『風立ちぬ』に見た日本のモノづくり
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素晴らしい映画だった。
ジブリがこういう映画を作るということにとても意義を感じる。
日本のモノづくりと、そして戦争の歴史。ただ、けして悲惨さを煽るようなものではなく、戦争を美化するようなものでもなく、ただそこで生きた人物をジブリらしく描き切っていた。
主人公は、「零戦」の設計者である堀越二郎という人物。ジブリには珍しく実在する人物を題材としたドキュメンタリーのような映画である。異世界で冒険するわけでもなく、魔法で街を飛び回るでもなく、魚が人間になるわけでもない。しかし、その1人の設計者の生き様はとてもドラマに溢れていた。
ゼロ戦で戦局を打開したかった海軍からは、不可能とも思える多くの要請があった。長距離の飛行や時速500km超の速度を可能にする機体の軽さと、敵機を撃ち落とすための重装備という、相反する性能を求められたのだ。軽部氏が続ける。「これを実現するために、堀越は、九試で開発した沈頭鋲に加えて主翼のねじり下げなどの技術を開発します。沈頭鋲は、機体を打ちつける鋲の頭を削って、少しでも空気抵抗を小さくし、機体を軽くする工夫。ねじり下げは、翼にわずかな角度をつけることで乱気流を防ぐ工夫です。こういった積み重ねで、ゼロ戦は速さ、航続距離、操作性など、どの点でも世界一の性能となりました。」
人殺しとしての乗り物である戦闘機を設計するのと、人や夢を運ぶ飛行機を設計するのと、モノづくりにかける情熱は何も変わらない。いかに軽く、丈夫で、長く飛ぶ飛行機を作るにはどうすればいいか。モノづくりのメディアに関わるものとして、そうした設計課題に純粋に向かっていくエンジニア達の姿に心惹かれずにはいられない。
また、その主人公とヒロインの恋物語も清々しい。仕事としても、一人の男性としても、感じ入ることの多い映画だった。
ぜひ多くの方に見て欲しいと思う。
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