コールセンターを支えるWatsonは地味だけど凄いWatson
IBM Watsonについては、多くのメディアで取り上げられているため、注目されている方もいらっしゃると思います。
関心があるとはいえないまでも、Watsonという言葉を聞いたことがあるという方は、このITmediaのブログの読者の方の大半を占めるのではないでしょうか。
一般的に人工知能(AI)として捉えられることの多いWatsonですが、IBMはWatsonをコグニティブ・コンピューティングとして位置づけています。コグニティブは認知型、と訳されることが多いでしょうか。
最近のWatson活用としては、東京大学医科学研究所での治療方法の検討の支援、恋愛相談への活用等、幅広いものがありますが、身近に感じられるものとしては、お客様相談窓口での活用があげられるのではないでしょうか。
みずほ銀行様ではコールセンター窓口の担当者(オペレーター)が、顧客からの質問に対して適切な回答を選択することを支援するという事例が公表されています。これは、顧客からの問い合わせ内容が音声からテキストに変換してシステムにインプットされると、候補となる質問と回答案が表示され、それを参考に回答する、というものです。これにより、回答までの時間を短縮することでオペレーターのスキルアップと合わせて顧客の満足度を高めることに結びつきます。
Watsonテクノロジーのコールセンター導入で次世代チャネルの構築 (みずほ銀行 News)
IBM Watson みずほ銀行コールセンター業務の革新 (IBM YouTube)
このケースでは、オペレーターが顧客との接点になっていますが、顧客からの問い合わせ内容(主にテキスト情報)をBOTが判断して自動的に応答する仕組みをとっているケースもあります。この場合にはオペレーターは不要で、24時間対応が容易に実現できるというメリットがあります。
また、顧客とのダイレクト、リアルタイムでの対応ではなく、蓄積された顧客の声(Voice of Clients)の分析にWatsonを活用するケースもあります。このケースでは、これまでに蓄積されたログや、その他の媒体に存在する各種情報を収集、分析し、新たな知見の発見へと結びつけていくことにつながります。
三井住友海上様では、年間70万件もの問い合わせに対応するため、オペレーターの増強をはじめとする様々な対策の検討を行っていて、その一環として、顧客がなぜ問い合わせをしてきたかを分析することで、問い合わせに効率的に対応できるようにしていくこととしました。問い合わせ内容は文章で蓄積されていきます。そういった非構造化データをテキスト解析技術で分析することにより、お客様タイプ別の問い合わせ傾向の把握を行い、分析結果をもとに情報発信やオペレーター配置の適正化に取り組むことで、問い合わせ件数の削減や応答率が向上するといった効果が得られました。
三井住友海上、 IBM Watson Explorer でお客さまサービスを変革 (三井住友海上プレスリリース)
"脱Excel"でクレーム半減、三井住友海上の挑戦 (ITmediaエンタープライズ)
Watsonは華やかな印象を持たれることが多いのですが、この両方のケースとも、重要な位置づけにあるのが、膨大な文書を解析して傾向の分析を行うツールの存在です。
文書はリレーショナル・データベースに格納することのできる構造化データだけでなく、会話内容やSNS上のクチコミ情報等といった非構造化データを多く含みます。これはお客様のいわば生の声であり、これを活用するかどうかが重要なカギとなってくるのです。こういった非構造化データを自動的に分類し階層化することで、キーワードでの検索を容易にします。
クレームとまではいかないまでも不満として表明されるが多くなっている製品を特定したり、膨大なデータの中では数的には少数ではあるものの、企業側が思いもしていなかった製品同士の関連性を見出したり、ということも、テキスト分析により発見できることがあります。
分類により階層して蓄積されている文書と、最新のSNSでのコンテンツをリアルタイムに突き合わせることで、その最新情報とこれまでの社内の知見とを合わせて分析する、といったことで、時期を逸せずに素早くアクションに移すことを可能にします。
高度な検索および解析技術を基にしたこのソリューションは「IBM Watson Explorer」です。IBM東京基礎研究所で長年研究されてきた日本語解析技術もふんだんに組み込まれています。
Watson Explorerは、「地味だけど凄いヤツ」と私は思っています。
お客様窓口における満足向上を検討されていて、AIによって何かできないかと考えている方、このWatson Explorerをご紹介するWebセミナーにぜひご参加ください。
10月31日(月) 17:00-17:45開催、私が講師を担当します。
「IBM Watson顧客満足向上オファリング」 〜 お客様の声分析ソリューション(Watson Explorer)ご紹介 〜
IBM 中山貴之のWeb Page (平日は毎日更新中)