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AIインフラ拡大で次世代リーダーが注目するフォトニクス技術

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NTTとウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の調査部門であるWSJ Intelligenceは2026年1月14日、、世界の主要企業のCEOを対象としたAI投資とインフラに関する共同調査の結果を発表しました。

New NTT Survey: Global CEOs to Increase Enterprise AI Investment
Despite Infrastructure and Sustainability Concerns

この調査は、世界的なAIブームの中で、経営層が抱える期待と、それを支える技術基盤の現実との間に横たわる「深い溝」を浮き彫りにしています。多くの企業がAIへの投資拡大を計画する一方で、それを受け入れるインフラの最適化や環境負荷への懸念が、深刻な経営課題として顕在化している状況です。なぜ、資金を投じてもAI活用が想定通りに進まないのか。なぜ、サステナビリティと成長がトレードオフの関係にあるのか。

今回は、調査データが示す「投資と準備のギャップ」、環境負荷という「物理的な制約」、そしてこれらを解決する鍵として期待される「光技術(フォトニクス)」と今後の展望について取り上げたいと思います。

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投資意欲とインフラ整備の「非対称性」

調査結果によると、世界のCEOの68%が今後2年間でAIへの投資を増やす計画を持っています。これは、AIが競争力の源泉であるとの認識が定着していることを示しています。その一方で、自社の技術インフラが大規模なAI運用に対して「高度に最適化されている」と回答したのはわずか18%に留まりました。この50ポイントにおよぶ大きな乖離は、経営戦略と現場の技術環境がかみ合っていない現状を如実に表しています。

多くの企業において、AIモデルの導入には熱心でも、それを支えるデータセンター、ネットワーク、電力供給といった「足回り」の整備が追いついていないことが想定されます。レガシーなシステムや断片化されたデータ基盤がボトルネックとなり、AIのポテンシャルを十分に引き出せていない可能性が高いでしょう。組織全体で統合されたプラットフォームと信頼できるデータがなければ、AI投資は単発的な実験に終わり、全社的な変革にはつながらないリスクがあります。

「利益か環境か」という二項対立の罠

AIの急速なスケーリング(規模拡大)に伴い、環境負荷への懸念が高まっています。回答者の83%がAI普及による環境コストを認識している一方で、75%のCEOが「サステナビリティの追求は収益性を犠牲にする」と考えています。さらに、約70%がAIワークロードにおいてパフォーマンスを最優先しており、環境配慮が後回しにされている実態が明らかになりました。

このデータは、多くの経営者が環境対策と事業成長を「ゼロサムゲーム(一方が得をすれば他方が損をする)」として捉えていることを示唆しています。既存のコンピューティング技術の延長線上では、計算能力の向上と消費電力の削減を両立させることが物理的に困難な領域に達しつつあるのでしょう。この意識構造を打破しない限り、AIの進化はエネルギー供給の限界によって頭打ちになる恐れがあります。

ガバナンス欠如が招く「シャドーAI」のリスク

インフラの未整備は、セキュリティやガバナンスの課題にも直結します。現場部門が許可なくAIツールを使用する「シャドーAI」のリスクとして、データ漏洩(41%)やデータの完全性の欠如(40%)が上位に挙げられました。AIが組織の意思決定に関与する比重が高まるなか、不正確なデータやセキュリティの脆弱性は、企業の信頼を根底から揺るがす可能性があります。

67%のリーダーは効果的なガバナンスプロセスを導入済みとしていますが、前述のインフラへの不安と照らし合わせると、その実効性には疑問符がつきます。AIと人間が協調する未来を見据えた際、単なるルールの策定だけでなく、安全にデータを流通させるための堅牢な技術基盤が不可欠となります。セキュリティと利便性を両立させるインフラの再構築が求められています。

物理的限界を超える「光技術」への期待

従来の電子技術によるデータ処理が限界を迎えつつあるなか、解決策として注目されているのが「フォトニクス(光技術)」です。NTTが推進する「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)」構想は、ネットワークから端末内部のチップ間通信までを光でつなぐことで、電力効率を100倍、伝送容量を125倍に高め、遅延を200分の1に抑えることを目標としています。

調査では、経営層の91%がフォトニクスを認知しており、55%が導入に強い関心を示しています。これは、光技術が単なる通信の高速化だけでなく、AIの消費電力問題という経営課題を解決する「ゲームチェンジャー」として認識され始めていることを意味します。電子から光へのパラダイムシフトは、サステナビリティとパフォーマンスの二項対立を解消し、持続可能なAIインフラを実現する現実的な解となるでしょう。

今後の展望

今回の調査結果は、AI投資が「ソフトウェアの導入」から「物理インフラの刷新」へとフェーズを移行させる必要性を示しています。これまでの延長線上で計算リソースを増やせば、電力消費と環境負荷は制御不能なレベルに達すると考えられます。今後のビジネスにおいては、AIのモデル性能だけでなく、それを支えるインフラの「エネルギー効率」と「レジリエンス(強靭性)」が競争力の決定的な差となるでしょう。

企業には、サステナビリティをコストではなく、技術革新のドライバーとして捉え直す視点が求められます。具体的には、IOWNのような次世代の光技術インフラへの早期適応や、セキュリティとデータガバナンスを組み込んだ統合的なプラットフォームの構築が重要な選択肢の一つとなるでしょう。

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