辻俊彦著「愚直に積め!」 - 仕事熱中症候群の人にお勧め
辻さんは、オルタナティブ・ブログを昨年の 9 月から開始されたにも係わらず、すでにブロガー・ベスト 30 の常連である。そして、住信インベストメント株式会社でベンチャー・キャピタリストとして、現在16社の投資担当をされている。
辻さんには、直接お会いし、お話をする事ができた。ひとことで「質実剛健」というタイプで、この人が社外重役をされているベンチャー企業は、頼りがいがあるだろうなぁ、と想像できる。ただし、質実剛健といっても、堅物ではなく、辻さんの別のブログ(アメブロ)のサブタイトルが「起業家の視線に立ち、現場で働くキャピタリスト。やっぱり、愛がなくちゃね!」であるように、とても、人間味のある人だと思う。
ベンチャー・キャピタリストという職業が、ある程度一般的に理解出来るようになったのは、2000年を過ぎてからだろう。小さくとも、ある分野に特化した優れた企業を、資本を持っている人や企業が優先的・選択的に資本を注入して、成功させ、その資本注入からの利潤を得るものだ。
ベンチャー・キャピタリストという言葉から、私は、渋沢栄一を想像してしまう。渋沢栄一が創立した企業は、今や大企業になっており、その数も 500 社に上る。しかし、日本が明治維新で、あたかもベンチャー企業のように、新しく起業をあちらこちらで開始したとき、渋沢は、第一国立銀行、東京ガス、東京海上火災保険、王子製紙、太平洋セメント、帝国ホテル、秩父鉄道、京阪電気鉄道、東京証券取引所、キリンビール、サッポロビールなどを設立した。
それぞれの起業にあたり、各企業での経営者、リーダー、社員に渋沢が大きな影響を与えたように、辻さんもご担当されている各企業で、ビジネスを推進するに当たっての考え方、進め方、そして成功をするための極意「愚直に積み重ねていくこと」について、多大な影響を与えているに違いない。
その考え方、方法論を惜しみなく教えてくれるのが、辻さんの著書「愚直に積め!」だ。この本、辻さんから頂いたのだが、実のところ、私は本は身銭を切る事を信条にしており、無料の本は読まないのだが、この本は例外としたい。
この本は、ベンチャー企業を興したい経営者の為の本だと限定する必要はない。10名の会社も、10,000 人を越える従業員のいる企業にも通じる優良なビジネス指南書である。実は、私もある分野で、新規事業を進めたいと思っており、たいへん参考になる。今日読んで良かった本だ。
新入社員でも、中堅社員も、ベテランも、どのレベルの人たちにとっても参考になる項目が多いので、実は、真剣に仕事を楽しんでいる人たちすべてにとって、最適な推薦図書である。特に、仕事に熱中している、もっとも成功する可能性の高いあなたたちにとって、理論武装し、自分を省みるために、俯瞰して状況を把握するために、これは必読書なのではないか。
以前、辻さんに話を伺って、辻さんがたいへん読書好きであることを知った。この本を手にとって「にやり」と笑った部分がある。昔の本には、通常、最後の数ページが白紙のまま残してあり、ここにその本で気が付いたこと、発展して考察したことなど、書くスペースとして取ってある。
いただいた本にも、3枚空白のページがあった。もしかしたら市販本には、ここに出版元の宣伝などが印刷されるのかもしれないが、昔の商業主義でない本をいただいたつもりで、私の愛読書としたい。