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会社がなすべき当たり前のこと、人がなすべき当たり前のことでありながら、多くの人ができていないことを、いかに行うかを考えるきっかけになればと思います。高杉晋作の辞世の句でもある「おもしろき こともなき世を おもしろく」をブログ名に、日々普通に起こっている会社や社会での出来事を、いかに考え対応すべきかという視点で書いていきたいと思います。

JAL再生の方法

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JAL再生 高収益企業への転換
『JAL再生 高収益企業への転換』引頭麻実・編著 日本経済新聞出版社

京セラの稲盛和夫会長が、政府の要請を受けて、
JAL再生をどのように行われたのかをまとめた一冊です。

JAL再生―高収益企業への転換

既にご存知のように、JALは史上最高益を出しました。
更生計画をはるかに上回り、計画では641億円の連結営業利益だったところを、
その3倍弱の1243億円の利益を出したのです。
この過去最高益が発表されたのは、
企業再生支援機構による支援と会社更生手続きの開始が決定されてから、
わずか1年4ヶ月後のことでした。

これだけの大会社が破綻しそうになっているさなか、
失礼ではありますが、稲盛さんが再生を引き受けられ、
どうなるか私は楽しみにしてました。
絶対に成功するとは思っていましたが、これほどの短期間で、
これほどの利益を出すとは思いもしませんでした。
それは、

1.京セラやKDDIように一から作った会社ではなく、既に大企業であること
2.稲盛さんは完全に社内では外様であり、畑違いも甚だしいこと
3.社内での味方が4万人の社員という規模から考えても圧倒的に少ないこと
4.稲盛さんのこれまでの手法を考えると時間がかかることが予想されたこと

といった理由からでした。

稲盛さんは「人」というものを中心においた経営を行われます。
それを組織内に浸透させるということは、圧倒的な難しさを伴います。
人の考え方を変えるということはそれほど難しいことです。
リストラ後の従業員数でも3万人を超える大企業。
それだけの人の考え方を変えていくということがどれだけ難しいかは、
誰でもわかると思います。
しかし、稲盛さんがとった経営再建の手法の根幹は、やはり「人」でした。

京セラフィロソフィーを参考にして、作り上げたJALフィロソフィー。
これを軸に置いた、リーダー教育から全社員への教育、飲み会・・・により、
社員の意識が徐々に変わっていきます。
リーダー研修で、幹部が変わった結果、現場の意識も変わり、
次々に改革が実行に移されていきました

また、これも京セラで行われいる部門採算制度導入による
コスト意識と経営意識の醸成。
これは、アメーバ経営と呼ばれているものです。
部門別採算制度導入により、さらに業務の多くなった経理部門も、
多大な努力によりより経営数値の把握が3ヶ月かかっていたものが、
1ヶ月ででるようになっていったようです。
これにより迅速な経営判断も可能になりました。

●JALを再生させた5つのカギ
1.衆目にさらされての再生
2.稲盛氏のリーダーシップと社内の共感
3.価値観を共有する仕組みや仕掛け
4.社員が共有できる管理会計の仕組み
5.新しい価値観に基づく社員ひとりひとりの行動

この本を読んで、思ったことは、
経営の基本はやはり「人」であるということです。
人が変われば、経営が変わります。
経営が変われば、全社員の物心両面の幸福も得られます。
全社員の物心両面の幸福が得られれば、顧客や社会への貢献にもつながります。

経営を変えるためのスタートは、やはりこれです。
『JAL再生からわかる、どんな業種にでも適用できること。
それは、何よりも、まずはトップが変わるかどうかだけだ、
ということだと思います。』




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