若者の「離れ」現象
テレビCM、新聞広告などを中心とするマス広告業界に激震が走っています。
毎年増加を続けてきた日本の総広告費は、2008年に5年ぶりに前年実績を下回り、
その後、テレビ局、新聞社、大手広告代理店などマスコミ業界の決算が減収減益や赤字転落して
しまっているのです。
マス広告・マスコミ業界にいったい何が起きているのでしょうか。
広告を打ってもモノが売れない。
その理由は不景気だからと言う人もいますが、どうも不景気だけが理由とは思えません。
もっと根本的な変化が起きているのです。
そのキーワードが「離れ」現象です。
若者を中心に「CM離れ」「活字離れ」「テレビ離れ」「消費離れ」など
様々な「離れ」現象が起こっています。これが既存マスメディアの影響力が
弱まり、マス広告の効果が下がっている大きな理由になっているのです。
視聴者とスポンサーの「CM離れ」
テレビにとって痛手になっているのはHDDレコーダーのCMスキップ機能です。
視聴者が興味のないCMを自由に拒否するようになったのです。
オンタイムでテレビを見ずに、ハードディスクに番組を録画溜めしているため
30秒スキップ機能で見たくないCMを飛ばし、番組本編だけを視聴しているのです。
この機能によって、CMスキップは増加し、番組を見ていたとしても
CMを見ているかどうかがわからず、クラアントの「CM離れ」が加速しました。
若者の「活字離れ」
これはインターネットの利用時間の大幅増加や携帯小説の登場などにより
新聞・雑誌・書籍など紙をベースとした活字メディアを読む平均時間や
販売部数が減少現象していることを表しています。
一般書籍の売り上げは1996年以来と以前から縮小傾向ですが、
携帯電話やパソコンで読む電子書籍の市場は年々倍増し、その影響で
「活字離れ」がより進んでいるのです。その象徴がiPadとキンドルではないでしょうか。
このツールの登場で出版業界は大きな転換期を迎えているのです。
また、新聞に関しても「新聞はいらない。ネットで十分」といった
無料のインターネット上からニュース情報を取る習慣を持つ若者が増え、
新聞を読まない傾向が強くなってきています。
このように紙をベースとした活字媒体から離れる若者が増えているのです。
若者の「テレビ離れ」
これはインターネットの利用時間の大幅増加により、相対的にテレビ視聴をする頻度が
低下しているという現象です。テレビを見るよりも、ツイッターやミクシーで
友達とのコミュニケーションを楽しんだり、ユーチューブで話題になっている
テレビ番組の面白い場面だけをつまみ食いする方がずっと楽しいと
感じている人たちが増え続けているのです。
実際に2010年にNTTコミュニケーションズが行った調査では、20代以下の若い世代は
他の世代に比べテレビ離れの傾向が大きく出ており、録画をしてテレビを見るという人も
他の世代に比べ少ない傾向があるという調査結果を発表しています。
若者の「消費離れ」
「嫌消費」世代の研究(著:松田久一)という本には、若者の消費離れをこう表現しています。
「クルマ買うなんてバカじゃないの?」
「化粧水に1000円以上出すなんて信じられない」、
「大型テレビは要らない。ワンセグで十分」、
これらの発言は消費好き世代には予想できない発言かもしれません。
若者は消費をしない訳ではないが、他世代に比べて、収入に見合った消費をしない
心理的な態度を持っています。このような傾向を「嫌消費(けんしょうひ)」と呼んでいるのです。
つまり今の若者が消費しないのは常に節約モードだからということです。
将来の不安、雇用の不安定など収入の見通が悪く、低収入層が増えている世の中で
将来を考え、何かを消費するより貯金通帳の数字が増える方が安心する世代なのです。
売り手にとって、消費そのものが嫌いで節約疲れとは無縁の若者たち
「嫌消費」世代は今の不況よりも脅威ではないでしょうか。