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映画のような起業家自伝 菅谷俊二著『ぼくらの地球規模イノベーション戦略』を読んで

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昨年お会いした起業家の中でも印象的だったのが株式会社オプティムの菅谷俊二社長。その菅谷さんが、お会いした後、昨夏に出版されたのが「ぼくらの地球規模イノベーション戦略――IT分野・日本人特許資産規模№1社長のこれまでと次の挑戦 」だ。

菅谷俊二(すがや・しゅんじ)さんのプロフィールはこんな感じ:
1976年兵庫県生まれ。佐賀大学農学部卒。大学在学中の2000年に「第1回」ビジネスジャパンオープン」にて「孫正義賞」を受賞。同年、株式会社オプティムを創業。14年「第40回経済界大賞発表」にてベンチャー経営賞を受賞。

ダイヤモンド社の内容紹介には、数々の賞を獲得してきた株式会社オプティム代表取締役社長 菅谷 俊二。エリートとは違う その泥臭さと逞しさには 今の起業家に足りない何かが感じられる。起業までの道のりやオプティム存続の危機 事業拡大 そして(国内の情報通信分野、IoT市場において)3年連続国内シェアNo.1 、時価総額350億円。菅谷 俊二氏が自ら綴った半生記がついに登場。 とある。情報通信分野における日本人特許資産規模ランキングで第1位を獲得した著者が、自身の半生を振り返りながら、自らが創業した株式会社オプティムのこれまでの軌跡をたどる。オプティム役員や大学教授らによる証言も収録。という紹介もある。
294ページに渡る、内容豊富な本だ。小生が5年前に日本に紹介した「ザッポス伝説」にもある種通じる、ビジュアルに現場の様が感じられ、痛快でワクワクドキドキの起業家のリアル・ストーリーがたくさん詰まっている。

三章「土管から始まった世界への挑戦」とあるが、大学時代に本当に土管に泊まりながら東京で営業活動をしていた菅谷さん。会社がつぶれそうになりながら必死でNTT向けの開発と格闘したり、ウォー=Warストーリーに満ちた本書は面白い。菅谷さんの燃え続けるパッションは、読んでる方も生命エネルギーが増進する。

小生も他人ができることは自分でやらなくていいという天邪鬼だが、菅谷さんはそのはるか上を行く。「他社ができないこと、他社がやらないことをやらなければオプティムの存在意義がない」と語り、世界初を開発し続けている。そして、特筆すべきは世界観だ。納得しなければ世間の常識など気にもせず、自分が信じる道を行く。だから、普通の人にはない世界観を気づくことができる。

他の書評で、(コンテストで「孫正義賞」を受賞したためか)「近い将来孫氏と肩を並べ」といった言い方をされているが、小生が連想したのは、天才機械技術者「からくり儀右衛門」こと、東芝の創業者 田中久重だ。

子供の頃から発明三昧で、次々と創造し前に進む様はからくり儀右衛門さながら。腹が減ってすすきを噛んだという儀右衛門に対し、土管に泊まった菅谷さん。そして、佐賀と縁がある。神戸育ちの菅谷さんは、なぜか佐賀大学に進んだ(理由は本書を読まれたい)。後に"東洋のエジソン"と呼ばれた田中久重がその才能を思う存分発揮できたのも第10代肥前国佐賀藩主 鍋島直正との出会いがあってこそ。菅谷さんも、佐賀で色々な重要人物との出会いを経て、今日がある。

そして、自社ホームページで、東証一部への上場変更の挨拶とともに、「私たちの当面の目標は、"わけのわからない会社"になることです。「様々な業界で名前を見かけるけれども、いったい何の会社なのかよくわからない」とおっしゃっていただけるような、既成のマーケティング概念ではとらえることができない会社を目指しております。」と言う菅谷さんは、素敵な変人であり、その世界観とパッションで、東芝を超える新時代の企業をつくってくれると期待してしまう。

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