■ 歯列全体が傾いている入れ歯を、修理調整しながら4年以上も使い続けている症例
「ちょっと痛い部分が出たので」
実に4年ぶりに来院された70代女性のTさん。
4年間なにごともなく過ごされたとお聞きして自分の診断の正しさをようやく確信できました。
ホッとひと息です。
なぜなら4年前に、入れ歯を作り直さず調整して使い続けることを提案していたからです。
Tさんは上下とも自分の歯が一本もない総入れ歯を使っています。
問題は歯並び。右と左で歯の高さが著しく違うのです。
修理や調整を長年くり返しているうちに、そうなってしまうことはよくあります。
元々は痛い、外れやすい、噛めないなど入れ歯の不調が大集合したような状態でした。やはりそのような不自然な歯並びではまともに使うのは難しいです。
しかしそれなら新しく作ればいいかというと、それは違います。
Tさんも最初は「新しく入れ歯を作ってほしい」という依頼からスタートしました。
当院では新しく作るなら、今の入れ歯でベストな状態を作って、それを参考に作ります。
そうでないと、今の入れ歯での問題点を把握しないまま作ることになり、結果的に新しい「調子の悪い」入れ歯がもう一つできるだけ。
そんな結果が待っているからです。
そこで入れ歯を粘り強く調整していきました。
難しい状況なので調整の回数はかなりかかりましたが、どうにか不具合を感じないレベルまで持っていくことができました。
Tさんは「調子良くなったから、このまま使ってみます」とのことで治療を終了しています。
その後4年間もの長期にわたり調子良く使い続けることができました。
今回は久しぶりに症状が出たものの「ちょっと痛い部分がある」という程度の穏便な状況。
入れ歯のフチが歯グキと強く当たって直径2ミリほどの傷ができています。
原因となっている入れ歯のフチを軽く削ると
「あっ、痛くなくなりました」とTさんは笑顔に。
歯並びの不整は気になりますが、これはいじらないのが正解です。
大幅な修理が必要な上に失敗する可能性が高く、もし失敗したら元には戻せません。
ちなみに歯並びを2ミリ動かすのは入れ歯修理のなかでも大修理の範疇になると思ってください。
このように慎重な綱渡りの姿勢が入れ歯治療には求められます。
Tさんの場合は4年間の綱渡りに成功しました。
これからもがんばって綱渡りしていきます。
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