ピアニストがDJをする新しさ 〜クラシックとポップス、静と動〜
なぜクラシックピアノ専門家の彼女がDJをするのか?
TechGALAサイドイベント「TechKALA」でDJを務めたピアニストの妻に話を聞きました。
妻は、DJでもあるが、クラシックピアニストでもある。
音楽の道を志す人なら一度は耳にする、桐朋学園高等学校と桐朋学園大学の出身だ。
日本で大学卒業後にオーストリアのザルツブルグにあるモーツァルテウム藝術大学に留学し、卒業している。
父親がプロのヴィオラ奏者で、しかも彼女が幼少期にはプロのオーケストラの団員でもあった。
そのため彼女にとってクラシック音楽というのは、「ありがたいもの」というより、空気みたいなものだったらしい。
音楽を浴びて育った
生まれる前からお腹の中でヴィオラの音を聞いていたのだから、クラシック音楽は"胎教BGM"である。
物心つく前から、気がつけばオーケストラの定期演奏会に連れていかれていたという。
本人にとってはごく普通のお出かけだったらしい。
遊園地でも動物園でもなく、ホール。なんとも渋い幼少期である。
そう考えると、クラシック音楽は彼女の趣味というより、もはや体質である。
牛乳を飲めば背が伸びる、みたいな感じで、彼女は音楽を浴びて育ったのだろう。
なんだか少しうらやましいような、そうでもないような話である。
クラシックとポップスの両方
でも、家の中がずっとクラシック一色だったわけではない。
母親はクラシック音楽とは無縁の人で、レコード棚には父親のクラシックと一緒に、母親のビートルズやピンク・レディーのレコードも並んでいた。
まるで、音楽の世界が二つに分かれているみたいだったらしい。
そんな環境で育ったからか、音楽をジャンルで分けることに、なんだかずっと違和感があったそうだ。
クラシックとポップス、どっちが偉いとか、どっちが「本物」とか、そんなこと考えたこともなかったらしい。
ちなみに彼女が自分で初めて買ったカセット(当時はカセットデッキが大流行り)はレベッカのアルバム「TIME」。
ノッコの声とかっこよさにしびれたそうである。
クラシック音楽を学ぶ中で
ピアノを本格的に習い始め、クラシック音楽があまりにも身近にありすぎる日々。
そんな中で、他のジャンルの音楽は、逃げ場のようで、反抗でもあったらしい。
あまりにクラシック一色だと、たまには別の音楽を聴きたくなるのが人間というもの。
彼女にとっては、音楽の世界で少しだけ自由を感じる瞬間だった。
ただ、海外留学でクラシック音楽自体に対する考えも変わる。
当時の恩師の天才教授が、一曲ごとに作品の分析と他の曲や作曲家との類似点や違いを解説し、参考となる膨大な量の曲を聴かせてくれた。
そんな中でクラシック音楽の面白さを再発見したそうだ。
そしてヨーロッパやドイツ語圏でのクラシック以外の音楽にも夢中になったという。
クラシックとDJ、静と動
クラシック音楽って、「静」の世界だと思う。
演奏家はその中で、必死に「動」をする。
ピアノを弾く手が震えても、顔をしかめても、あの静けさの中での「動き、表現する」。
対して、他のジャンルの音楽は、もう最初から「動」の世界。
どんどんエネルギーが溢れて、音が体中に響く感じ。
それぞれの音楽が持っている緊張感は全然違う。
クラシックの静けさの中の緊張も、妻には心地よいけれど、どこか自分とは少し違う感じがするらしい。
静けさの中で、必死に動く自分。それが彼女には、ちょっとした居心地の悪さを感じさせるらしい。
DJでのプレイは、まさに「動」の世界で自分を表現する場所。
クラシックピアノもDJも、どっちも彼女にとって大事な音楽の表現方法なのです。