エンゲージメント・マーケティング成功のための10ヶ条 β版 (7)
8.エモーショナル(情緒的)な対価
9.適切なインセンティブ(エンゲージメント活動のお礼として)
エンゲージメント・マーケティングで重要なのは顧客のモチベーションです。なぜ、メッセージの受け手だけでなく、企業やブランドとの共創に積極的に参加してくれるのでしょうか?この問いに対する最適なテキストがあります。
著者のJ. StengelはP&GでCMOのキャリアを持ち、退職後Stengel研究所で立ち上げ、過去10年間で継続的に利益を出し続ける企業50社を研究し、それらの企業での共通点を洗い出しました。それらは人間にとって大切な5つの基本的価値のいづれかを提供しつづけているという結果でした。5つの基本的な価値とは下記です。
- 喜びを感じさせる
- 結びつくことを助ける
- 探究心を刺激する
- 誇りをかき立てる
- 社会に影響をおよぼす
単なる商品の善し悪し、ましてやイメージだけでは、継続的に顧客を満足させ利益を生み出す事は難しい時代になったということだと思います。そもそも商品自体の機能に大きな差別化要素は難しく、益々商品のコモディティ化が進み、差別化のための差別化がマーケティングになってきている中、成熟したマーケット、消費者にとって重要なのは人間にとっての基本価値という、コトラーのマーケティング3.0にも通じる重要な示唆です。
エンゲージメント・マーケティングでは顧客の参加、共創が最も重要なポイントですが、これらは単なるキャンペーンへの応募ではなく、むしろ自発的に自分の愛する、あるいは興味あるブランドを知人に広めたり、ブランドのコミュニティに参加して意見を言ったり(含むクレーム)、商品アイデアを申し出たりすることなのです。何故そこまでするかというと、そのブランドと深く関与する事により、例えば上記の5つを満たすことができるからなのです。
このブログでもよく事例として取り上げるアメックスのSmall Business Saturdayはそのよい事例でしょう。地元の中小企業で使う事により、地元コミュニティへの貢献という喜びや社会影響、地元の誇りをかき立て、またソーシャルメディアで参加を表明する事による参加者とのつながりを促進しています。ここでのポイントは単なる利用を促進するだけでなく、参加意志をソーシャルメディアを使って促進し、プロジェクトの参加者にしたことです。結果、Small Business Saturdayの11月最終土曜日における中小企業セグメントの売上は23%高まったとのレポートもでています。
エンゲージメント・マーケターは、特典やインセンティブのように目に見える特典・価値(Tangible Value)だけでなく、むしろ、このような情緒的価値(Emotional Value)を顧客に提供し続けることが重要なタスクと言ってもよいでしょう。ただし、ピュアにこの情緒的価値だけではなく、親和性の高い特典は重要だと考えます。一般的にはこのようなインセンティブは必要悪と見られていますが、弊社クライアントで数社調査したところ必ずしもそのような結果ばかりでなく、しっかりと情緒的価値を感じていただいている方からも高い評価を頂いており、この特典でより高いエンゲージメントができているとの結果でした。ただし、提供している特典・インセンティブが非常にその顧客とブランドにとって親和性の高いものだったということがベースにはあります。
インセンティブ=必要悪と考えるのではなく、親和性の高いインセンティブの設計を行い、エンゲージメントに対するお礼と考えるとよいと思われます。