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外資系金融機関を担当する経営コンサルタントの活動記録 ~ プライスウォーターハウスクーパースの高橋正敏です。

純粋な議論

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コンサルタントは色々な場面で議論をします。その目的は提案書のブラッシュアップだったり、企画したビジネスモデルの妥当性検証であったり、また、プロジェクトの最終報告でいかにクライアントに気持ち良くプレゼンを聞いていただくにはどうしたらいいか、など様々です。

仕事は結局お金を払ってくれる顧客のための活動ですから、議論も当然、クライアントサービスの一環です。私は、コンサルティングの場合、成果物作成の過程におけるこの議論に対して、クライアントはフィーを払ってくれているのではないか、と考えています。

類似のプロジェクトのケースや世にあるソリューションを準備できたらそれで満足しがちですが、その上にさらに、「これで本当にいいのか」「この部分はおかしくないか」「こう変えたらもっと良くなるのにどうしてできないのか」・・・これを議論するプロセスが不可欠だと思います。

議論をするひとたちが、その必要性を認識していても、やはり人間が感情の動物である以上、軋轢も生じます。そのため、当初の目的である「顧客満足の向上」を忘れて、邪心がまざることもあります。特に以下のケースがたまに見られます。

-         自分の意見が否定されたら、根拠のない反論をする、無気力になり議論に参加しなくなる

-         勝ち負けにこだわり、参加者のなかで最もパワーがありそうな人の意見に同意する

-         「私が間違っているかもしれませんが・・・」と予防線を張る前振りが多くなる

-         最小限の正しい発言だけをして、新たな疑問や仮説を出さず、欠点のみを追及する

議論の場ではせっかく真実や真実に近いものが出てくることが期待できるのに、これではもったいないです。意識的に負の感情を自分のなかで消して、純粋な議論をする、これが重要と思います。顧客にとってはより良いアウトプットのみが必要なのだから。

ちなみに、議論(Discuss)ということについて、Debate(討議)と比較して、大前研一さんは次のように述べています。

"discuss"という言葉は、否定を意味する"dis"と、恨むという意味の"cuss"が合体した言葉です。要するに、反対したり、反論したりしても「恨みっこなし」というのがディスカッションの本来の意味なのです」

大前研一 「ザ・プロフェッショナル」より

なるほど・・・これを読んだとき、思わず納得しました。さらに彼は、「議論する力は、相手を言い負かすためでも、言いくるめるためでもない」とも言っています。ですので、議論の場においては、多少の傷は受けて立ちましょう。そして思い切って発言していきましょう。より良いクライアントサービスを目指して。

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