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タブレットの現在と未来に関する考察:タブレットは家庭のリビングルーム用PCとして君臨する

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今回は、タブレットに関する興味深い調査レポートをいくつか見つけたので、最新のタブレットの利用動向を紹介しながら、タブレットの現在と未来について考えてみたいと思う。kindle Fireが発売されたり、iPad3発売の噂が流れたりと、まだまだタブレットに対する消費者の関心は高いようだ。そこで、これを機会に一度整理してみたいと思ったのが、そもそものきっかけである。


【1】 インターネットに接続したデバイスを3つ以上所有している成人は62%

皆さんの家庭には、インターネットに接続されたデバイスが何台あるだろうか。米国のリサーチ会社フォレスター・リサーチから、米国の家庭がどれくらいインターネットに接続されたデバイスで溢れているかを調査した、非常に興味深いレポートが報告された。その調査レポートによれば、調査対象となった37,300人の米国成人の内、何と62%が3台以上のインターネットに接続されたデバイスを所有しているという。

1年前の調査では43%だったことから、ここ1年で何と50%も増加したことになる。この3台という所有台数が多いか少ないかはともかく、米国の家庭にあるデバイスのインターネット接続化が、もの凄いで加速しているのがわかる。そして、このインターネットに接続された様々なデバイスで、消費者はゲーム、音楽のダウンロード、ショッピング、ビデオの視聴などを楽しんでいる。

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上のグラフは、自宅のインターネットに接続されたデバイスを数の多い順に並べたものである。第1位が80.7%でラップトップ/ノートブックPC、第2位が68.0%でデスクトップPC、第3位がプリンターで59.1%と、ここまではある程度予想通りだ。現状では、まだまだPC系が圧倒的に多いということになる。

3位以降のランキングが面白い。4位はスマートフォンで36.1%。家庭のインターネットに接続されているデバイスとして、すでにPCに次ぐシェアを獲得しているのは少し意外だった。そして、今回のランキングで一番意外だったのが、31.0%で5位にランキングされたニンテンドーWii。テレビが7位と低い位置にランキングされていることを意外に思われるかもしれないが、先日の記事でも紹介したように、米国の家庭はゲーム機をテレビに接続してインターネットTVを楽しむのが一般化している。間接的にインターネットに接続されているテレビのシェアは、実際はもっと多いと考えていいだろう。

では、今回の主役であるタブレットは一体何位にランキングされているのだろうか。スマートフォンの半分にも満たない13.8%で、下から数えた方が早い14位だった。この調査レポートを見る限り、タブレットは、スマートフォンほどまだ普及していないということなる。参考までに、私の家庭のインターネットに接続されているデバイスは次の通り。ノートPC2台、モバイル4台、タブレット2台、テレビ1台の、合計9台のデバイスがインターネットに接続されている。

※ 記事の参考にした情報

● Digital Disruption Is Happening, Get Ready To Adapt! 

● Content & Online Service Providers Must Be Ready To Adapt 


【2】 コマースの主役はスマートフォンではなくタブレット?

米国では、小売業界の売上に最も貢献することが期待される、ホリデーシーズンがもうすぐ始まる。下のインフォグラフィックは、米国の The High Lowが、消費者722人を対象に今年のホリデーシーズンのオンラインショッピングの傾向について調査した結果を図式化したものである。

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オンラインショッピングを利用する際に使う、デバイスに関する調査結果を見てほしい。1位がPCの49%、2位がスマートフォンの37%、3位がタブレットの12%となっている。ここでも、タブレットはスマートフォンの3分の1しかシェアを取れていない。ホリデーシーズンにおけるコマースの主役の座も、家庭内のインターネットに接続されたデバイス同様、スマートフォンに奪われてしまいそうな結果だと言っていいだろう。

ただ、今後のコマースの主役が、このままスマートフォンで決まってしまうのかというと、そう結論付けるのはまだ性急だとフォレスター・リサーチの調査レポートは報告している。その理由は、スマートフォンで購入されている商品の多くが、デジタルコンテンツやサービスなどであることを挙げている。

上のインフォグラフィックをもう一度見てほしい。消費者がスマートフォンまたはタブレットで購入したい商品とサービスの上位3つは、音楽のダウンロード77%、アプリのダウンロード73%、自動車のガソリン69%の順となっている。逆に、電化製品/コンピュータ、洋服など、市場規模の大きな商品はともに50%を下回っている。フォレスター・リサーチによれば、上位を占めている音楽のダウンロード、アプリのダウンロード、自動車のガソリンの購入は、ほとんどがスマートフォンによるものであるという。

また、フォレスター・リサーチのレポートによれば、電化製品/コンピュータ、洋服などのリアルな商品の購入率は、スマートフォンの13%に対して、タブレットは47%と、ここでは完全にタブレットがスマートフォンを逆転している。その理由として、タブレットのユーザは、スマートフォンのユーザよりもウェブサイトにアクセスする時間が長く、PCの代替機として利用するケースが多いからだとしている。また、タブレットの方がスマートフォンよりも画面サイズが大きいことも、タブレットがリアルな商品の購入に向いている理由の一つであるということだ。

このフォレスター・リサーチのレポートには納得させられた。iPhoneとiPadの両方を所有しているが、音楽のダウンロードも本や洋服を始めとしたリアルな商品の購入も、すべてiPadを利用しているからだ。最近では、PCよりもiPadでショッピングすることが多いくらい。iPhoneで購入するのはアプリくらいのものだ。米国では、最近タブレットコマースなる言葉も使われ始めており、成功事例もいくつか報告されている。タブレットコマースについては、後日改めて報告したい。

※ 記事の参考にした情報

● Despite Fraud Fears, Shoppers Increase Their Online Spending 

● Why Tablet Commerce May Soon Trump Mobile Commerce


【3】 タブレットはPCよりも長い時間ビデオの視聴に利用されている

タブレットのユーザは、オンラインビデオの視聴時間と最後まで視聴する割合が、PCよりも30%も高いという興味深い記事が reelseo.com から発表された。下のグラフの数値をまとめると以下の通りとなる。

 ●タブレットでビデオを視聴する60%以上が、ビデオ再生時間の25%まで視聴する

 ●タブレットでビデオを視聴する約50%が、ビデオ再生時間の75%まで視聴する

 ●タブレットは、ビデオ再生時間の100%まで視聴する割合がPCよりも30%高い

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タブレットが、ビデオを視聴するデバイスとして、PCよりも利用頻度が高いという調査結果にはうなづける。普段の生活でも仕事でも、iPadでビデオを視聴する機会が多いからだ。タブレットが、PCよりもビデオの視聴に向いていると考えられる理由は二つある。

一つ目の理由は、タブレットの画面サイズ。タブレットは、ビデオを視聴する上で最適な画面サイズを手に入れたと思っている。もっと大きいサイズの方が良いのではという意見があるかもしれないが、一人でビデオを視聴するには、今のタブレットの画面サイズくらいがちょうど良い。もっと大きなサイズの画面で視聴したければ、家に帰ってテレビを見ればいいのだから。タブレットが実現している画面サイズは、人間がビデオを長時間集中して視聴する上で、PCよりも最適だ。

二つ目の理由は、タブレットが持つ機動性。仕事がら、移動中の電車の中や休憩中のカフェなどでビデオを視聴する機会が多いのだが、そんな時タブレットは本当に重宝する。ノートPCのように、起動するまで待つ必要がなく、画面にタッチするだけですぐに利用できるスピードはやはり魅力だ。

以上二つの理由から、タブレットは、ビデオの視聴用デバイスとして現時点では最適であると考えることができる。PCとスマートフォンの間に挟まれて、存在が中途半端だという指摘も聞かれるが、その中途半端なところが、ことビデオを視聴する上ではタブレットの大きな武器の一つになっている。

※ 記事の参考にした情報

● Viewers Watch Video On Tablets 30% Longer Than On Desktop 


【4】 今回のまとめ:タブレットはリビングルーム用PCとして君臨する

ノートPCとスマートフォンがあれば、タブレットは必要ないという意見もあるようだが、私はタブレット擁護派の一人である。普段の生活でも仕事でも、タブレットがもはや手離せなくなっている。今回紹介した調査レポートでも明らかになった、ショッピングとビデオの視聴というタブレットの活用方法は、普段からタブレットを使っているユーザから見てもうなずけるものだった。

タブレットの未来もそこにある。タブレットは、ショッピングを楽しんだり、ビデオを視聴するためのデバイスとしてこれからも生き続ける。そして、使われる場所はオフィスよりも家庭のリビング。もちろんビジネスの場面で活用されるケースも増えて来ると思うが、タブレットの未来はむしろ家庭のリビングにあると考えた方が良いだろう。特にiPadに関しては。

ここに、マッキンゼー・アンド・カンパニーがレポートした興味深い調査結果がある。15の国にまたがる15,000人のiPad所有者へのアンケート結果によると、62%がiPadを自宅から持ち出したことがないというのだ。私のようにiPadを仕事でも利用するユーザはまれで、ほとんどのユーザは、iPadを自宅のリビングでショッピングやビデオを楽しむ目的のために利用しているということが、今回の調査で改めてわかった。

このマッキンゼー・アンド・カンパニーの調査結果を紹介している、gigaom.com の記事ではこう紹介されている。

「マイクロソフト、グーグル、ソニーを始めとした多くの企業がリビングルーム用PCの主役の座を射止めようと躍起になっていたが、誰も成し遂げることができなかった。しかし、iPadが今リビングルーム用PCとして君臨しようとしている」

※ 記事の参考にした情報

● The living room PC is here: the iPad 

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