[書評]原発・正力・CIA
原発、正力、CIAはよく似ている。その存在を賛美することはできないが、かといって否定することもできない。-著者あとがきより
太平洋戦争において原爆を2回も落とされ、さらにビキニ環礁での水爆実験で第五福竜丸が被爆した1950年代の日本にどうして原子力発電が導入されたのでしょうか?現代社会の産業において原子力発電による電力は必要不可欠であり、この早くからの導入が高度成長を支えたというのは歴史が証明しています。
これら魑魅魍魎とした昭和史から50年経ち、CIAの機密文書が公開になったことから正力松太郎がCIAのエージェントであったことが明らかになりました。ただし正力はCIAに利用されていたわけではなく、むしろCIAを利用して日本の発展に寄与した人物だったのです。
読売新聞の中興の祖であり、衆院議員、科技庁長官、国家公安委員長などを歴任した正力松太郎は、カラーテレビと原子力発電、さらにはジェット戦闘機や東京ディズニーランドまで日本に導入たらしめた昭和の巨魁です。メディアと政治を巧みに利用し、CIAと渡り合ったその手腕は、原子力に対する日本国民のアレルギーをエネルギー革命を待望する世論へと変え、アメリカ側からもあと5年はかかると言われた動力炉の導入を実現しました。
清濁併せ持った正力の金と胆力が保守合同による自由民主党の誕生をもたらしたことは、現在も正力の後継者である読売グループ会長の渡邊恒雄が政治に対して隠然たる影響力を持っていることに繋がっています。さらに現在の免許制に守られたテレビ局の仕組みというのも元はと言えば正力マイクロ波構想の影響を受けており、現在の政治とメディアの互恵関係を形成した存在といえます。
そんなメディアによるプロパガンダやCIAなどによる諜報活動を謀略と否定するのはカンタンです。理想や建前で言えば、世論を操作する政治とメディアは許せません。ただこれらの必要悪がなければ、数々の問題は戦争という具体的実力行使で解決する他なくなるわけですから、これらの歴史的事実に衝撃を受ける日本社会がいかに平和ボケしているかということでしょう。
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