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「強み」を育てる3つのシフト

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「うちには、これといえる強みがありません」

ある中堅SI事業者の経営者から、嘆息混じりに、こんな話を聞いた。謙遜ともうけとれるが、半分本音かもしれない。

では、とうすれば、「強み」をつくることができるのだろうか。これまでの行動を見直し、3つのシフトを心がけてみてはどうだろう。

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1.「お客さまから提供される仕事への関心」ではなく、「お客さまへの関心」へ

お客さまからの要望に確実に応える。その誠実さと実力を兼ね備えている企業は、お客さまの信頼も厚い。しかし、その信頼は、過去の実績の延長線上に留まってはいないだろうか。

つまり、お客さまは、「この会社はこの範囲のことをやってくれる会社」と、期待の範囲をはじめから限定している。提案する側も、そんな事情を知っているので「このお客様ならこの範囲の内容で」と、それに併せた内容に絞り込んで提案する。

このような関係を続けていると、お客さまは、このSI事業者が会社として何ができるかに関心を持たなくなる。つまり、今までの実績と担当者の能力や提案の範囲がこの会社の実力であり、依頼内容もその範囲に絞ってしまう。

以下に心当たりがあれば、まさに、そういう関係と言えるだろう。

担当者は知っているが、その上司や決定権限者とは面識がない。

組織体制とその役割、組織内の人間関係を知らない。

お客さまの事業戦略を知らない。

お客さまに潤沢な需要があれば、このような関係は、必ずしも大きな問題にはならない。しかし、全体の需要が減れば、仕事のチャンスは確実に減ることになるだろう。

この状況に対処するためには、お客さまから提供される仕事に期待し、それを待つのではなく、お客さまの仕事そのものを、お客さまと一緒になって創り出す取り組みを進めてゆくべきだ。

既に決った仕事を示され、いついつから、いくらでできますかと言われ、価格競争に晒されるのではなく、仕事そのものをお客さまと一緒に創り出し、ビジネスのイニシアティブをとることを目指してはどうだろう。

このような対応を行なうためには、今まで以上に、お客さまについての広範かつ徹底した理解が必要だ。そして、より上位の意志決定者へと関係を広げてゆき、その変化を聞き取る力を持つ必要があるだろ。「アカウントプラン」とは、そのための取り組みでもある。

お客さまから「やってくれませんか」といわれる仕事に関心を持ち、それに応える提案ではなく、お客さまの経営や業務など、お客さまの置かれている状況、意志決定者の課題やニーズに関心を持ち、それをどのようにシステムで解決するかを提案する。それができれば、お客さまとの信頼を一層深め、競合他社に対して、有利な立ち位置を確保できるようになるはずだ。

2.「自分たちに何ができるか」ではなく、「お客さまは何がしてほしいか」へ

予め自分たちにできることを限定してしまい、その範囲でお客さまの需要を探るだけでは、ビジネス・チャンスは限られてしまう。お客さまは、貴方の会社ができる範囲で仕事をして欲しいのではなく、本来は自分の課題を解決したい。

このようなお客さまの期待に応えるためには、自分たちができることをいったん棚上げし、お客さまの困っていること、してほしいことは何かを、まずは追求すること。

その上で、お客さまがしてほしいことを、お客さまに成り代わって整理し、それを提示する。その次に、そこで自分たちができること、できないことを仕分けし、提示してはどうだろう。

「自分にできること」に範囲を絞って、お客さまが提供してくれる案件の獲得に全力を尽くすだけでは、自ら競合の渦中に飛び込み、効率も上がらない。

競合を回避し、むしろ競合をコントロールする立場に立ち、ビジネスの主導権を握るために、「お客さまは何がしてほしいか」を追求し、その視点から提案を考えてゆくべきではないか。

3.「一般論としての強み」ではなく、「自分たちならではの強み」へ

「自分たちには、これといった強みがない」という言葉の裏側には、一般論として、大手のSI事業者やITベンダーとの比較が、暗に含まれていたのかも知れない。しかし、これでは、はじめから勝負をあきらめるようなもので、結局は価格で勝負するか、彼らの下請けとしての地位に甘んじるしかない。

ならば、彼らとは異なる視点で、自分たちにしかできない競合優位を考えてみるしかない。そのひとつが、お客さまのシステムや業務の現場実態を理解しているという強みだ。

受託開発に多くを依存するSI事業者は、特定のサブ・システムとSI事業者の特定の担当者が、相互依存関係にあり、それぞれに切り離せない関係になっている。これにより、一定期間の業務量は確保されるが、システムの統廃合や刷新が、広がりを見せる昨今、そのサブ・システムが、不要になれば、業務がなくなるという脆弱さを併せ持っている。その一方で、現場の「困った」や「してほしいこと」は、自分のこととして受け止めているはず。これを整理し、一覧表にして、わかりやすく表現してみてはどうだろう。お客さまは、大いに助かるだろう。

次に、それぞれの「困った」についての解決策を書き出す。ただし、自分たちにできるかどうかは、別の話。まずは、どうすべきかを示す。そして、その内容をお客さまと合意し、次に、自分たちができることを示す、あるいは、できないことは、他社を紹介するという考えもある。

とにかく、大切なことは、お客さまの「困った」を解消することだ。自分達の仕事を取ることではない。それができれば、お客さまも大喜び。これはなかなか大手のSI事業者にはできない。

このような関係を維持できれば、新たなシステムの開発に於いても、そう簡単に手放せない存在になるはずだ。

ある特定のお客さまについて、このような取り組みを進めてゆくと、多くの点で他のお客さまの「困った」や「してほしいこと」と共通していることに気付く場合がある。ならば、それを整理し、他の部門やお客さまに提案する材料としてみてはどうだろう。これは、必ずしも新たな強みを一から創造することや育成することではない。既存のスキルやノウハウを整理し直し、それを「見える化」する取り組みだ。

どんなすばらしい強みが潜在的にあっても、それを見えるものにしなければ、武器には使えない。だからこそ、このような取り組みを通じて、自らの競合優位を、言葉として、図表として、絵として、明らかにする必要がある。そして、見える化された自らの強みは、提案する人の自覚と自信をも引き出してくれる。

「うちには、これといえる強みがありません」と嘆く前に、まずは、こんな取り組みをされてみては、いかがだろう?

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