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中小企業にとってのAI投資

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AI技術の進化により、企業の業務効率化や意思決定の最適化が進みつつあります。これまで大企業が主に活用してきたAIですが、近年では中小企業にとっても手の届く技術となりつつあります。生成AIを含む最新のAI技術は、業務の自動化やデータ分析の高度化を支え、企業の成長を加速させるテクノロジーとして注目されています。

IDCのレポートによると、2027年までにアジア太平洋地域(日本を除く)の50%の中小企業が、AI導入を前提としたIT予算の見直しを行うとされています。

IDC Predicts: 50% of Small Medium Businesses Will Adjust IT Budgets for AI by 2027

こういった状況の中、中小企業はどのようにAIを活用し、自社の競争力を高めていくかが今後のテーマとなっています。

AI投資が加速する背景

中小企業がAIへの投資を拡大する背景には、以下の3つの要因があります。

1. AIの導入事例が増加し、投資の判断材料が整ってきた

これまでAIは「導入したいが効果が不明」という課題がありました。しかし、最近ではAIを活用した成功事例が増え、ROI(投資対効果)の可視化が進んでいるため、多くの企業が安心してAI導入を検討するようになっています。2025年までに、70%の中小企業が具体的なAI活用事例を求めると予測されており、ベンダーやサービスプロバイダーは、より明確な活用モデルの提示を求められています。

2. 人材不足の解決策としてAIが期待されている

中小企業にとって、人材の確保と育成は重要な経営課題です。しかし、採用が難しくなる中で、業務の効率化を進める手段としてAIが注目されています。たとえば、カスタマーサポートの自動化、営業支援ツールの活用、データ入力の自動化など、AIを活用することで業務負担を軽減できるケースが増えています。IDCの予測によれば、2025年には30%の中小企業が、AIを活用して業務効率向上を最優先事項とするとされています。

3. サイバーセキュリティ対策の強化が求められている

AIの普及に伴い、サイバー攻撃のリスクも高まっています。企業のデジタル化が進む中で、セキュリティ対策が不十分な企業は、サイバー攻撃の標的になりやすいという現実があります。そのため、2027年までに35%の中小企業がAIを活用したセキュリティ対策を導入すると予測されています。特に、AIを活用したエンドポイントセキュリティやネットワーク監視システムの需要が高まっています。

AI導入のハードルと解決策

AI導入には多くのメリットがありますが、一方で中小企業が直面する課題もあります。

コスト負担の問題

AIを導入するには、初期投資や運用コストがかかります。しかし、最近ではAI-as-a-Service(AIaaS)が普及し、クラウドを活用することで導入コストを抑えられるようになっています。IDCのレポートでは、2026年までに80%のAIベンダーが中小企業向けのAIソリューションを提供するとされており、AI活用のハードルは低くなりつつあります。

専門知識の不足

AIの活用には一定の技術知識が必要ですが、プリセットモデルを活用することで、専門知識がなくてもAIを導入できる環境が整いつつあります。たとえば、ノーコード/ローコードのAIプラットフォームを活用すれば、プログラミングの知識がなくてもAIを業務に活用することが可能です。

データの管理と活用

AIの効果を最大化するには、適切なデータの収集と管理が不可欠です。データが十分にないと、AIの精度が低下し、期待した成果を得られない場合があります。この問題を解決するために、多くの企業がクラウドベースのデータプラットフォームを活用し、リアルタイムデータを活かしたAI活用を進めています。

今後の展望--AI活用が企業の成長を左右する

IDCのアジア太平洋地域リサーチマネージャーであるSupriya Deka氏は、次のように述べています。

AI、クラウド、セキュリティなどのテクノロジーは、企業の業務プロセスを大きく変革しています。AIはもはや贅沢品ではなく、競争力を維持するために必要な技術となっています。

AIを活用する企業とそうでない企業の間には、今後ますます大きな成長の差が生まれると考えられます。AI投資を単なるコストではなく、事業成長のための戦略的な投資と捉える企業が、今後の市場競争で優位に立つでしょう。

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出典:IDC 2025.2

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