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「入れ歯専門の歯医者」が実際の症例と治療、治療に対する考え方を紹介する記事を中心に書いていきます。

入れ歯の咬み合わせを削って、入れ歯を安定させた症例

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「食事をするたびに入れ歯が落ちて口に入れておけない」

歯科を受診するのが10年ぶりというUさん(70代/女性)の総入れ歯は、歯グキとの適合も、入れ歯全体の形も合っていません。
長年メンテナンスしていなければこうなるのも仕方のないことです。
調整は困難が予想されました。

このように、あれもこれも合っていない入れ歯の調整には進め方があります。

「全体」ではなく「部分」に集中することです。

逆に「部分」ではなく「歯グキ全体」の適合を改善する調整や「入れ歯全体」の形を修正するとなると、かなり困難な治療になります。
初めての患者さんに対し、いきなりやるべきではありません。
まずは「部分」に注目。

Uさんの入れ歯で私が最初に気になったのは咬み合わせです。
長年使い続けてすっかりすり減ってしまった影響で入れ歯の奥歯の並びが不自然な状態になっています。

食事のたびに外れやすくなっているのは歯の並びのアーチが合っていないためと考えられます。
そこで「調節湾曲」から始めることにしました。

奥歯は食べ物をすり潰すために山と谷があります。
その奥歯の山の頂上のことを咬頭(こうとう)といいます。
顔を横から見て、上の歯の前から4番目が小臼歯です。
そこから一番後ろの7番目にあたる大臼歯までの咬頭どうしを結ぶと1本の線が描けます。

健康な歯(天然歯)なら咬頭線はまっすぐでいいのですが、総入れ歯の場合は手前から5、6番目よりも、あえてその前後の4番目と7番目の歯の咬頭が少し上がった谷型のカーブを描くように歯を並べます。

このカーブのことを「調節湾曲」といって、入れ歯を装着して歯ぎしりをしたときに入れ歯が外れないようにする、入れ歯ならではの並べ方をします。

Uさんは歯がすり減ったせいで5~6番目の歯より4番目と7番目の歯の咬頭が下がった山形の逆カーブを描いていました。
これでは食事のたびに外れて使えないはずです。
この状態の入れ歯は、歯科医が調合して調整に使う入れ歯安定剤を貼っても改善しません。

今回は歯並びを理想的な高さに調整するために、入れ歯のこの部分を加工することにしました。
逆カーブの原因となっている、前から4番目と7番目の歯の咬み合わせを慎重に削って何度も確認しながら調整湾曲を作りました。
どちらの歯もわずか数ミリの加工です。

修正した入れ歯を入れてもらうと
「あっ、口を動かしても入れ歯が落ちなくなりました!」
Uさんは笑顔でおっしゃってくださいました。

ですがこれはあくまでも応急処置です。
こうしてひとまず口に入れておける状態にしておいて、次の来院までは市販の入れ歯安定剤などでしのいでいただきます。

治療の手順としては、最初のステップとして日常生活に困らない状況に持って行きます。
そして次のステップは患者さんの負担にならないように時間をかけて歯グキ全体の適合の改善、入れ歯全体の形の修正を行っていきます。

その後、何度も調整を重ねて最善のポジションに落ち着いた入れ歯を参考に、新しくきれいな歯並びの入れ歯を作って治療は完了となりました。

今回行なったUさんの入れ歯の咬み合わせを調整するのと新しく入れ歯を作る治療は保険適応1割負担で総額約5,000円でした(治療費は症状により個人差があります)。

https://www.ireba-ito.com/→いとう歯科医院

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