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東南アジアのデータセンター建設がAPACの約50%に、ジョホール・バンコクへ開発が集まる背景

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アジア太平洋地域のデータセンター開発パイプラインが2026年上半期に過去最高となる26.5GWに到達する一方、空室率は10.3%へと低下しました。ハイパースケーラー各社によるAI需要の取り込みが加速する中、投資の優先順位は従来の通信集積地から大規模な電力供給を確保できる地域へと舵を切っています。

事業用不動産サービス大手のクッシュマン・アンド・ウェイクフィールドが2026年8月7日に公表した調査によると、東南アジアを中心に進む開発拠点の分散と、急速な需要拡大がもたらすインフラ制約の実態が示されています。

今回は、記録的な開発規模を吸収する旺盛な実需の背景、電力確保へと転換する立地戦略、工期短縮と環境負荷低減を両立させる実装技術、そして2028年に向けた地域全体の投資判断の方向性について、取り上げたいと思います。ChatGPT Image 2026年8月9日 09_02_18.jpg

記録的な新規供給を吸収する旺盛な実需と需給の引き締まり

アジア太平洋地域におけるデータセンターの開発パイプラインは、2026年上半期に過去最高となる26.5GWに達しました。わずか6か月間で7.1GWの計画容量が新たに追加され、現在の内訳は建設中が4.8GW、計画中が21.7GWを占めています。同半期には約1.4GWの稼働容量が新たに市場へ投入されており、サプライチェーンの制約を克服しながら大規模なインフラを供給する能力が実証されました。

これだけの大規模な供給追加が進んでいるにもかかわらず、コロケーション市場の空室率は2025年下半期の10.9%から2026年上半期には10.3%へと低下しています。通常、短期間に大量の新規床が供給されると一時的な需給の緩和を招きやすい傾向がありますが、現在の市場では供給の増加速度を上回るペースでテナント需要が吸収されている状況がうかがえます。

この背景には、ハイパースケーラーと呼ばれる巨大クラウド事業者やAIプラットフォーム各社による、計算資源の囲い込みがあります。人工知能モデルの学習や推論に必要なコンピュート需要が世界規模で拡大しており、事業者は将来の利用枠を事前に確保する動きを強めています。大規模な新規供給があっても空室率が低下し続ける現象は、足元の市場拡大が投機的な思惑ではなく、明確な実需に支えられている事実を裏付けています。

通信の集積地から電力確保型拠点へと転換する立地戦略

データセンターの立地選定における優先順位は、これまでの通信ネットワークへの接続性重視から、大規模な電力を安定して調達できるか否かという視点へと大きく変化しています。次世代のAIワークロードを処理する施設では、サーバーラックあたりの消費電力が従来の数倍から十数倍規模へと急増しており、既存の都市型通信ハブでは電力網の容量不足が深刻化しているためです。

この構造変化の受け皿として存在感を高めているのが東南アジア地域です。東南アジアはアジア太平洋地域全体の建設中容量の約50%を占めるに至っており、地域の開発を牽引する中核エリアとなっています。国別ではマレーシアが1,039MWの建設中容量で首位に立ち、タイが859MWで続いています。

都市単位で見ると、マレーシアのジョホールでは建設中容量が2026年上半期に前年同期比91%増の602MWへと倍増し、タイのバンコクでも建設中容量が148%増の859MWに達しました。シンガポールなど従来の主要ハブが抱える敷地や電力の制約を補完しつつ、政府によるデジタルインフラ支援策や安価で豊富な電力供給力を背景に、新たな成長回廊が急速に形成されつつあると解釈するのが妥当です。

工期短縮と環境負荷低減を両立させる実装技術の高度化

計算需要の急伸に対応するため、データセンターの開発現場では市場投入までの期間短縮が投資判断における重要な評価軸となっています。AI開発競争の激化に伴い、インフラの完成時期が数カ月遅れるだけで、事業者が獲得を見込む先行者利益が損なわれる可能性があるためです。

こうした要請に応える手段として、現場での施工期間を大幅に圧縮できるモジュール型建設手法の採用が広がっています。工場で標準化されたコンポーネントをあらかじめ製造し、現地で組み立てることで、建設品質の均一化と工期の短縮を同時に達成するアプローチが定着しつつあります。

さらに、高密度な計算環境の実現には、先進的な冷却技術の導入が不可欠となっています。液冷をはじめとする高効率な冷却機構の採用により、限られた電力枠のなかで計算効率を最大化する試みが進められています。同時に、施設の拡張に伴う電力消費だけでなく、冷却用水などの水資源管理を含めた資源効率と持続可能性の確保が、許認可の取得や地域社会との合意形成において不可欠な前提条件となってきていると推測されます。

主要市場における開発拡張性と投資ポートフォリオの分散

アジア太平洋地域の主要都市における開発動向を比較すると、各市場が持つ特性と成長段階の差異がはっきりと現れています。ジョホールは開発パイプラインが3,088MWに達し、稼働中容量1,110MWと将来供給予定容量を合わせると4GWを超える規模となり、地域最大の市場としての地位を固めました。

一方、オーストラリアのシドニーでは開発パイプラインが前年同期比65%増の2,134MWへと拡大し、そのうち計画中容量が83%増の2,018MWを占めるなど、中長期的な拡張計画が急速に積み上がっています。バンコクも開発パイプラインが99%増の2,084MWと倍増に近い伸びを示しており、新興市場から中核市場への移行期にあるとうかがえます。

インドのムンバイは開発パイプライン1,726MW、稼働中890MWと堅調な拡大を維持し、インドネシアのジャカルタはパイプライン1,699MWに対し建設中容量が112%増の395MWと急拡大しています。投資主体の視点からは、単一の成熟都市に依存するリスクを避け、電力供給力と用地拡張性に優れる複数の成長市場へ資産を分散配置するポートフォリオ戦略が定着しつつあると考えられます。

2028年の2GW稼働時代に向けたインフラ共創の枠組み

アジア太平洋地域の市場拡大を受け、クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドが公表する市場成熟度指数の評価基準自体が2026年上半期に引き上げられました。市場の規模と高度化が想定を上回る速度で進展した結果、先進主要市場や成熟市場の定義が見直される状況が生じています。

今後の見通しとして、オーストラリア、インド、日本、マレーシアの4カ国では、2028年までに稼働容量が2GWを超える見通しとなっています。従来のデータセンター立地が一部の大都市圏に限定されていた段階を脱し、国レベルでの大規模なデジタルインフラ基盤が確立される段階への移行を示唆しています。

今後は、土地や建物の確保にとどまらず、現地の電力事業者や規制当局と協調し、長期的な送電網増強や再生可能エネルギーの確保を共同で進められるかどうかが競争力の源泉となるでしょう。規模の拡大と電力供給能力、そして長期的なインフラ整備能力を調和させられる体制を構築できた主体が、次の成長機会を確実に捉えることができると判断するのが合理的です。

今後の展望

アジア太平洋地域におけるデータセンター開発は、AI需要の大幅な増加と電力供給網の制約が交錯する中で、立地の地理的分散と技術の高度化を伴いながら新たな均衡点へと向かう見通しです。東南アジアの新興ハブが建設容量を急速に伸ばす一方、日本やオーストラリアといった先進市場でも2028年に向けた稼働2GWへの拡大が着実に進むと考えられます。

今後は、送電網の接続容量や水資源の利用規制、環境配慮基準の厳格化が、計画中の開発パイプラインが実際に稼働へ至る速度を規定する大きな要因となるでしょう。開発計画の数値規模にとどまらず、地域ごとの電力インフラ整備の進捗度や、モジュール工法や液冷技術による実装効率の差を注視することが求められます。

電力インフラの確保力と迅速な市場投入能力、持続可能な資源管理をバランスよく実現できる体制をいかに構築するかという点が、次世代デジタル基盤の主導権を握るための評価軸となるでしょう。

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