アーバンフォックス?東京23区・練馬区で狐目撃 ─ キツネと聞いたら脊髄反射でエキノコックスって騒ぐなハフポスト。ホンドギツネは悪くない悪いのは人間!
東京23区の練馬区でキツネが目撃されたと、9月18日の朝に日本テレビが報じました。目撃されたのは9月13日。専門家は「アーバンフォックス」ではないかとしています。23区でキツネというのは、確かに珍しい。
実を言うと、うちの監視カメラにも映っています。今回が初めてでもありません。ついでに言うと、狸もアライグマもハクビシンもネズミもノネコも映る。全部出ます。
そして報道の約3時間後、ハフポスト日本版がこれを出しました。
「東京23区で『キツネ』目撃⇨もし寄生虫に感染すると人の肝臓はこうなる...触らなくても危険な『エキノコックス』」
リードの1文目がこれです。
キツネは、命に関わることもある寄生虫「エキノコックス」を保有していることが多いことで知られています。
本州のキツネの話をしているのに、その根拠が1行も書かれていない。厚生労働省、北海道庁、愛知県衛生研究所、東京都、それに2023年の総説まで全部当たりました。
結果から言うと、私が想像していたよりずっと面白い話でした。そしてハフポストは、その面白いところを全部落としています。
そもそもアーバンフォックスとは何か
日本テレビの報道で専門家が挙げていた「アーバンフォックス」は、都市環境に適応したキツネのことです。ロンドンでは庭先に普通にいる存在として知られています。
日本でも、これは特別な現象ではありません。北海道立衛生研究所の浦口宏二氏の報告によると、札幌市では1990年代から都市ギツネ(urban fox)の出没が顕著になり、市内中心部で営巣する個体まで現れました。いまや札幌市民にとって、きわめて身近な野生動物になりつつあるとされています。
都市に出てくる理由もはっきりしています。塚田英晴氏の研究では、札幌の市街地に生息するキツネは人為物(残飯)への依存度が高いとされています。餌があるから来るんです。そして市街地周辺では、それに伴って自動車にはねられるキツネが増えました。
練馬区は23区の中では畑や緑地がよく残っている地域です。うちの監視カメラには、狐のほかに狸、アライグマ、ハクビシン、ネズミ、ノネコまで映ります。キツネだけが特別に出てきたわけではありません。
都市に野生動物が出ること自体は、餌と隠れ場所があれば起きます。そこは驚くところではない。都内でキツネを見かけたとしても、それ自体は異常事態ではありません。問題は、そこに何を結びつけるかです。
まず「キツネ=エキノコックス」がどこから来たか
北海道のキツネの感染率は、この20年にわたって全域で40%前後で推移しています。文献によっては50%程度まで増加したとするものもあります。
2頭に1頭に近い。北海道では、これは現実の脅威です。
「キツネを見たらエキノコックス」という連想は、この数字から来ています。キタキツネの話なんです。
そもそもエキノコックスは日本の生き物ではない
北海道庁の資料の冒頭に、はっきり書いてあります。
エキノコックスはもともと日本にいた寄生虫ではない。1924〜1926年に、北海道北部の礼文島にネズミ駆除と毛皮生産のため中部千島のシンシル島から移入されたキツネに寄生していたものと考えられている。
厚労省のガイドラインはもう少し具体的です。礼文島は野ネズミによる林業被害が大きく、その駆除と毛皮採取を目的にシムシル島産のキツネ12つがいを移入・放獣した。その中に感染個体がいた。元をたどるとアラスカのセントローレンス島起源で、島から島へキツネや餌の野ネズミを移し続けた結果、礼文島まで到達したとされています。
そして、こう結んでいます。
このように北海道のエキノコックスはいずれの場合も「外来種」と考えられ、しかもその侵入の全部または一部に人為的活動が関与している。
キツネが元から持っていた寄生虫ではありません。人間が持ち込みました。
礼文島では根絶に成功している
ここはあまり知られていないと思います。
礼文島の初発症例は1936年。患者は131人(実際は300人前後と推定されています)。小さな島でこの数は相当です。
対策は、島内のイヌ・ネコ・キツネをすべて解剖検査して終宿主を取り除くというものでした。徹底しています。結果、1965年以降は患者の発生がほぼなくなり、礼文島のエキノコックスは終息しました。
2023年の総説は、これを「多包条虫の根絶に成功した世界に誇る稀有な成功例」と書いています。終宿主を断てば消える。土着の生き物ではないからです。
ところが1965年、根室でやり直しになった
礼文島が終息したその年に、道東の根室市で新たな患者が見つかります。
原因は、また人間です。戦前、根室半島沖の島(ユルリ島や歯舞群島のハルカリ島など)では千島から移入したキツネで養狐が行われていて、戦中・戦後に脱走した個体が流氷にのって根室半島へ渡ったと推定されています。
当初は道東の4支庁(十勝・網走・釧路・根室)に限局。1980年代以降に道内各地へ。1993年にはほぼ全域。最初の患者から30年足らずで北海道一円に広がりました。
ちなみに北海道は1970年から奨励金を出してキツネを駆除しています。1頭6,000円程度、年間1,000頭が目標でした。それでも感染地域は全道に拡大し、感染率はむしろ増えた。総説は「キツネの駆除はエキノコックスの感染拡大防止には十分に機能しなかった」と総括しています。
いま有効とされているのは駆虫薬入りベイトの野外散布です。1999年に小清水町で始まり、札幌の北海道大学キャンパス内での実証実験では、生息するキツネの感染をゼロまで低減することに成功しています。
ここからが本題。本州はどうなのか
ハフポストはこう書いています。
エキノコックスは北海道だけの問題と思われがちですが、実際はそうとも限りません。
愛知県によると、同県内でも犬のエキノコックス症の陽性事例が報告されており、2014年以降で累計9例にのぼるとしています(2025年6月27日時点)。
この「北海道だけではない」は、正しいです。私も最初は「本州には定着していない」と書くつもりでした。調べたら違いました。ここは自分の認識を訂正します。
2023年の総説(モダンメディア69巻11号)の結論はこうです。
日本におけるエキノコックスの侵入と拡大は、ヒトによる宿主動物の移動により引き起こされ、北海道を中心に広がってきた。そして近年では、イヌの人為的移動が原因と推測される本州への分布拡大と定着が確認されるに至った。
定着した、と書かれています。ただし何が定着したのかが重要です。
広がっているのは「野犬」です
本州以南で届出された犬のエキノコックス症は、1例目が2005年の埼玉県、2例目が2014年の愛知県知多郡阿久比町で捕獲された野犬でした。
この2例目の遺伝子を12SリボソームRNA領域のnested PCR法で調べたところ、北海道由来の多包条虫と完全に一致。北海道から来た飼い犬が野犬化したものと推定されています。
そして単発では終わりませんでした。知多半島には野犬が多数生息していて、捕獲して調べるたびに次々と感染が見つかります。
- 2014年 阿久比町
- 2015年 常滑市
- 2017年 半田市、南知多町
- 2018年 知多市、美浜町
- 2020年 武豊町
知多半島全域に広がりました。これを受けて総説は「本州において、多包条虫の野外感染環が定着したと考えられる」としています。
つまりハフポストの「北海道だけではない」は当たっている。問題は、そこで書くのをやめたことです。
知多半島の謎。野犬は、ネズミを食べていない
ここが一番面白いところでした。
知多半島の野犬は、野外でどうやって感染を維持しているのか。総説の筆者らは野犬のフンを採取して食性分析をしています。結果はこうでした。
野犬は主に濃厚飼料などの植物質のエサを採餌しており、中間宿主になりうる哺乳類の採食例を確認できなかった。
ネズミを食べていないんです。じゃあどこから感染しているのか。
そして、野犬のフンを採取したのと同じ場所で、キツネのフンも採れました。キツネは野犬と同じ場所に住んでいた。そのキツネのフンを分析すると、
多包条虫の好適な中間宿主となりうるハタネズミ亜科のハタネズミの採食例が多数確認された。
北海道では、同じハタネズミ亜科のタイリクヤチネズミが中間宿主で、それを好んで捕食するキツネが生活環を回しています。知多半島の構図はそれとよく似ている。だから総説はこう書きます。
知多半島でも野犬とともにキツネが多包条虫の生活環維持に関与している可能性が高い。
怖い話に聞こえます。ただし、続きがあります。
今のところ、筆者らが採集したフンを含め、知多半島で捕獲されたキツネでの多包条虫感染は確認されていないが、キツネの感染状況についても注視していく必要があるだろう。
疑われているのに、出ていない。これが本州のキツネの現在地です。
愛知県は、キツネを検査し続けている
行政側も動いています。愛知県衛生研究所は令和5年11月から、知多半島内で交通事故等により死亡したキツネ等の野生動物も検査対象に加えました。
2026年9月11日現在の月報がこれです。
- 野生動物(キツネ等)22検体。陽性0。陰性18、検査不能4
- 野犬等(平成30年4月以降)1,199検体のうち陽性5。5例すべて犬
県の解説ページにはこうあります。
北海道では感染源となる野生動物が存在していますが、本県では確認されていません
本県においては、北海道でみられるようなキツネやタヌキなどの野生動物が感染源となる生活環は定着していないものと考えられています
注意喚起のページには「適切に予防すれば人への感染の危険性はありません」とまで書かれています。
知多半島では国立感染症研究所による野犬を対象とした駆虫薬の野外散布も始まっています。総説は「礼文島に続く第二の根絶成功例となることを期待しつつ、その推移を注意深く見守っていきたい」と締めています。
青森のブタの件は、単発で終わっている
本州の話でもうひとつ有名なのが、1999年に青森県のと畜検査でブタの肝臓から多包虫が見つかった件です。津軽海峡を越えたのかと当時かなり騒がれました。
その後、終宿主となるキツネやイヌを対象に周辺の感染状況が調査されましたが感染個体は見つかっていません。北海道から搬入されたものを除けば、ブタの感染も確認されなかった。総説は「結局のところ、単発的な発生例だった」としています。
北海道以外の多包虫症は累計で約80例。そのほとんどは北海道か海外の流行地に住んだ経験がある人です。流行地の居住歴がない症例について最も可能性が高いとされる経路は、「流行地で感染した飼い犬が、飼い主と一緒に流行地の外へ移動する」ことです。
キツネが泳いで渡ってくる話ではありません。人間が犬を連れて動く話です。
数字を置いておきます
全国の年間報告数は2018年から順に20、28、24、35、28。このうち北海道が20、28、23、28、23。ほぼ全部が北海道です。
1999年4月から2018年末までの累計425例のうち400例が多包虫症で、95%以上が国内流行地である北海道からの報告でした。
東京都の感染症情報センターのページは、予防として「流行地(国内では北海道)では感染源となるキツネ、犬等に接触しないように」と書いています。都内の動物での発生については何も書かれていません。2023年の総説にも、東京や関東の記述は一切ありません。
警戒すべきは「キツネ」という動物種ではない
ここまでの事実を並べると、話の筋が見えてきます。
本州でエキノコックスが確認されているのは、すべて犬です。埼玉の1例も、知多半島で広がっている分も。そしてその由来は北海道で、遺伝子まで一致している。
人の患者も95%以上が北海道由来。流行地の居住歴がない症例について最有力とされる経路は、繰り返しになりますが「流行地で感染した飼い犬が、飼い主と一緒に流行地の外へ移動する」ことです。
つまり本州において、この寄生虫を実際に運んできた実績があるのはキツネではありません。北海道から来た犬と、その犬を連れて動いた人間です。
だとすれば、キツネという動物種を見ただけで反射的にエキノコックスと言うのは、順番が逆なんです。同じ理屈でいくなら、北海道から戻ってきた犬にも、北海道に住んでいた人にも、同じだけ身構えなければおかしい。誰もそんなことはしません。当たり前です。
実効的な対策は、もっと地味です。北海道に犬を連れて行ったら、帰ってきたら検便を受けて、必要なら駆虫する。放し飼いにしない。フンを片付ける。それだけで、本州で確認されている唯一の伝播経路をふさげます。
面白いことに、ハフポストの記事もこれを書いているんですよ。最後のほうに、こうあります。
また、ペットのイヌについては、定期的に検便を行い、必要に応じて駆虫することも重要だといいます。
正しい。まったく正しい。正しいのに、見出しとリードはキツネなんです。いちばん効く対策を自分で書いておきながら、それを本文の末尾に置いて、頭には「東京23区でキツネ目撃」を持ってきている。
それでも、近づかないし餌もやらない
ここまで書いておいてなんですが、野生動物に近づかない、触らない、餌を与えない。これは当たり前です。カメラに映ったキツネを探しに行ったりもしません。
餌付けをすれば居着きます。居着けば糞尿の問題が出ます。人を怖がらなくなった個体は事故にも遭う。エキノコックスがいようがいまいが、距離を取るのが正解です。
そのうえで、本州で現実に増えている脅威は別にあります。
マダニが媒介するSFTS(重症熱性血小板減少症候群)は2025年に191例で過去最多でした。致死率は10〜30%。2013年3月からの累計は1,185例です。従来は西日本中心でしたが、関東でも北海道でも確認されるようになっています。
動物も無事ではなく、2024年はネコ196頭・イヌ12頭が報告されました。ネコの致死率は60〜70%。2024年3月には国内初のヒトからヒトへの感染も報告されています。治療薬のファビピラビルが承認されたのが2024年6月です。
年間20〜30人でほぼ全部が北海道由来のエキノコックスと、年間191人で本州に広がっているSFTS。都内の草むらを歩く人が気にすべきなのはどちらか。
私が言いたいのはこれです。正しく怖がる。怖がるなと言っているのではありません。怖がる先を間違えるな、という話です。
それで、ハフポストの記事の何が問題なのか
あの記事は嘘を書いていません。症状も感染経路も概ね正しいし、愛知の9例も実在します。「北海道だけではない」も、上に書いた通り当たっています。
問題は2つです。
ひとつ目。「キツネは保有していることが多い」と書いた。北海道のキタキツネなら40%前後で事実です。しかし記事の見出しは「東京23区で『キツネ』目撃」です。練馬のキツネの話として読ませておいて、根拠は北海道の数字。そして本州のキツネの感染状況には一言も触れていない。触れれば「1頭も出ていない」と書かざるを得ないからでしょう。
ふたつ目。愛知の9例を出しておいて、中身を何も調べていない。9例が全部犬だということも、それが野犬だということも、感染源が北海道由来だということも、知多半島全域に広がったことも書いていない。「愛知でも9例ありますよ」で終わっています。
私が今回当たった資料は、厚労省・北海道庁・愛知県衛生研究所・東京都感染症情報センター、それに公開されている総説です。全部ウェブで読めます。愛知県衛生研究所にいたっては月報で検査結果を更新していて、キツネ22検体すべて陰性という数字がそのまま載っている。「愛知県によると」と書くところまで行ったなら、同じサイトの中にあります。
これは事故ではなく、型です
ここまで「見落とし」のように書いてきましたが、正直に言うと私はそう思っていません。
まず時間です。日本テレビの報道が朝7時47分、ハフポストの公開が10時52分。約3時間。取材をした形跡はありません。自治体のウェブページを3つ開いて並べただけです。いわゆるコタツ記事です。
それだけなら、まあ速報の世界ではよくある話です。問題は、あの記事の下に並んでいた「関連記事」でした。実際に並んでいた見出しを、そのまま書き出します。
- この茶色の虫、絶対に家に入れないで。「庭に大量発生」「畳で繁殖」SNSで悲鳴
- "赤い指"のようなキノコ、絶対に触らないで。「公園で発見」「道に」SNSで目撃情報...猛毒
- 浜辺に「青いコイン」のような物体⇨絶対に触らないで。「海水浴場にたくさん」目撃情報
- カミキリムシ似の青緑の虫、絶対に触らないで。「部屋に」「家の外壁に」SNSで目撃情報
- その魚、絶対に刺身や生で食べないで。寄生虫が「皮膚の下を這う」恐れ..."ゾッとした"の声
- この魚を調理するとき、まな板やフキンを絶対に使い回さないで
- この黒褐色の虫、"服を食い荒らす"からすぐ駆除して。「枕カバーめくったら...」SNSで悲鳴
- 食品や本に"白っぽい虫"、すぐ駆除して。「ノイローゼ」「鬱」とSNSで悲鳴
全部同じ型です。[身近な生き物や物体]+「絶対に○○しないで」+「SNSで悲鳴/目撃情報」。
今回のキツネの記事も、この型にきれいに収まっています。「触らなくても危険な」という見出しの言い回しも、「もし寄生虫に感染すると人の肝臓はこうなる」という煽り方も、同じ工場のラインから出てきた製品です。
つまりこれは、調べが足りなかった事故ではありません。怖がらせてインプレッションを取るための型があって、そこに練馬のキツネを流し込んだ。私にはそうとしか見えません。
キツネの感染状況を調べなかったのは、調べる必要がなかったからでしょう。型に必要なのは恐怖であって、事実の分布ではないので。
見なかったのか、見て落としたのか。どちらにしても、報道機関としては失格だと思います。署名は「ハフポスト日本版編集部」なので、個人ではなく編集部の仕事としてそう言います。ジャーナリズムを名乗るなら、目撃情報に既存の恐怖を貼り付けてPVを取りに行く前に、公開資料を読んでほしい。
これは私の個人的な意見です。反論はもちろん受けます。
メディアの取材姿勢については、2019年にNHKのクローズアップ現代がフェイクなネット広告を特集したときにも同じようなことを書きました。7年経っても言うことが変わっていません。
ここからは私の観測です。練馬区に定着しているかもしれない
恐怖の話ではなく、こっちを書きたい。
東京都レッドリスト(本土部)2023で、キツネ(アカギツネ)のカテゴリーはこうなっています。
- 区部(23区)= DD(情報不足)
- 北多摩= EN(絶滅危惧IB類)
- 南多摩・西多摩・本土部= ○(該当なし)
DDは「評価できるだけのデータがない」という意味です。西多摩や南多摩では普通にいる動物が、多摩の東側に来ると絶滅危惧、23区に入ると情報不足になる。これが東京のキツネの現在地です。
区部での目撃として知られているのは、荒川沿い(北区や板橋区のあたり)で迷い込んだ個体が出た、という程度です。練馬区の公式な記録は、私が調べた範囲では見当たりません。少なくともここ数十年は無いのではないかと思っています。
そのうえで、私が自分で見ているものを書きます。
2025年2月9日の午前2時6分ごろ、自宅前の監視カメラに狐が記録されました。色も体型も尻尾の形も、犬ではない。そのときの映像はXに上げています。
これは記録に残すべきだと思ったので、同じ日に東京都環境局 自然環境部 計画課 野生生物担当の問い合わせフォームから、映像つきで報告しました。2月13日に返信をもらっています。
課内で映像を共有し確認させていただきます。この度は、ご提供いただきましてありがとうございました。
そして今回、また映りました。1年半以上あいだが空いて、同じ場所です。さらに、今年に入って大泉のあたりで狐が交通事故で死んでいたというSNSの投稿も見かけました。こちらは私が確認したわけではないので伝聞として書いておきます。
迷い込んだ1頭が通りすがったにしては、間隔が長すぎるし、地点も離れています。複数の個体が練馬区に定着している可能性があると考えています。
ついでに言うと、うちにはタヌキがつがいで来ています。狸もアライグマもハクビシンもノネコもネズミも出る。練馬区の住宅地は、思っているよりずっと野生動物の生活圏です。
私は研究者ではないので、これは素人の観測として読んでください。ただ、区部でDD(情報不足)になっている動物について、住民が撮った映像は情報としての価値があると思っています。だから都に報告しました。
キツネが東京23区に戻ってきているのだとしたら、それは「絶対に触らないで」で片付けていい話ではありません。どこから来て、何を食べて、どう暮らしているのか。誰か調べてほしい。
結局、練馬のキツネはどうなのか
都内でキツネを見た人のために、分かっていることを並べます。
- エキノコックスは日本在来ではなく、人が2度持ち込んだ外来種
- 北海道のキツネの感染率は40%前後。ここは現実に流行地
- 礼文島では根絶に成功している
- 本州にも来ていて、知多半島では野犬で野外感染環が定着したとされる
- ただし本州で感染が確認されているのは犬。キツネからは1頭も出ていない
- 研究者は知多半島でキツネの関与を疑っており、注視が必要としている
- 人の患者は年間20〜30人で、95%以上が北海道由来
- 東京については、行政資料にも総説にも記述がない
練馬のキツネがエキノコックスを持っている可能性がゼロだと証明されたわけではありません。そんな証明はできません。ただ、「保有していることが多い」と書ける根拠は、どこにもない。
都内で狐を見かけたときにやることは、たぶんこれで全部です。近づかない。餌はやらない。触ったら手を洗う。生水は飲まない。
そして、都心にキツネが出たという話は、本来もっと面白がっていい話だと思うんですよ。どうやって都市に適応したのか、何を食べているのか、練馬のどこを通っているのか。
知多半島の話だって、野犬はネズミを食べていないのに感染していて、同じ場所のキツネはネズミを食べているのに感染が出ていないという、めちゃくちゃ面白い謎が残っているわけです。そこを書けば、注意喚起としても「なるほど犬か」と腹に落ちる記事になる。
恐怖を貼り付ける前に、まず調べる。それだけの話です。
※参照した資料:厚生労働省「犬のエキノコックス対応ガイドライン」、同「愛知県知多半島の犬におけるエキノコックス感染事例について」、北海道「エキノコックス症対策の現状」(第2回 北海道エキノコックス症対策協議会 参考資料4)、「エキノコックス症」モダンメディア69巻11号(2023)、愛知県衛生研究所「エキノコックス(多包条虫)調査-検査結果月報」、同「エキノコックス症について」、愛知県「犬におけるエキノコックス症の発生に伴う注意喚起について」、東京都感染症情報センター「エキノコックス症」、国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト(IASR)。
※証拠を残す話はレンタカーの傷でもめた件、行政に食い下がった話は練馬区の自転車撤去の件で書いています。