9000mの高度差の話
「どうも、我々がジェット機で高度10,000m を飛ぶ話をしているのに、お客さんの頭の中は、高度1,000m をプロペラ機で飛ぶ事しか想像できないみたいだな。」
この話をしたのは、最近のことではない。およそ20年前、データ中心型のアプリケーション開発の話をツール技術を交えて、あるお客様のところに行った時の、私と私のその当時の上司の首藤さんとの会話だ。10,000m のたとえを使ったのは首藤さんだ。プラットフォームは当然メインフレームである。
この逸話は、しかしある種、普遍性を持っているように思える。特に製品やソリューションを準備し、内容を吟味した後、エバンジェリスト的な活動をしていると、よく、こういう状態に陥る事がある。世界的な動きや技術面の優位性や経済性からいって、自分は正しい事を話し、よりよい方向をお話ししているつもりになっているが、エンド・ユーザと直接顔を合わせて、日々、格闘している、情シスの人の目の前の問題とは、大きなギャップが生じる。
ここで我々が(エバンジェリスト的な活動を主とするタイプの職業の人たち)が、肝に命じて踏ん張らねばならないのは、日本特有の「お客様は神様です」的な発想に気をつける事だと思う。お客様の目の前の問題を解決するのは、別の次元の話だ。
よく、この技術はお客様の問題を解決します、と言ったフレーズを聞くが、ガートナーなどのアナリスト企業のコンファレンスなどでよく明言されるように、新しい技術は不連続であり、目の前の問題を解決するものではなく、もっと大きな規模で、企業や大きくは人類の可能性を変えていくものだ。場合によっては、ある種の痛みや追加的な労力、リスクが発生する可能性もあるが、全体を通して、新しい方向性が生まれでてくるものであるものであれば、勘違いせず、耳を貸してほしい。
サンは、Project Blackbox やマルチコア・マルチスレッディングのチップ「UltraSPARC」、4Uのラックマウント型なのに24TBのストレージを持ったサーバ「X4500」、EAIとBPMが合体したソフトウェア「Java CAPS」、チップレス・ディスクレスのシン・クライアント「Sun Ray」など、ユニークな技術、ユニークな製品やソリューションを提供している。ITのエバンジェリスト的な企業だといえる。サンの発言にいつも注目していって欲しい。Project Blackbox を使って地下基地を作ってしまうサンは、やっぱり変な会社だ!