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会社がなすべき当たり前のこと、人がなすべき当たり前のことでありながら、多くの人ができていないことを、いかに行うかを考えるきっかけになればと思います。高杉晋作の辞世の句でもある「おもしろき こともなき世を おもしろく」をブログ名に、日々普通に起こっている会社や社会での出来事を、いかに考え対応すべきかという視点で書いていきたいと思います。

【企業の歪み】経営者の変心が『終わりの始まり』に!

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「俺はこの新規事業は絶対に成功すると思う。絶対だ!」
「そこまで言い切れるのは、何か成功の秘策があるんですね?」
「俺の勘がそう言っている!金の匂いがするんだよ」
「・・・・」

ある社長と、こういう会話をしたことがあります。
僕が懸念したとおり、この新規事業は失敗しました。
"金に匂い"はきっと"金が出ていく匂い"だったのだと思っています。

どこで、この経営者は、こういう人になってしまったのでしょう?


1)企業成長時の歪み

経営者が会社を設立したばかりのときは、ほとんどの場合、お金もなく、人もいない状態なので、
経営者自身も事業に加わって、最前線で仕事をして、会社の存続のためにガムシャラになっています。

それが、規模が少し大きくなって売上もあがり、利益もでて、人も増えてくると、社長は最前線から退きます。
これは、会社がサークル活動みたいなものから、組織に変貌する過程ですので、普通のことです。

しかし、このぐらいのタイミングで「歪み(ひずみ)」が生じることが非常に多いのも、企業の現実です。
どんな歪みなのでしょうか?

・創業時メンバーと社長との距離が離れていき、言葉を交わさなくなる。
・組織図はあれども、実態として組織になっていない状態となる。
・ある時点での売上や利益を頂点として、業績が伸びなくなる。
・社内で不和が生じるようになる。


2)歪みの原因

会社のこういう状態の原因はいくつか考えられますし、
それぞれの企業独特の原因もありますが、この歪みの原因は、

・社員が増えたとき、規模が大きくなったときの組織体制に対応できていない。
・一定の規模を超えたときの経営者の変心・驕り。

といったことが、一因としてあげられます。

組織体制はある程度規模の会社であれば組織図がありますが、機能していない企業は非常に多いです。
それは、マネジメントという概念を理解していないことが主要因と言えます。
組織図を書くだけでなく、それを機能させなければ、組織とは言えません。

しかし、この組織体制以上に、企業存亡に直面するのが、「経営者の変心・驕り」となります。


3)終わりの始まり

経営者が創業時から変心し、驕りを見せるようになると、これは企業の「終わりの始まり」となります。
経営者の驕りは様々なところで見られるようになります。例えば

・大事にしてきた人材を、取替可能なものとして扱うようになる。
・他の企業の経営や事業を物知り顔で解説をするようになる。
・ビジネス本の解説を物知り顔でするようになる。
・占いを信奉するようになる。
・他の経営者にたまたまうまくいったことを、計算どおりの如く解説するようになる。
・未来が見えるようなことを言い出す。
・無闇に成算のない新規事業をやりだす。
・投資額が企業の屋台骨を揺るがすぐらいのものになっても止めない。
・接待交際費などの使用が派手になる。
・有名な人と会って話すようになると、自分も同じ立場と勘違いするようになる。

こうなってしまった経営者は、たとえ創業時に素晴らしい右腕がいたとしても、
何を言っても、耳を貸さなくなってしまっており、誰にも止められなくなります。

これが企業の「終わりの始まり」です。


4)その先へ行くための体制

こういう会社崩壊を避けるためには、

まずは、会社の成長に合わせて、組織体制を整えていくということが重要です。
中長期の事業計画に基づく、組織戦略が必要となります。
そこには、それぞれの組織のそれぞれの人物の能力や役割を特定していかなければなりません。
これは結構楽しい作業となります。想像の産物です!
その反面、創業時から共にしてきたメンバーを能力などの観点から、新参者の下に付けなければならないなど、
苦しい意思決定をしなければならないこともあります。

しかし、難しいのは、経営者の変心(変身?)対策です。
なぜ、経営者が変心してしまうのか、と言えば、それは、指摘する人がいないからです。
創業時に二人三脚でやっていた人がいたとしても、会社が大きくなるにつれて、
社長の重みは外部との接触などから大きくなります。社長は企業では最高権力者です。
外部からみれば、もっとも重要な人となります。
その反面、二人三脚でやってきたパートナーの重みはそのままということが多くなります。
この乖離が、指摘を難しくさせます。

対策としては、「信頼出来る外部役員」を招くということです。
内部の人はどうしても、"雇われている"という条件から、強く言うことができなくなり、
結果、会社を崩壊させることつながりかねません。
その点、外部役員であれば、そういうことはありません。
企業を第三者の眼で冷静に見てくれます。

そして何よりも、経営者がそこで驕りを見せるようになったとしたら、
それは、その経営者の器がそこまでなのだ!と言っていいでしょう。
松下幸之助は、自分一人の力の限界を知っており、周りに優秀な人を集めたといいます。
それも、聞く耳を持たなかったら、意味のないことになります。
周りの対策にはなりませんが、経営者自らが自分の器を大きくしていくために、
常に謙虚に、大きな目標を抱き、事業を行なっていくことが最もよい対策となるかと思います。


僕は、最近、驕り、偉ぶる社長を見ると、つい笑ってしまいます。
「自分の器は小さいぞ!」と言っているようなものです。

自ら戒めなければなりません!!

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