IoTプラットフォームの構造と新しいビジネスの可能性
「クラウド(雲)がどこか「はるか高く」遠く離れた意図的に抽象化された空にあるのに対し、「フォグ(霧)」は物事が行われる場所、地面にはるかに近い所にある。それは強力なサーバー群ではなく、日用品や工場、自動車、街灯などわれわれの社会に存在するあらゆるモノへと盛り込まれる、より限定的な能力でさまざまな場所に拡散したコンピューターから構成される。」The Wall Street Jornal / 2014 年 5 月 19 日
モノに埋め込まれたセンサーからはき出されるデータは、膨大なものとなってゆく。やがてクラウドへデータを仲介するネットワークは、対応しきれなくなるだろう。
このような状況に対処しようというのが、シスコシステムズの提唱するフォグ・コンピューティングだ。また同様の概念として、エッジ・コンピューティングという言葉も使われている。
さて、これはどういう仕組みなのだろうか。昨今の動向を踏まえながら、全体の構造を1枚の絵にまとめてみた。
スマート・デバイス
まず、現実世界のデータを収集する最前線に位置するのが、スマート・デバイスだ。スマート・フォンは、現時点でもっとも普及しているスマート・デバイスだが、スマート・ウオッチ、スマート・カー、スマート冷蔵庫、スマート歯ブラシ、スマート・トイレなどの“スマート・XXX” は、多様化し、その数も増大する。そんなネットにつながるデバイスの数は、2020年には、500億個に達するとの予測もある。また、交通や農業の設備、産業機器もスマートになってゆくだろう。そういうスマート・デバイスは、データを収集し、ネットワークに大量のデータを送り出すことになる。人間で言えば、目や耳、触覚や温覚と言った感覚器官に例えられるだろう。
フォグ・コンピューティング/エッジ・コンピューティング
膨大な数のスマート・デバイスから送り出されたデータは、デバイスそのもの、または、ある程度まとまったデバイスを集約する中間サーバーで前処理され、上位のアプリケーションに送るべきデータを集約、選別して、ネットワークのトラフィックを低減させる。また、低遅延を求められるアプリーションのためのサーバーとしての役割を担う場合もある。人間の神経系で言えば、脊髄、延髄の類に相当する。
ところで、この中間サーバーの機能をネットワーク・スイッチに統合した製品がいろいろと出回り始めている。この新しいタイプのネットワーク・スイッチは、パケットのスイッチング機能だけでなく、サーバーCPUを搭載し、LinuxベースのOSを稼働させ、加えて、ストレージを統合した製品も出始めている。
さらに、Facebookが主導するOCP(Open Compute Project)が、ハードウェアのレファレンス・デザインを公開し、これを元にした「ホワイト・ボックス」や「ベアメタル・スイッチ」などが製品化され、ハードウェアのオープン化も進みつつある。ここに、OpenFlowなどのSDN(Software-Defined Network)を実現するOSSが加わり、これまでに無いオープンなプラットフォームとなりつつある。
このような新しいタイプのスイッチがフォグ・コンピューティングやエッジ・コンピューティングを支えてゆく可能性は高い。
クラウド・コンピューティング
収集されたビッグデータは、クラウド・コンピューティングによって処理される。アナリティクス、ソーシャル、その他の様々なアプリケーションがクラウド上で実行される。人間に例えれば大脳といえるだろう。また、他のクラウド上で実行するアプリケーションと連携し、その適用領域を拡大してゆくことになるだろう。
IoTやフォグ・コンピューティングとともに、新たなビジネスの可能性が生みだされようとしている。さて、皆さんは、ここにどのようなビジネスをデザインされるだろうか。
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「システムインテグレーション崩壊」
〜これからSIerはどう生き残ればいいか?
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工数で見積もりする一方で,納期と完成の責任を負わされるシステムインテグレーションの限界がかつてないほど叫ばれる今,システムインテグレーターはこれからどのように変わっていくべきか?そんなテーマで考えてみました。
ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/ LiBRA
「ITトレンドとクラウド・コンピューティング」を改訂しました。
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