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こういう書き方をするから産経新聞はネットユーザに嫌われるんじゃないだろうか?という事例

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産経MSNにこんな記事が出ていました。

ライターを接待攻勢…ネットで広がる「口コミ」の正体 2012.1.30

スポンサーの金にめがくらんだマスコミを疑って、ネットの口コミのほうが中立的だと思っている人が多いようだが、本当はそんなことはなくて、むしろプロのジャーナリストが書いた記事のほうが信頼に足るのだよ、今回のことでよくわかったろう?市民たちよ。

という論調。

プロの記者という立場からの個人的な発言としては理解できる面もあります。
実際、メディアの役割として一定の水準でのフィルタリングをした情報を提供する、だからこそ読者は信頼するし、お金を払ってでもその情報にアクセスする価値がある。
一方で、メディアが独善的なフィルターを用いたり、あるいは明示的にあるいは潜在的に広告主に配慮した記事を書いていることにうんざりした人たちが、口コミという(本来的には利害関係に左右されない)善意の情報を重視することになったという事実があります。

メディアの独善といえば、先に民主党が政権をとったときに話題になった、

「民主党さんの思うとおりにはさせないぜ」

が思い出されます。

産経新聞ですね。
(最終的には、お詫びという形になったようですが)


僕は民主党不支持ですし、広報・PRに長く関わってきた中でメディアの機能は一定の役割を担い続けている思っていますので、冒頭の記事の記者の言わんとすることは理解できる面も多々あります。

しかしながら、先のTwitter騒動でわかるように、言い方というものがあります。

記事からいくつか引用すると、

やらせ情報に踊らされた人には申し訳ないが、自業自得と言わざるを得ない。
道に落ちていたメモ用紙に「ここが美味(うま)い」と書いてあったのにどうしてくれるのか、と気色ばんでも、だれも相手にしてくれるはずがない。
そこには置き去りにされた「自己責任」と、マスコミと対極にある「口コミ情報」が信頼を得ているという事実がある。
・・・「口コミ情報」をネットの恩恵としてありがたがる・・・
ネットの情報を信用して不味(まず)い料理を食べる羽目になっても、だれも責任は取ってくれないのだ。

ストレートに、口コミを信用するやつはバカ、とか、マスコミのプロのほうが100倍信用に足るのだ、とは言っていませんが、ある意味上手に(直接的な批判に見えないように)、見下した論調をとっています。

これはもしかしたらネットや口コミに批判的な意見を持っている人には、好意的に映るのかもしれませんが、そうでない人たち、特にネットの未来に希望を持っている人たち(そこには既存のメディアや権威に反発を持っている人たちも含まれるかもしれません)には、チクチクと刺でつつかれるような気持ち悪さ、嫌味な感じを与えてしまうはずです。

このことをつらつらと考えていて、産経新聞がネットユーザに嫌われる理由がわかったような気がしました。


僕は、政治的な視点やその他の報道において、産経新聞はまっとうな面も多いと考えています。
少なくともニュースをチェックする際には朝日より重視しています。

だから敢えて言うのですが、なにもこんなふうに無用に敵意を招くような書き方をしなければいいのに。

繰り返しますが、当該記事は間違ったことを述べているわけでも、意図的にミスリードをしようとしているというわけではないでしょう。
しかし、微妙にイヤーな文面になっている気がするのです。
最後は突き放すような物言いで終わっていることも残念な点です。


インターネットは一定の善意を前提にして発達してきた文化があります。
もちろん、人間社会のことですから善悪さまざまではありますが、少なくとも前向きな姿勢が積み重なることによって形成されてきていることを考えると、欠陥を指摘するとか警鐘を鳴らすにせよ、「そら見たことか」、「バカめ、オレの言うことを聞かないからだ」的な論調ではなく、建設的に論点を展開することが求められる(そのほうが好ましい)のではないかと思った次第です。

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