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我が国は現在、閉塞感が漂っているとよく言われていますが、実は、よく観察すると、新しいビジネスチャンスがあふれかえっています。それを見つけて、成功させるコツとヒントをご紹介します。

飲食業界における値上げと減量の考察

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イラスト:麦


世の中は値上げラッシュが続いています。その理由は、円安、人件費高騰などなど様々ありますが、今回はそちらがメインのテーマではありません。飲食業界のコスト高への対応について、少し考えてみたいと思います。

飲食業界におけるコスト高に対応する方法は大きく分けて、値上げと内容の減量があります。この3年間で、ほぼすべての飲食店がそのどちらかを行ったのではないかと思います。コメの値段が倍近くになっている昨今、それは仕方ないとは思いますが、どうもその方策がうまくいっていまいケースが少なくないように思います。
きっと目先は、値上げと内容の減量で収支は改善すると思いますが、うまくやらないと新しい競争の渦に巻き込まれてしまう状態に陥るようです。その結果、利益自体を減らす結果になるかもしれません。以下にその具体例を挙げ、考察したいと思います。

〇急激な値上げをすた独占的人気の弁当店
私の会社の近くに圧倒的人気を誇った弁当店がありました。昼の時間になれば、長蛇の列が出来るほどの大繁盛でした。量も多くて味もよく、価格はなんと600円でした。元々料理店が始めた弁当店で、美味しいのは当然といえば当然でした。私も毎週1回は、かかさずここで弁当を買っていました。
しかし、そのうちご飯の量が極端に減りました。まあ、カロリー摂取制限でいいかと思ってあまり気にはなりませんでしたが、いつの日か650円に値上がりになりました。これくらいなら、物価高だから仕方ないなと思っていましたが、あっという間に700円になりました。それからあまり時間を置くことなく750円になり、とうとう800円になりました。ここまでの値上げが急激だったのでちょっと驚きと戸惑いもあり、私はここで弁当を買うことがなくなりました。もちろん、かつてあった長蛇の列も消滅しました。
この理由は簡単で、お昼代に800円を使うならほかに色々と選択肢があるからです。つまりこの弁当店は、ローカルな話とはいえ、独占的な地位を急激な値上げにより自ら放棄してしまったのです。本当にもったいない話だと思います。


〇フリードリンクバーのジュースの濃度を薄くしたレストラン
私が時々行くレストランの話です。ここではフリードリンク制を採用していて、ドリンクバーを自由に楽しむことが出来ます。このレストランは、やや内容を減量したものの値上げせず頑張っていたので好感を持っていました。頑張っているお店は応援したくなるので、多少の待ち時間があったとしても機会があればよく使っていました。
しかし、ある時、異変がおこりました。ドリンクバーのジュースの味がすべて薄くなったのです。なんだか味のついた水を飲んでいるように感じられました。最初はなにか手違いで、その日だけ濃度がうすくなったのかなと思いましたが、そのあと2回、3回行ってもジュースの味は変わりません。これはあまりにせこいと感じて、このレストランにはいかなくなりました。
しかし、それから半年ほどして、どうしてもそのレストランに行かなければならないことになりました。久しぶりに店内に入って驚いたことは、以前のような活気がなくなっていることです。ランチタイムにも関わらず、お客さんが少ないのです。そりゃ、ジュースの濃度を薄くするくらいだから、お客さんは逃げるだろうなと妙に納得してしましました。あまり気乗りしませんでしたが、またいつものようにドリンクバーでジュースを飲みました。ここで、驚きました。ジュースの濃度が元に戻っていたのです。おそらく苦情が多くて、方針を変えたのでしょう。私は、この日を境にまた時々このレストランに通うことにしました。
しかし、いつ行ってもかつての賑わいはありません。待たなくてもすぐに席に着くことが出来ます。一度失った信用は、改善してもなかなか元には戻らないという典型的な例でしょう。

〇値上げして減量するハンバーガー店
匿名にしなくてもわかると思いますが、とりあえずハンバーガー店Aのお話としておきます。
ハンバーガー店Aは、格安のハンバーガー店です。店舗数も多く業界のガリバーといってもいいでしょう。こちらのお店は、値上げと減量を繰り返しています。ハンバーガーは小さくなり、ポテトの量も極端に減りました。それでも、圧倒的知名度と店舗数で繁盛しているようには見えます。しかし、値上げと減量は、本来ハンバーガー店Aよりやや高級志向であったライバル店との競合を招いています。
例えばハンバーガー店Bは、定価自体は高いですが、クーポンなどを出してほぼハンバーガー店Aと競合する値段になっています。さらに、こちらには大きなサイズのハンバーガーもあります。では味はどちらが美味しいかといえば、好みにもよりますが、私はハンバーガー店Bの方が美味しいと思います。ハンバーガー店Bは昨今、店舗数を増やしていて出店攻勢をかけているようです。
結局、ハンバーガー店Aは、値上げと減量でガチンコ対決を呼び込んでしまったように思われます。それでも、ガリバーAには勝算があるのでしょうか?

以上、3つの例を挙げました。
どのような業界においても値上げする際には、自らのステータスを壊すことのないよう細心の注意を払う必要があるということでしょう。

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