ネット広告(WEB広告)・チラシ広告・店頭広告の問題点
大正時代に流行した現代節という歌がある。これは演歌師の添田唖然坊が作詞・作曲・歌唱したものだが、その歌の一節に次のようなものがある。
新案特許品よくよく見れば
小さく出願中と書いてある
アラ ほんとに 現代的だわネ
これは当時の商品・サービスの告知、広告手法を皮肉をもって切り取ったものである。さて、それからおおよそ100年の時間が流れ、消費者保護が叫ばれる現代、広告手法はどのように変わったかといえば、残念ながらほとんど変わっていないと言わざるを得ない。その実例を3点紹介したいと思う。
〇ネット広告
まずは、ネット広告である。ある大手のショッピングサイトでも、頻繁にポイントバック10%、20%とバナー広告が大きく表示されている。しかし、その広告をよく見ると、小さな文字で「ポイントバックの上限期間中1,000ポイントまで(1000円相当まで)」とか「ポイントバックにはすべての条件を満たす必要があります。詳しくはキャンペーンの詳細をご覧ください」等と記載されているのだ。サンプルに画像を作ってみると次のようなものである。はなはだ紛らわしいと言わざるを得ない。
〇チラシ広告
続いては、チラシ広告である。
某デリバリー系フード店の大手も、紛らわしいキャンペーンを展開し、チラシを大々的にポスティングや新聞折り込みをしている。どのような内容かといえば、次のようなャンペーンを同時に行うのである。
<キャンペーン1>商品A 50%オフ
<キャンペーン2>商品A 店頭まで引き取りの方は2個目無料
これだけを見れば、店頭まで引き取りに行くと、商品Aは定価の50%で2枚購入出来るように見えないだろうか?
しかし、実際はそうではない。この店のチラシの<キャンペーン2>の説明には、小さな文字で「価格は通常価格です」と書かれている。つまり店頭まで引き取りに行けば、商品Aの定価で2枚購入出来るのだ。
このキャンペーンを記載した実際のチラシを私は確認したが、本当に虫眼鏡でみなければ判らないような小さな字で「価格は通常価格です」と書かれていた。こちらに関しては紛らわしいというより、確信犯的な意図を感じる。チラシ広告としては悪質な部類だろう。
〇店頭広告
実店舗の店頭においても、大変紛らわしい広告が掲示されることがある。これも大手のフランチャイズ店舗だが、「商品A 50%オフキャンペーン」などと大々的に記載して店頭に広告を掲げているものの、その広告には小さく「12月15日~16日」などと今より随分先の予定が書かれているのだ。サンプルを作ってみると次のようになる。このような店頭広告を見れば、いままさに50%キャンペーンをやっているかのように見えるが、実際は随分先の告知をしているだけなのである。こちらも随分と紛らわしいと言わざるを得ない。
さて、以上紛らわしい広告を3例挙げてきたが、これらはすべて日本を代表する企業の広告であることが残念でならない。残念というより、このような広告を作って恥ずかしくないのだろうかと思ってしまう。消費者保護の観点からも猛省を促したいところである。
現代節の作者・添田唖然坊も、100年たってもまだ変わっていないのかとあの世で笑っていることだろう。