コンサルタントへの批判にどう応えていくか
「コンサルタント不審・不信・不振・・・」とはなかなかうまいことを言うなあ、と思いながらも、その当事者たるコンサルタントとしては、昨今のそのような状況を踏まえ、自らの仕事について考察し、その仕事のあり方を発信していく必要性を感じています。
私は、事業会社とコンサルティングファームの両方に勤務した経験があります。ですので、クライアントがコンサルタントに不信感を持つ声が理解できなくはないのです。その上でコンサルタントに転身して、いくつかのプロジェクトを経験した際に、多くの非難や文句を直接的・間接的に聞いて対応してきました。それら批判は、振り返ると主に以下の2種類のタイプに分かれると考えています。
まず、「アドバイスする立場」についての批判があります。(タイプ1)
貴方たちコンサルタントは・・・
■ 戦略や企画を言いっ放しで、実行しようとしない。往々にして絵に描いた餅のようなものだ
■ アドバイスはするけど、実際に汗を流すのはいつも我々(クライアント)である
■ 仮にプロジェクトが失敗に終わっても責任とらない。ただ引き上げていくだけ
■ 問題点を指摘するのはうまいが、現場の苦労を知らないで勝手なことを言う
こうした思いから、徐々にクライアントとコンサルタントの関係が悪化して、「フィーが高い」「クライアントに反論するときの言葉遣いがなっていない」という話も出てきて、しまいには「やたらタクシーに乗る」とか「高そうな服を着ている」と言った、言いがかりに近い発言まで飛び出してくることがあります。
また、一方で高いフィーをとっていることもあり、過度な期待や、知識を要求され、それが通らないことに対する批判もありました。(タイプ2)
貴方は、コンサルタントなんだから・・・
■ こんな分析は時間をいつまでもかけていないで、さっさと済ませてくれよ
■ (業界用語・IT用語等をさして)こんな言葉ぐらい知っていて当然でしょ
■ この問題に対して何をしたらいいか早く教えてくれよ
■ とにかくこの状況、何とかしてくれよ
(タイプ1)のような場合、クライアントとコンサルタントが一体となっておらず、「僕は言うひと」「貴方はやるひと」という関係になっているときにでてくる批判でしょう。
しかし、クライアントが「当事者」であり、コンサルタントが「外部のひと」である事実は変えようがありません。ここはコンサルタントがプロジェクトにもたらす成果についてしつこく検証する姿勢をもつことが大事であると思います。受け取ったフィーに対してそれ以上の成果が出ているのか、検証し、また意識しながらクライアントに付き合うのが大事です。当事者以上に成果にこだわることが、クライアントを感動させると思います。とにかく成果が出るように出るように、支援するよう私は教わりましたし、必要な際には一緒になってクライアントのユーザに頭を下げに行くシーンもありました。
要は、成果を出すため、実行まで面倒を見るコンサルタントが望まれていると思います。
(タイプ2)のような事態もクライアントとコンサルタントが一体となっていないことに起因しているのでしょう。基本コンサルタントは知識量や事務処理スピード、業務の手際良さで勝負はしません。が、それぞれ「たいていにひとには勝つ」というレベルを身につけるのは暗黙の了解となっています。
プロジェクトの目的とタスク・役割をクライアントと共有して、実際に成果が出るかどうかに集中することが大事です。課題の収集、仮説の検証、議論、対策実施、検証・・・と続く地道な作業を、クライアントと必要性を共有しながら進めて行きたいところです。
要は、改善に向けて、一緒に動いてくれるコンサルタントが望まれていると思います。
コンサルタントには、弁護士や医師のように公的資格がありません。もっと言うと、所属するファームの規模やそのひとの役職も関係がありません。個々のスキルや知識を超えて、コンサルタント個人がその能力をまるごとクライアントに買ってもらわないと仕事にならないのです。そうなると、エリック松永氏が言うように
「いかに短時間の間に、『ああ、このひとなら変えてくれる』と思わせることができるか」
(コンサルTVより抜粋)
という点が、コンサルタントの総合的な実力を測るポイントといえるでしょう。クライアントとしてはコンサルタントと契約する前に、そこをじっくりと見極めておく必要があります。
コンサルタントの仕事は、きちんと行えばクライアントを幸福にします。ですので、コンサルタントという呼び方は大事にしたいし、それを汚す者は潰したい。そして、生涯コンサルタントと名乗っていられるよう研鑽したいと思います。私はこの仕事が大好きなのです。