スマートマシンをSFだと思っているうちに、SIや運用業務は駆逐されてしまうかも知れません
こんな記事も見つけた。
「東京大学の入試合格を目指している人工知能(AI)「東ロボくん」が、大学入試センター試験の英語模擬試験で、受験者の平均点を超えた」
こういう記事を読んでいる、システムの開発や運用など、これまで人間にしかできないと考えられていた業務は、AIに置き換えられるのは時間の問題だろう。
米調査会社ガートナーは、2013年に発表したレポートで、「スマートマシンとは、自律的に行動し、知能と自己学習機能を備え、状況に応じて自らが判断して適応し、これまで人間にしかできないと思われていた作業を実行する電子機械」であると定義している。
荷物を運ぶ自律走行車や無人ヘリコプター、言葉での質問に答えてくれる音声アシスタント、医療診断や法律解釈を助けてくれるアドバイザー、工場での組み立て作業を人間に代わりこなしてくれるロボットなど、広範な分野で実用化が進んでいる。
例えば、オンライン・ショップで商品を購入すると、倉庫内のロボットが商品をピックアップしてトラックに積み込み、人工知能が渋滞状況を調べて最短の配送経路を見つけ、自律走行車が配達する。こんなことが、実現しようとしている。
これまでは、決められたやり方をそのとおり確実にこなしてくれる“自動化”への取り組みは進んできた。しかし、自分で学習し、独自にルールを作り仮説検証し、状況を把握して最適な方法を選択・判断して実行する“自律化”は、夢の話だった。それがまさに実現しようとしている。
これを実現させるために自然言語処理や機械学習といった人工知能、知識の源泉となるビッグデータ、その膨大なデータを蓄積・処理するクラウド、状況を把握するセンサーや人間とのやり取りするデバイスなど、広範な技術が使われている。
一方で、自動化によって単純労働者の雇用が奪われたように、より高度な知的労働者の雇用をも奪うのではないかとの懸念の声も聞かれる。
しかし、このような変化の潮流に抗うことはできない。うまく付き合ってゆく方法を考えなくてはならないだろう。
ガートナーは、スマートマシンを、次の3つに分類している。
Movers(移動するもの):Kiva Systemsの倉庫用ロボットは、発注情報を受け取ると、注文品が収納されているラックを探し出してその下に潜り込み、それを荷詰め作業をしているスタッフのところまで運び、また元の場所に戻すという作業をしてくれる。広い倉庫内でもお互いにぶつかることはない。他にも、Googleなどが開発している自律走行車、Amazonの配送用無人ヘリコプターなどがある。
Sages(賢者):音声で質問するとその日の天気やスケジュールを教えてくれるバーチャル・アシスタント、臨床医の所見や検査データから適切な診断を助言してくれるアドバイザーがある。
前者はAppleのSiriやGoogleの音声検索が有名だが、既に身近なものとなっている。後者は、IBMのWatsonが有名だ。例えば、膨大な医療文献を学習し、さらに患者の電子カルテを分析して、最適な治療法を医者に推奨してくれる。他にも財務データを読み取り分析し業務部門にアドバイスを提供するもの、訴訟に関わる文書を読み取り証拠となる文書を探し出すもの、論文試験を採点するものなどが実用化されつつある。
Doers(行動するもの):Rethink RoboticsのBaxterや川田工業のNAXTAGEは、工場内で人と並んで働くロボットだ。手動で基本的な作業動作を教え込めば、それを学習し、周囲の状況を把握しながら、人にぶつからないように自律的に作業をしてくれる。他にもiPhoneの製造を手がける世界最大のEMS(Electronics Manufacturing Service)であるFoxconnは、労働者代替型ロボット「Foxbots」の開発を進めており、100 万台の導入を計画している。
スマートマシンは、もはや未来の夢物語ではなく、実用の段階にさしかかっている。
ITビジネスに関わる者として、この現実を無視することはできないだろう。特に、従来型の受託開発や運用派遣に大きく依存している企業にとって、この現実は、オフショア以上に強敵かもしれない。自らが、AIやロボットを作り出すことができなくても、それをどう使うかに関心を持ち、自分達のビジネスの可能性を模索することは、無駄ではない。いや、いまからやっておかなければ、間に合わないほどに、テクノロジーの進化は加速しているようにも見える。
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