あんたもうちょっと勉強した方がいいよ!そんなことで、よく営業してるよね!!
「斎藤さん、あんたもうちょっと勉強した方がいいよ!そんなことで、よく営業してるよね!!」
20代もおわりの頃だっただろうか。営業として自立し、仕事の勢いに酔いしれていた頃だった。まさにそんなころに、お客様から言われたキツいひと言だった。今思えば、ありがたいひと言だったが、そのときは、悔しくて恥ずかしくて、とても後味の悪い思いを引きずりながらオフィスに戻った記憶が今も鮮明に残っている。
確かに、忙しいことを良いことに、自社製品の発表の時くらいしかテクノロジーを勉強することはなかった。当時IBMは、コンピューター業界では最先端を走っている自負もあり、お客様もまた、そういう話を喜んで聞いてくれたので、それで十分といったおごりもあったのだろう。
しかし、この頃になってミニコンやオフコン、エンジニアリング・ワークステーションといった、IBMが不得意とする製品が広く使われるようになっていた。当然お客様もそういう製品に精通されていた。そこに、ろくに勉強もしていない若造が、相変わらず「IBMが一番良いです」と生意気なことを言うので、40代くらいだったとは思うが、お客様も「いい加減にしろ」と思ったのではないだろうか。
当時はまだ、ITという言葉はない。「コンピューター」の時代で、改めてコンピューターについて勉強し直そうと思ったのは、こんなことがきっかけだった。インターネットのない時代、雑誌や他社製品のパンフレット、競合製品についての社内調査資料などを手に入れ、自分なりに勉強をするようになった。競合他社の製品を使っているお客様にも教えを請うた。また、新聞や雑誌、本などもむさぼるように読んだのもこの時期かもしれない。改めて思えば、「悔しさ」と「かっこ悪さ」がモチベーションだった。
サラリーマンを辞めて、しばらくして、ユーザー企業の情報システム部門の手伝いをするようになった。売り込みに来る営業諸氏と接するようになり、「そんなことで、よく営業してるよね!」と私にいったお客様の気持ちがよく分かった。
「いい加減にしてくれ、自社製品のことばかり話して、他社との比較や位置付け、世の中の動向との関係は何も説明できないじゃないか。質問しても分からない。あんたと話していても何も得るものがないじゃないか。」
そんな言葉が、口をついて出てきそうになったこともあった(笑)。
営業人材の育成やコンサルティングっていると、テクノロジーやビジネスのトレンドについて、知らないわけにはゆかない。そんなことが理由で情報収集は怠らずにいたが、考えてみれば、こういう話を整理して、体系的に学べる機会がないことに気付いた。ならば、自分の勉強もかねて、1999年に始めたのが、ITソリューション塾だった。
一期10回、毎週1回、仕事が終わった夕方に集まってもらっての勉強会が始まった。初回は、友人に頭を下げて数人に参加してもらったが、17期を向かえた現在、23社86名が集う。2割くらいの人は自腹での参加だ。そういう志の高い方を相手にしているとこちらも手を抜けない。毎回、「勝負!」といった心境だ。
この塾のモットーは、参加した人の役に立つこと。もちろん講義の内容もそうだが、資料をパワーポイントのソフトコピーで提供することで、お客様へのプレゼンテーションや社内での勉強会で楽をしてもらおうという想いもある。説明資料作りは、それなりに手間も時間も掛かるので、その手間が省ければ助かるだろう。
知っていることの自信は、もっと役に立つ。お客様に堂々と向き合って、テクノロジーについて話すことができるし、資料もすぐに出てくる。そして、何よりも自分の提案に責任を持つことができるようになる。
「私たちの仕事は、お客様の3年後に責任を持たなくちゃいけない。貴方の提案を採用したお客様は、それを3年後も使い続けているだろう。そのときでも陳腐化せず、大丈夫と自信を持って言える提案ができるだろうか。トレンドの知識は、そのために必要です。」
塾の冒頭こんな話をしている。
こういうことができる人は、お客様にも信頼されるだろうし、成績も上がる。そして、何かあったらまず相談される存在になるだろう。競合他社を押しのけて、最初に相談される存在になれば、それこそが最強の競争力だ。
塾に参加するか否かはともかく、テクノロジーやビジネスのトレンドを知り、お客様の3年後に責任を持てるようになることは、お客様にとって手放せない存在になることへの1つの条件だ。
そのひとつの手段として、ITソリューション塾を始めようと思い立った。しかし、塾に参加したからといって、変化の激しい時代にあって勉強を継続していかなければ、「そんなんでよくやってるね」的な存在に戻るだけだ。それは、自分で解決するしかない課題だろう。
さて、今期ITソリューション塾・第17期がまもなく終了する。やるだけのことはやったという自負はある。しかし、ああ、あそこはこうすれば良かった、次はこうしようという想いばかりだ。まだまだだなぁ。
*募集中* ITソリューション塾【第18期】
2015年2月4日(水)より開講するITソリューション塾【第18期】の募集を開始致しました。既に、定員80名に対して半分ほどのお申し込み、参加意向のご連絡を頂きました。ありがとうございました。
第18期では、テクノロジーやビジネスに関する最新のトレンドに加え、提案やビジネス戦略・新規事業開発などについても考えてゆこうと思っています。また、アジャイル開発でSIビジネスをリメイクした実践事例、クラウド時代のセキュリティとガバナンスについては、それぞれの現場の第一線で活躍される講師をお招きし、生々しくそのノウハウをご紹介頂く予定です。
ご検討ください。
詳しくはこちらをご覧下さい。また、パンフレットもこちらからダウンロードできます。
SI事業者が生き残るための2つの戦略
従来型SIビジネスが難しくなることについて、これまでにも多くの方が語られています。これについては、私も、その理由を詳しく解説しています。詳細は、こちらをご覧下さい。
>> クラウドとSIビジネスの関係(3/3)クラウドが、なぜ従来型SI事業を難しくするのか
ポイントは次の通りです。
- 人月積算を前提とした収益構造を維持できなる。そのため、この収益構造に過度に依存した事業は、規模の縮小を余儀なくされる。
- 求められるテクノロジー・スキルや開発・運用スキルが大きく変わるため既存人材の持つスキルとの不整合が拡大する。
- 比較的単純な業務しかこなせないエンジニアは、クラウドや人工知能に置き換わってゆく。仮に人月型の需要があって、オフショアとの価格競争を強いられる可能性が高く、収益に貢献しにくくなる。
この事態に対処するための「アウトサイド戦略」と「インサイド戦略」について整理してみました。
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拙著「システムインテグレーション崩壊」が、「ITエンジニアに読んでほしい!技術書・ビジネス書大賞」にノミネーションされました。お読み頂きました皆さんに感謝致します。
「システムインテグレーション崩壊」
〜これからSIerはどう生き残ればいいか?
- 国内の需要は先行き不透明。
- 案件の規模は縮小の一途。
- 単価が下落するばかり。
- クラウドの登場で迫られるビジネスモデルの変革。