オルタナティブ・ブログ > 色々やってる社長のブログ >

我が国は現在、閉塞感が漂っているとよく言われていますが、実は、よく観察すると、新しいビジネスチャンスがあふれかえっています。それを見つけて、成功させるコツとヒントをご紹介します。

超B級ドラマが超A級ドラマになった「トリック」20周年

»

時は2000年、21世紀を前にして不思議なTVドラマが始まった。
まったく売れない女手品師と半端ない自己顕示欲を持った物理学者が、超常現象のウソに挑戦するというストーリー。しかし、美人である女手品師もイケメンの物理学者もそれぞれ身体のことでコンプレックスを持ち、二人に絡んでくる刑事もこれまた身体のことでコンプレックスを抱えているというなんともユニークな設定。ドラマは謎解きの要素を含んでいるが、ロードムービー的でもあり、全般にギャグ満載でコメディタッチであるが、物語のラストは何とも言えないシリアスタッチで終わるというお腹がいっぱいになる展開。
放送時間は深夜帯。そして出演者は、当時、名前は知られているがいまひとつパッとしていなかった仲間由紀恵、阿部寛、生瀬勝久、前原一輝、大島蓉子などの面々である。さらに、メインの監督は、金田一少年の事件簿・ケイゾクで売り出し中の堤幸彦であった。
この布陣は、どう見ても超B級ドラマである。放送時間帯から考えても、TV局もそれほど期待はしていなかっただろう。しかし、このドラマはユニークなカメラワークや色彩、不可思議な大道具・小道具等々も相まって、独特な世界観を作りだすことに成功した。視聴率も、最終的には10%に迫る勢いで全10回の放送を終了したのである。
だが、このドラマの特徴的なところはそれだけではない。放送終了後、レンタル及びセルDVDが口コミ等々を通じて大ヒットし、マニア的なファンを多数生み出したことである。いわば、草の根運動的に人気が不動のものとなったのだ。
最終的には、現在まで、TVドラマシリーズ3本、スペシャルドラマ3本、映画版4本、サイドストーリーのTVドラマシリーズ2本、サイドストーリーのネット配信ドラマ1本の作品が制作され、TV朝日にとって(相棒に並ぶ?)貴重なドラマコンテンツに成長したのである。

つまりは、超B級ドラマが超A級ドラマに大変身を遂げたといえるであろう。このドラマをきっかけに関係者は大躍進を遂げた。主演の仲間由紀恵、阿部寛は言うに及ばず、生瀬勝久も欠かせない名バイプレーヤーとなった。前原一輝は1本目の映画公開後に芸能界を引退してしまったが、ファンの間で復帰運動が起こるほどであった(短い出演時間だが実際に復帰が実現している)。
堤幸彦も、大作映画の監督を立て続けに行い、映画界・演劇界において欠かせない存在となっている。また放送当初、助監督をしていた木村ひさしも、今ではTVドラマ界でお馴染みの監督となった。

ちなみに、このヒットの仕方は、ちょっと規模が違いすぎるが、今でもシリーズが続くスペースオペラ「STAR TREK」に似ている。STAR TREKも最初のTVシリーズはそれなりの視聴率で終わってしまったが、その後、各地のケーブルTVで放送されるたびに熱狂的なファンを生み出した。さらに、番組が海外へ輸出されるようになると人気がワールドワイドになったが、そこでも再放送するたびに新たなファンが生まれる現象が起きたようだ。

まあ、それはさておき、このトリックも放送開始から20周年を迎えたようだ。最後の映画版から6年を経過しているが、いまだHPは削除されず、ささやかだが20周年のキャンペーンを行っている(HPはこちら http://www.yamada-ueda.com/)。これからまたなにか起こるのか、、、おそらく何も起こらないだろうが、草の根運動的に人気が広がるコンテンツをまた見てみたいと願いながら、しばらくの間「トリック」を振り返ってみようと思う。(敬称略)

Comment(0)