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我が国は現在、閉塞感が漂っているとよく言われていますが、実は、よく観察すると、新しいビジネスチャンスがあふれかえっています。それを見つけて、成功させるコツとヒントをご紹介します。

ある飲食店の閉店

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今から数年前のこと、ある観光地にほど近いレストランのオーナーから資金提供の依頼メールがやって来た。どうやらこれまではインバウンド特需で売り上げは好調だったが、大型台風の影響で一気に旅行者の足が遠のき、現在は経営が厳しくさまざまな支払いに滞りが出る状態に陥ってしまったらしい。なんとか金融機関へは相談に行き、ローン返済金額は減免を受けたようだがそれでも資金ショートするのは時間の問題だという。

私はもちろん金融業者ではないので、基本的に運転資金の提供は行わないが、非常に丁寧なメッセージでオーナー自身が料理の腕に自信はあるというものだから、ちょうど店がある方面に行く予定もあり、そのレストランを視察してみることにした。ただし、レストランのオーナーには告げず、普通の客として訪問することにした。

時間はちょうど昼時である。
お腹を空かして到着した私は、どのような料理が食べられるのか大変楽しみであったが、残念ながらわずか数分でがっかりしてしまう結果となった。なぜなら、それなりにお客が入っているにも関わらず、広い店内にホールスタッフが2名しかおらず、厨房にはおそらく私にメッセージをくれたであろうオーナーらしき調理人が1人しかいない。
これだけの人員でいけるのだろうかと思いながら私は席に着いたが、案の定なかなか注文を聞いて貰えない。ようやくおしぼりと水が届いた時には、すでに数分が経過していた。それから実際に料理が出て来るまで約25分間、視察が目的である私はただじっと待っていた。しかしながら、中には料理があまりに出てこないので、帰ってしまう客もいるほどであった。

ようやくホールスタッフが料理を運んで来てくれた時、お皿から料理のソースがピチピチと跳ねていた。料理は出来たてでいかにも美味しそうであったが、このままでは服が汚れると思った。しかし、ホールスタッフは大きなナプキンを手渡してくれることもなく、料理を置いて忙しく立ち去って行った。仕方がないので、私はお皿を自分から出来るだけ離してテーブルの端に追いやり、ソースが落ち着くのを待つしかなかった。
ボーッと待っていても仕方ないので、ちょうどその間にフリードリンクであるドリンクバーで飲み物を調達することした。オレンジジュースと書かれたポットがあったので、それを持ち上げグラスに注いでみると、こちらも残念なことにわずか数滴しか出てこない。いわゆる空っぽ状態であった。

ともかくテーブルに戻って料理を食べたが、味に関しては決して悪くはない。美味しい方である。しかし、このような店の状態ではとてもではないが今後もうまく運営できないことは明らかである。この店の状態が元々そうだったのか、あるいはインバウンドのバブルでサービスの質が低下したのかは判らないが、この時点で投資は無理であると判断したのはいうまでもない。

この後、私はこの店のオーナーに対してメッセージを送った。その内容は、
・連絡なく客として視察を行った事への事後承諾(お詫び)
・店の状態の悪さの指摘
・現状での投資は出来ない事
・店の状態を改善するためのアドバイス

というもであった。レストランのオーナーからはすぐに感謝のメッセージが届いたが、その後は連絡なく、しばらくしてその店は閉店されたようである。今はどのようにされているのか判らないが、オーナーの成功を心より祈るばかりである。

振り返って、コロナ禍真っ最中の現在、飲食店を含め様々な業種で売り上げの減少に悩んでいることだろう。こんな時こそ、コロナだから仕方がないと片付けることなく、もういちど自らのサービスや商品を見つめ直す良い機会だと認識するべきである。案外、危機からの脱出方法がそこで見つかるかもしれない。

ともかくいずれコロナ禍は終息する。その日まで諦めないことが重要である。

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