「仮想化」の本当の意味とその役割
「仮想」という言葉からは、「虚像の」、「実態のない」という意味を思い浮かべてしまう。ところが、この言葉の元となった英語の「Virtual」は、どうもそういう意味ではないらしい。「(表面または名目上はそうでないが)事実上の/実質上の/実際の」という意味がある。また、ラテン語の語源を見ると「力のある」という意味になるようだ。辞書を引くと英語の文例には、次のような記述があった。
- It was a virtual promise. (約束ではないが)実際には約束も同然だった。
- He was the virtual leader of the movement. 彼はその運動の事実上の指導者だった。
このように見ていくと、私たちがITの用語として使っている「仮想化=Virtualization」は、次のような意味になるのだろう。
「物理的実態とは異なるが実質的機能を実現する仕組み」
仮想化は決して、「虚像で実態のないシステムを作り出す仕組み」ではないということになる。
さて、仮想化というと「物理的実態を分割する仕組み」というとらえ方もされるが、決してそれだけではない。「分割」、「集約」、「模倣」の3つのタイプに整理することができる。
分割(パーティショニング/Partitioning)
ひとつの物理資源を複数の仮想資源に分割する仮想化。ひとつの物理資源を複数の仮想資源に分割するサーバーの仮想化や仮想LAN(VLAN)などがこれに相当する。
集約(アグリゲーション/Aggregation)
複数の物理資源をひとつの仮想資源に分割する仮想化。複数の仮想資源をひとつの仮想資源と見せかけるストレージの仮想化がこれに相当する。
模倣(エミュレーション/Emulation)
ある物理資源を異なる資源に見せかける仮想化。物理的な実態とは違うシステム資源を作り出すもので、Java仮想マシンやデータベースの仮想化などが、これに相当する。
さて、明日は、サーバー仮想化の歴史を振り返ることにする。サーバー仮想化がそれぞれの時代にどのような役割を担ってきたのか、そしてこれからどうなろうとしているのかを推察して頂くことができるだろう。
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