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映画「ゴースト・イン・ザ・シェル」とテクノロジー表現の難しさ

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映画「ゴースト・イン・ザ・シェル」を吹き替え版で公開初日に見てきました。

既にご存じの方も多いとは思いますが、本作は士郎正宗さんによる漫画「攻殻機動隊」を原作としていますが、漫画だけでなく押井守監督によるアニメ映画化や、神山健治監督によるTVアニメシリーズなどが展開されており、日本のみならず海外にも多くファンがいる作品です。

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今回の映画「ゴースト・イン・ザ・シェル」は、そうした日本発の作品がハリウッドによって実写映画化されるということで、攻殻機動隊ファンの私としては「この世界観をどう表現するのか」という点がとても気になっていました。

以前もコラムで書いたのですが、「攻殻」作品の面白さの1つに、「テクノロジー」の表現があります。あまり詳しく書くとネタバレになってしまうので詳細は省きますが、本作でもそうしたテクノロジーについての表現で考えさせられる点がありましたので、2つの技術要素をピックアップして紹介したいと思います。

【ロボティクス】

攻殻の世界では、人間の体を機械化することを「義体化」と呼んでいます。腕だけ、目だけ、特定の臓器だけ、といった段階的な義体化から、脳以外全てを機械の体にする「全身義体」というのもあります。攻殻作品では主人公がこの全身義体化をしているのですが、作品によってこの義体のテクノロジー(ロボティクス技術)の演出が異なっているのです。

例えば脳と神経・血液はどう接続しているのか、皮膚や骨を構成する素材(の表現)はどうなっているのか、遠隔操作もしくは直接続によるハッキング手法など、現代の技術を知っていればいるほど、作品内で実現されている「近未来のテクノロジー」に興味を引かれます。

なお、一般的にこうしたSF作品における「ロボット」というと、人間が搭乗して操作する大型のロボットなどを想像する人も多いでしょうが、この「義体化」も最先端のロボット工学が詰め込まれたテクノロジーの集合体だと考えています。

今回の映画でも、ハリウッドの制作陣がそうした要素を一から考えただろうなという表現が見て取れ、楽しむことができました。

【ネットワーク】

攻殻作品で注目すべきもう1つのテクノロジー表現として、「ネットワーク」が挙げられます(本当はもっとあるのですが、スペースと時間の問題で割愛...)。

既に現代では無線接続が当たり前になってきていますが、25年以上前に描かれた原作では、義体同士のコミュニケーションは基本的に無線で、「電話」のような特定の媒介を必要としていません。

ただ一方で、有線による接続も依然として有効な手段として存在しており、そうした新技術と旧技術の絶妙なバランス感が、攻殻のリアリティーさ、魅力につながっていると感じます。

例えば、PCの操作に欠かせないマウスを想像してみてください。2017年現在、無線接続によるマウス操作が普及してきてはいますが、有線マウスをかたくなに使い続ける人もいませんか? また、マウス自体も、ホイール式、光学式、といった異なるセンサー技術が混在していますよね。

ただ、この新旧のテクノロジーのバランス感をエンターテインメントとして成立させるのは非常に難しいところで、実写映画でここに面白さを持たせるのは、ハリウッドでもなかなか苦労しただろうな......と感じる部分もありました。どのシーンがどうだったか、を語りたいのは山々なのですが、すべてネタバレになってしまうので、直接会って話せる方と熱く語り合いたいと思います(笑

さて、この「ロボティクス」「ネットワーク」の2つだけでもまだまだ話し足りないところがあるのですが......、まずは実際に映画を見て確かめていただきたいと思います。

日々テクノロジーの進歩に携わる方々だからこそ感じる部分もあるのではないでしょうか。

【関連リンク】

「ゴースト・イン・ザ・シェル」公式サイト

▼実写版攻殻「ゴースト・イン・ザ・シェル」、少佐の日本語吹き替えは田中敦子に! 大塚明夫、山寺宏一も同役で - ねとらぼ

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