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「演繹革命(えんえきかくめい) 日本企業を根底から変えるシリコンバレー式思考法」校條浩 著 を読んで

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2年ほど前に岸田総理や小池都知事が「スタートアップだ!」と唱え始めてから、世はベンチャー投資だオープンイノベーションだと大騒ぎになっている。その前から日本の大企業はスタートアップ連携やCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)に熱心になり、我も我もと取り組みはじめてきた。

しかし、従来からの考え方ややり方のまま取り組んでおり、果実を得られるか心配になることが多い。

従来型の帰納思考と未来に挑む演繹思考をテーマに、その違いを、著者の体験談を含む分かりやすい例を交えて、様々な角度で明らかにする本書は、組織と人の基本を正してくれる。

これまでもシリコンバレーに学べ!といった書き物や講演は山のようにあったが、何も変わらなかった。その理由の一つは、なんとなくしか違いが分からなかったからではなかろうか。本書は、たった一つのテーマを何重にも紐解くことで、イノベーションに取り組む土台をつくる指南とすることができるだろう。ちなみに、ソニーのどこが違ったのか演繹思考での解説など、読み物として面白いエピソードも盛り込まれている。

偉い先生があーしろこーしろ、これはだめだ、という本ではなく、自分の失敗を振り返るなど、他人事でなく自分ごととして語る姿勢など、読者に寄り添い、応援したいという気持ちを感じさせてくれる。

352ページは多いなと思う方もいるだろうが、終章で(学生や中小企業を含む)様々な立場の読者への個別ガイドがあったり、5名へのインタビューがあるなど、ページ数が膨らむ構成ゆえ、実質的にはよりスリムな内容だ。かなり読みやすい書き方・文調なのも、とっつきやすい。なお、教育の専門家である藤原和博氏をインタビューするなど、単に新事業にフォーカスした本ではなく、人の考え方の根本に迫っており、広い読者層がヒントを得られるコンテンツとなっている。

「思考法」の本なのに、「考え方ややり方」とここで言っているのは、No action, no results.(行動なくして結果は得られない)はもとより、行動することで考えが発展し自らが進化するという演繹思考の特性ゆえ。評論家やケチつけ族には未来は作れない。演繹思考のDoer(実行者)となるきっかけを本書から得ていただければ幸いです。

経営者やマネジャーだけでなく、社員や学生、そして教育者などの方々にプラスになるかと。また、教育・研修でグループで読んで議論すると、さらに血肉になるでしょう。

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著者のNSV Wolf Capitalのホームページはこちら(筆者はこのアドバイザー)

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