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【仮説思考】スマホの急増はTwitterの繁栄をもたらし、Google+をサークル化させる

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本ブログの前回のエントリー「Twitterの総アカウント数が5億を超えるのは2012年2月」とその前のエントリー「PCは緩慢で痛みを伴う死を迎えつつある」を見ていて思う。

ここ数年、ガラケー(フィーチャーフォン)からAndroidやiPhoneなどのスマホに乗り換えた人のうち、何割かはTwitterやFacebookに新規登録しているだろう。特にTwitterは急増しており、総務省の「情報通信白書 平成23年度」でも次のように指摘されるほどだ。この急増の背景には、東日本大震災の影響があるのはご存じのとおり。

ソーシャルメディアについては、引き続き急速に普及を続けており、平成 22 年に Twitter の利用者が急速に増加をした(注3)。

注3  ソーシャルテック・ラボ 「Social Tech Report」(2011年2月28日(http://www.socialtech-labs.jp/tech/000142.html))によると、平成22年1月で473万人の利用者が12月には1,290万人となった

スマホの新規購入者が実際にどれだけTwitterやFacebook、Google+を新規登録したかという統計データはないが、相当数いるはずだ。そして、ガラケーからスマホに買い換えたユーザーで特徴的な行動の変化は、ウェブサイト閲覧の時間がガラケーの3倍になることだ(「スマートフォンユーザーの利用実態調査結果」)。スマホならPCサイトの閲覧も問題ないし、画面も大きいので TwitterやFacebookも快適に閲覧できる。

そのためだけではないだろうが、Twitterの総アカウント数は(非公式だが)わずか1年ほどで3億から5億へと急増することになる。昨年の調査(『ソーシャルメディア調査報告書2011』)では、Twitterのフォロー数は平均57.7人、フォロワー数は平均54.4人となっているが、さまざまな企業やサイト、そして日本の官庁もTwitterで情報提供するようになっており、今後その数は増えているはずだ。そして人は社会的動物であり、外界と関わり、情報を求めずにはいられない。もちろん、これは、「情報中毒」(WIRED)だとか「情報依存症」だとか言いたいわけではなく、ヒトには外界の状況を知ろう(モニター)とするDNAが埋め込まれているということだ。

シロクマ日報さんのエントリー「「エコーチェンバー」化を否定するFacebook」で指摘されているように、

文字通り「弱い絆」は関係性の薄い人々ではあるものの、その数の多さ、自分との異質性、そしてソーシャルネットワークサービスが彼らとの絆を維持しておくことを容易化したことで、彼らを経由して大量の新たな情報がもたらされるという状況が実現している

のであれば、フォロー数/フォロワー数はさらに増えていく。増えていくのはいいが、フォロー数が数百を超えてきたあたりで問題が生じる。それはTwitterの「雑踏化現象」だ。

すでに数百人をフォローしている人ならわかると思うが、何らかのフィルタリングをしない限り、タイムラインを流れていくツイートを全部読むのは不可能だ。そこで我々は流し読みをすることになるが、それでは大切な友達のツイートを見逃すかもしれない。また、企業や各種団体からの重要なアナウンスや告知を見落とすかもしれない。雑踏の中でいくら声を張り上げても、すべての人に届くわけではないのだ。

現在はどうなっているのか。2010年3月に岡田斗司夫が週刊ダイヤモンドのインタビューで予言したように、Facebook人口は急速に増えている(2011年9月の発表では8億人。日本は 2011年12月時点で 推定626万人[セレージャテクノロジー調査])。基本的にFacebookは「友達申請→許可」という流れが通常であるため、Twitterのように友達(フォロー/フォロワー)が大量に増えることはない(ただし、最近になって「フィード購読機能」が追加された)。つまり、面識のある人たちとのつながりが主であり、Facebookは「社交場」として機能していると言えるだろう。

では、2012年初頭の今、Google+はどのような立ち位置なのか。再び、岡田斗司夫へのインタビューから引用する。

 ミクシィが最初に流行ったのは、自分のプロフィールもいろいろ書いてるし、それなりのマイミクもいるから、自分が日記を書くにしても、恥ずかしいことができないっていう、相互監視みたいなものがあったからなんですね。
 逆にその相互監視みたいなものが、縛り付けられすぎると何もできなくなるんです。だから、2ちゃんみたいなのが流行ったのはそれも原因だったんですけど、なさすぎると悪態の数が増えすぎて、「悪貨が良貨を駆逐する」じゃないですけども、悪ユーザーが良ユーザーを駆逐しちゃうんですね。で、駆逐するという意味は、昔はなくなってしまうという意味だったんですけど、今は逃げ場所を探すんです。

そう、Google+は「逃げ場所」となっている(※1)。mixiは友達の家の「たまり場」のような感じで内輪話もできたが、Facebookではそうはいかない(そうしたい場合はプライバシー設定で友達しか見ることができないようにする必要がある。ちょっと面倒だ)。Facebookは「外面をさらす」ところであって、なによりコミュニケーションに重きを置く。でなければ、わざわざ「いいね!(Like)」ボタンなどという「交流促進装置」を設置するわけがない。

その点、Google+は巧妙で、「サークル」という機能を導入し、Facebookのようにわざわざ友達申請しなくても、興味のある人の投稿を読めるようにしている(最近は AKB48 が降臨してきたので、サークルに入れている〔「サクる」と言う〕人も多数存在する。AKB48 Now on Google+)。

先ほどmixiは「たまり場」と書いたが、Google+はmixiとFacebookのいいとこ取りで、サークル機能を使ってゆるいコミュニティを作ろうとしている。まさに大学のサークルや各種同好会のようなもので、ほかのサークルとの掛け持ちOK、中にはいろんな人がいる、という状態だ。このサークル機能、もっとさまざまな設定ができるようになれば、「サークルコミュニティ」(部室)のようなものができるのではないか。これは現段階では仮説にすぎないのではあるが、Google+の今後に注目したい。

【追記】
2012年1月19日に公開されたGoogleのプレスリリースによれば、Google+のユーザー数は全世界で9000万


Google

 
※1 実際、TwitterとFacebookのどちらのアカウントも会社の人間にばれてしまったからGoogle+に逃げてきた、と投稿している人がいた。


【関連リンク】
●情報通信白書 平成23年度:155ページ
 http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h23/html/nc232200.html
●スマートフォンユーザーの利用実態調査結果 2011年05月20日|アドタイ
 http://www.advertimes.com/20110520/article16110/
●フォロー数は平均57.7人、フォロワー数は平均54.4人。Twitterでのフォロー状況 | ソーシャルメディア調査報告書2011 | Web担当者Forum
 http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2011/09/28/10921
●岡田斗司夫インタビュー「FREEの正体 0 円ビジネス大解剖」週刊ダイヤモンド 2010年3月13日号
 http://diamond.jp/go/ct/free/okadatoshio.pdf

「この夏以降、ツイッターはさびれて、フェイスブックに行くであろう。それはもうはっきりしてますね。これだけツイッターが紹介されれば、ツイッターはどんどんここから先、いるだけの場所になり、複数のアカウントを持つのが当たり前になり、bot(自動で投稿されるアカウントで、有名人 bot が多い)がどんどん溢れてきている。
(中略)
つまりつぶやく人と、聞くだけの人の比率が 1:10を超えるようになってくると、どんどんツイッターはつまらない場所になってきて、フェイスブックに行く。まあ、フェイスブックになるのかどうか僕は分からないんですけども、より障壁が高くて、新しくて、いろいろ人が集まりやすい場所ですね。それは Ustream かも分からないです。それらに行くようになってくると、ツイッターはさびれるでしょう」

●セレージャテクノロジー、アジア各国のFacebook推定ユーザ数を発表。
 日本は1ヶ月で102万人の急増で600万人突破。1位インドネシア他上位3カ国に変動なし。:2011年12月15日
 http://www.cereja.co.jp/press_release20111215.pdf

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