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外資系金融機関を担当する経営コンサルタントの活動記録 ~ プライスウォーターハウスクーパースの高橋正敏です。

個人金融資産の活用をビジネス機会として考えるとき、尊敬の気持ちは忘れたくない。

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日本の景気回復の原資にしようと、よく話題になるのが、日本人の「個人金融資産」です。日銀の統計では1461兆円(2001年末)と算出されていて、その半分以上が現預金です。そして50代から60代が多く保有していると言われています。

先進国のなかでは、この現金の比率が高いのが日本で、資産家の年齢が加速度的に上がっているのも日本です。ここでよく使われる営業トークですが、資産の半分近くを株式や投信で持つアメリカをさして、「さあ、日本人もエクイティに関心を持ちましょう」とか「もっと貯金でなくて投資をしよう」という言い方があります。また「子供が住宅を買うときに支援してあげましょう」みたいな話もあります。いずれにしても、この個人金融資産はビジネス上注目されていて、これを活用すれば、今の不景気や暗い経済的ムードが吹き飛ぶみたいな空気はありますね。

でも一線を画すべきは、政府の借金でしょうね。政府の債務は882兆円(2010222日現在)あるとのことですが、これを改善するために、この個人金融資産に目をつけるのは慎重になってもらいたいと思います。日本国債の格付けが低いと、「日本にはこんなに金融資産があるのにおかしい」などと、政府の金と民間の金をごっちゃにする議論がたまにあります。

一般家計にたとえると、8820万円の借金を抱えた443万円の収入の人間が、929万円の消費をしているわけです。でも子供が14000万円資産持っているよ、と言って誰かから金を借りるわけです。貸すほうは当然、子供の資産を当てにしますが、子供はいい迷惑です。

そうそう、今日は、国家財政のことを言いたいのではなかった。。。言いたいのは、せっかくの個人金融資産はちゃんと貯金してくれたひとへの尊敬を示してから使わせてもらいましょうね、ということです。いずれは、これに頼らなくてはいけないわけですから。もっと大きく言うと、それはクライアントが獲得してくれた予算を何よりも大事にしてサービスを行おうという、自分自身への戒めです。

真面目に生きて貯金をして分相応に消費する、って普通で地味ですが、尊敬すべきことですね。昨日、孫を見せるため義父母のところへ出かけたとき、そのように考えました。彼らは高齢で商店を経営しており、今でも一生懸命働いています。その誠実な生き様は頭が下がる思いでして、ある種の世の中の失策もこういう真面目なひとがいて何とかバランスが保たれるのかな、と思ったのでした。

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