最近のことですが、Dell EMC IBM Cloud for VMware というサービスが発表されました。一見すると、何それという感じですよね。社名が4つも並んでいます。これは、IBM Cloud上でDell EMCの法人顧客にVMwareソリューションを提供するものです。
ご存知の通り、DellとEMCは昨年一つになりました。旧EMCが現Dell EMCでDell Technologiesの傘下にあります。VMwareは2004年にEMCに買収されています。
今回の発表はDell EMCの顧客が、IBM Cloud上のVMwareを使えるようになるというものですが、これに対して論評するつもりはありません。面白いなと思うのは、IBMがEMCの子会社であるVMwareと提携していて、そのプラットフォームを親会社たるEMCが使うようになったということです。
IT業界は競争の激しい世界ではありますが、スピードの速さも相当です。すべてを自前で賄うことは無理なので、他社の製品・サービスを提供することで自社の提案を補完、強化することが必要となります。買収という手法も使われますが、それはそう簡単にはいかないため提携という方法が多くなります。会社対会社としては競合とされている場合でも、特定の製品やサービスでは提携をする、というのはもはや珍しくはないのですが、一営業担当の立場からすると、ことはそう単純ではないということもときにはあります。
以前私は主に公共関係のお客様を担当するソフトウェア営業でした。ここではグループウェアのNotes/Dominoが高いシェアを持っていて、IBMやIBMのビジネスパートナー以外の代理店さんからも多数のNotes/Dominoを導入いただいていました。
代理店は地域の販売店のみならず、IT系のメーカー本体がなっていることもよくありました。そうすると、普段は競合する関係にあっても、そのメーカーにNotesを取り扱っていただくこととなります。そうしたメーカーの営業さんにご挨拶にうかがい、打ち合わせをすることもありました。私としてはいつもどおりに営業として振る舞うのですが、先方も営業でありながらこのときばかりはIBMからお願いをされる立場であり、慣れないのでしょうか、どことなくぎこちない雰囲気が漂います。もちろん、不穏な空気ということではありません。このときばかりはメーカーの営業さんも私もNotesでビジネスを獲得したい、という思いは一緒なのですから、そのときは同じチームであると言えます。でも、無事にその案件を獲得後に、別のお客様案件で競合関係になり、どうやら担当営業はその時のXXさんらしい、ということは普通にあります。
逆に、IBM営業である私が、他社の製品を熱心に勧めることもあります。自社製品と合わせて利用してもらうことで、単独では他社と差別化が難しいような製品に付加価値をつけるためです。
こうした現象は、今後さらに増えていくのだろうと思っています。
基本的にはITベンダー各社は専門性を高めた製品やサービスを打ち出していくことでしょう。そうすると、その対抗を作るのではなく、特定の領域では提携することによって自社の持ってない製品・サービスを補完する戦略をとることが増えていくものと思われます。単に補完するのではなく相乗効果を生み出すような提携ができるかが重要になるでしょう。そうした提携を決めるのは会社の上層部ではありますが、営業という立場では、なぜ他社製品と提携しているのか、一緒に提案することでどんなメリットがあるのかを、お客様に分かりやすく説明することが大切になると思います。
環境の変化に臨機応変に対応することも大切ですが、漠然と与えられた製品を提案するのではなく、お客様にとっての価値を理解していただく、ここに丁寧に取り組むことがより重要になっていく、そう考えています。
IBM 中山貴之のWeb Page (平日は毎日更新中)
中山 貴之
2017/09/20 07:30:00