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2つの島に住む「ガラパゴス営業」の物語

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 ガラパゴスとは、優秀ながらも独自の進化を遂げ、世の中の常識から取り残された存在のことを言う。

Galapagos


 そんな視点で営業を眺めていると、どうも2つのタイプのガラパゴス営業が、棲息しているように見える。

1.「過去の栄光」という島に棲息するガラパゴス営業

ひとつは、「過去の栄光」という島に棲息するガラパゴス営業だ。

 このタイプの特徴は、「俺の若い頃はなぁ」、「オフィースにいる暇があったらお客さまを回ってこい」、「とにかくお客さまに食らいつけ」というような、根性論的発言をよくするベテランの営業やマネージャーだ。

 受注するためには、お客さまとの人間関係を大切にし、信頼関係を維持することが、もっとも大切だと考えている。また、自分は、このようなことには長けていてること、また、自分がかつて担当したお客さまについては、誰よりも知っているという自負がある。

 お客さま第一、滅私奉公を信条とし、そのような自分の信条に絶対の自信をもっている。その一方で、それができない部下や若手を「最近の若い連中は・・・」と自分の基準で切り捨て、俺を見習えと言わんばかりに、自分のやり方に従わせようとする。「なぜ、それをする必要があるのですか?」と聞いても、「やれば分かる。とにかく俺の言うとおりにやれば、いいんだ!」と理由や方法を伝えることなく、確固たる信念で、部下に命令することも多い。

  このタイプのガラパゴス営業は、過去のある時期、このやり方で成功を収めてきた。その方法が、未だに通用すると信じている。あるいは、今の世の中や若者達の価値観の変化について行けない・・・あるいは、そういうことを学ぼうとしない。自分と違う価値観や今までのやり方でできない事態に遭遇すると、自分の信じている価値観に引きこもり、「とにかく俺の言うとおりにやれば、間違えない!」と部下に命ずる。そして、それで失敗しても、反省もそこそこに、また同じことを繰り返す傾向がある。 

  彼は、間違いなく成功体験者であり、会社の業績にも大きく貢献した。だから今の地位にある。この栄光は賞賛に値するし、体験に裏打ちされた言葉には、勇気づけられ感動もする。しかし、申し訳ないが、そのやり方が、未だに通用するという思い込みだけは、やめてもらいたい。

  確かに、技術や社会環境が変わっても、人間の精神や「こころ意気」といったところには、時代を超えた「不易」があることは間違えない。また、人間関係の大切さも、変わることはない。しかし、それだけでは、不十分であり、その方法論や価値観には、「流行」がある。その切り分けができないままに、「過去の栄光」という島に閉じこもっているガラパゴス営業はいる。

 かれらは、世の中の変化には、気付いている。しかし、それがどんなもので、どのようについてゆけばいいのか、その方法が分からない。だから、島の外へ飛び出すことを怖がっている。自分の生きてきた、信じてきた営業のあるべき姿を否定されることを恐れている。自分が今の自分であることの証明を失うことを恐れている。

 「過去の栄光」は、すばらしい勲章であると思う。また、成功や失敗の体験から得た人間としての処し方は、時代を超えて変わらないものであろう。お客さまの成功や自分の成長を喜ぶという価値観は、今の世代とも共有できる。それまでも意味がないと思う必要はない。過去と大きく変わってしまったのは、方法論であり、意志決定のメカニズムである。

  現場の感性を信じ、自分のやり方に固執することなく、チャンスを与え続ける。時代の変化を分析的に捉え、ものごとの道理を踏まえ、彼らの話に耳を傾け共に考える。そういう役割は、このようなベテランでしか果たすことはできない。その自信を持って、島を飛び出してみてはどうだろうか。

2.「自分が正しい」という島に棲息するガラパゴス営業

 もうひとつのガラパゴス営業は、比較的若い世代に多いようだ。彼らは、「自分が正しい」という島に棲息し、それ以外に世界があることに関心を持たない。 

 お客さまへ伺っても、まずは、自分の会社や製品が、如何にすばらしいか、このやり方以外に解決する方法はないと弁舌さわやかにたたみかける。そして、そんな自分の言葉に酔いしれている。

 自分たちの製品やサービスが、世の中の常識のなかで、どう位置づけられているのか、競合他社との比較において、どこに優れ、どこが劣っているかを見ようとはしない。

 自分の成績には、とても神経を使うが、お客さまには、ほとんど感心が無い。お客さまのことを知ろうとはせず、自分の論理や正論を伝えることが、自分の責務であると考えている。

 このようなガラパゴス営業は、自社の製品知識やその使い方には熟知している。このようなことに話題が及ぶと、直ちに語ることができる。しかし、他社と比べてどうなのか、うちの仕事にどのような役に立つのかと問われると、貝になるか、他社製品の批判やあるべき論、正論を語り出し、貴方の考えは間違っているとでも言わんばかりに講釈を始める。御説ごもっともではあるが、教養番組であり、パンフレットを読んだ方が早いと思うことも多い。

 このような「自分」という島に生息し、外の世界に興味を示さない、あるいは、勉強不足のガラパゴス営業には、辟易とする。

 このガラパゴスから抜け出す道は「素直さ」を持つことだろう。自分のこと、お客様のこと、会社のことを自分のフィルターで見ないことだ。まずは、相手の話に耳を傾ける。あるいは、自分の状態を冷静につることが必要だ。

 変なプライドは捨てた方が良い。誰かと比較するのも辞めよう。過去の自分と今の自分に素直に向き合い、昨日より今日、自分は成長できているかを問える素直さがあるといいだろう。

 「客観性」という言葉に置き換えることもできる。そんなものの見方ができれば、ガラパゴスの自分に気付き、自ずと自分の進む方向が見えてくる。

 ガラパゴス営業は、自分がガラパゴスであることを分かっていない。それは、自分についての「客観性」がないからだ。まずは、そのことに気付く「素直さ」がなくてはならない。

 ガラパゴスは自分かも知れない。そんな問い掛けをし続けることが、自分をガラパゴスにしない最善の道といえるだろう。


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「システムインテグレーション崩壊」

〜これからSIerはどう生き残ればいいか?

  • 国内の需要は先行き不透明。
  • 案件の規模は縮小の一途。
  • 単価が下落するばかり。
  • クラウドの登場で迫られるビジネスモデルの変革。

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ITビジネスでの競争優位は、お客様のニーズの変化に即応できることです。「営業」は、そのための武器になります。

「営業はオーバーヘッド」という意識から脱しきれない企業もあるようですが、そのままにしておけば、将来に大きな禍根を残すことになるでしょう。

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ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/ LiBRA

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