ITスキルというのは毎年2割ずつ古くなっていく
「ITスキルというのは、毎年2割ずつ古くなっていく。何もしないまま5年経つと、全く通用しなくなる。そうならないように常に磨いていかないといけないが、その責任は本人が51%、会社が49%持つべきだと考える。従って会社としてできる限りトレーニング環境を整えるので、それぞれが危機感を持ってスキルアップに努めてほしい」(ZDnet Japan)
元Sun Microsystems共同創業者のScott McNealy氏がIT業界動向や人材育成をテーマに講演した。
私が2009年から始めた「ITソリューション塾」は、いま第17期を向かえている。毎週水曜日の夜2時間、1期 3か月間・10回の講義で、テクノロジーの最新トレンドやビジネス戦略についての講義を行っている。
今期の参加者は、86名、毎回人数が増えている。IT企業に勤める方やユーザー企業のIT部門に所属する方、さらには、ITの戦略的活用を模索している事業企画部門の方など多彩な顔ぶれだ。自腹での参加も少なくない。聞けば、テクノロジーの大きな転換期を意識し、強い危機感を抱いて参加された方が多い。
McNealy氏の言うとおり、「毎年2割ずつ古くなってゆく」は、ITトレンドに於いても実感だ。最初の頃使った資料を見ると、確かに「使えない」。しかし、それ以上に、ここ一年、「使えなくなる加速度」は、増しているように思う。
ロボットや人工知能などのスマートマシン、ウェアラブル、ソーシャル、ビッグデータとIoTなどのキーワードは、この塾を始めた5年前には、話題にさえならなかった。しかし、もはや、この言葉を抜きにITのトレンドを語ることはできないし、これからのビジネスのパラダイムを大きく変えようとしている。当然、もとめられITスキルも変わる。
塾の資料は毎回見直しているが、最近は以前の資料が使えない割合が増えている。改めて、時代が大きな転換点を向かえていることを実感している。
しかし、先日あるIT企業の研修担当者から思わぬ話を聞いて、すこし考え込んでしまった。
「3年前、うちで研修していだいたITトレンド、良かったです。今でもあのときの資料は使わせてもらっています。あの研修の資料は、いまでもそのままつかえるので、こんどは別のテーマで研修をお願いしたいんです。」
ありがたいお話ではあるが、とても複雑な想いだった。
「今でも使える」と思われているとすれば、私の資料がすばらしく先見性のあるもので、未来を先読みした内容であったか、あるいは、研修のご担当がITの時間の流れをご存じないかのいずれかであろう。前者はありえないわけで、残念ながら後者と言わざるを得ない。
ITの業界に身を置きながらも後者のような意識であるとすれば、これは大変深刻な事態だ。ましてや、ITの専門家ではなく、経営の業務や現場の人たちとなると、このような人はもっと多いかも知れない。
「企業におけるITの戦略的活用がすすまない」と嘆いている人も多いが、このような意識や感性をそのままに、高尚な期待を持っても所詮無理な話だ。
私は、このような事態を招いている責任の多くは、ITベンダーやSIerの営業やSEにあると思っている。テクノロジーのトレンドを理解せず、お客様を教育できない営業やSEの責任は大きい。
彼らの仕事は、お客様の3年後、5年後に責任を持たなければいけない。一度導入すれば、それくらいは最低でも使い続けるからだ。ならば、3年後、5年後でも安心して使っていただける提案を行うべきだろう。
また、お客様に未来を教え、未来に備えたITのあるべき姿とそれがもたらす変化や価値を伝え、お客様をITの先駆者に育ててゆくのは、営業やSEの責任だ。それが、ビジネスを拡大するための手堅いアプローチとなる。
人材育成の担当者もそういう視点で彼らの育成を考える必要がある。プレゼンテーションやコミュニケーションの能力も大切だが、お客様にITの価値と未来を理解させる能力は、もっと重要だ。
変化の加速度が増している。その理由と来たるべき未来を真剣に考えなくてはならない。それは、お客様のためでもあるが、同時に自分達の未来のためでもある。それほど、ITのトレンドは、私たちのビジネスや生活に大きく関わっている。これをおろそかにすると「未来はない」と覚悟すべきだろう。
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「最新ITトレンドとビジネス戦略【2014年10月版】(182ページ)」を公開しました!
毎月公開しています最新ITトレンドについてのプレゼンテーションです。以下のテーマでまとめられています。
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- モバイルとウェアラブル
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今月は、仮想化とSDIについてプレゼンテーションを一新し、解説文書を追記致しました。
よろしければお立ち寄り下さい。
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