、上記に挙げたような大規模な業務系システムではない。モバイルやウエアラブル、IoTやビッグデータ、HTML5などのこれからのテクノロジーの採用を前提とするだろう。また、クラウドを前提に構築され、アジャイルやDevOpsにも対応しなければならない。しかし、従来型の延長にある特需が、人材を抱え込んでしまえば、来たるべき時代に備えることはできなくなってしまう。今の需要が崩壊しても直ちにスキルを切り替えることなどできるはずもなく、人材はあっても需要に応えられない状況においこまれるのではないか。

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また、「若者」の人手不足も深刻化するだろう。2015年から2020年にかけて、我が国の生産年齢(15歳〜64歳)人口は341万人減少すると見込まれている。また、昨今の情報処理系あるいは電算機系といわれる専門学校が、医療系や介護系に換わり、この業界への若者人材流入が入口で絞られてしまっている。

人数を増やし工数増やすことが、業績向上に直結する収益構造は、もはや社会構造的に成り立たなくなろうとしている。

目の前にある需要に応えることは、経済的には魅力的だが、将来を見越した業態の転換に今から向き合わなければ、冒頭の事態はどこにでも起こりうる得る話だろう。

ただ、それさえもクラウドや人工知能に代替されるかもしれない。まずは、運用の自動化や自律化がここ数年で急速に進むだろう。インフラ構築はIaaSに代替される。プログラム開発でもテスト工程の自動化がまずは進み、開発もPaaSやSaaS、さらには「人工知能による開発」も登場し、「工数」は大幅に削減される。このような事態をも見越して、収益構造、あるいは業態の改革を考えなければ、急激な需要の減退に対処することはできない。

2015年は、人材需要はピークを迎える。しかし、2016年から2017年に始まる需要崩壊に備えるには、少なくとも3年は掛かるだろう。今年は、まさに正念場でもある。

トレンドをしっかりと読む必要がある。そして、これまでの成功体験のバイアスに引きずられることがないように、あらたな施策を打ち出すことだ。

今年は「未(ひつじ)年」だが、この干支は「"未"来」に通じる年でもある。未来への取り組みを始めるには、ふさわしい年なのかもしれない。

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  • 「ITインフラと仮想化」に解説文を追加しました。
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「システムインテグレーション崩壊」

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  • 国内の需要は先行き不透明。
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