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スタートアップにによる創出GDPは10兆円超、間接効果を含めると20兆円弱に

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経済産業省は2024年7月22日、スタートアップが日本経済にもたらす経済効果について調査した「スタートアップによる経済波及効果」の調査概要を公表しました。この調査結果を基に、今後もスタートアップの成長に向けた支援を行う方針が示されています。

政府は、2022年に策定された「スタートアップ育成5か年計画」に基づき、スタートアップの成長を促進するための環境整備を進めています。本調査では、スタートアップが日本経済に与える影響を把握し、その経済的・社会的インパクトを測定することを目的としおり、そのポイントを取り上げたいと思います。

創出GDPは10兆円超、間接効果を含めると20兆円弱に

調査の結果、スタートアップによる経済効果は以下の通りです。

創出GDP:10.47兆円(間接波及効果を含めると19.39兆円)
雇用創出:52万人
所得創出:3.17兆円

出典:「スタートアップによる経済波及効果」の調査概要 2024.7.22

この調査結果をみると、スタートアップが日本経済に一定の貢献をしていることを示しています。特に、間接波及効果まで含めたGDP創出額19.39兆円は、北海道(19.73兆円)や福岡県(18.89兆円)の県内名目総生産に相当する規模といいます。

今回の調査では、1995年以降に設立され、外部出資を受けた約9,000社のスタートアップを対象に、スタートアップの直接効果と間接波及効果を測定しています。

直接効果とは、スタートアップの経済活動により創出される付加価値を指し、間接波及効果とはスタートアップに対するサプライヤーの経済活動や所得創出に伴う消費支出が連鎖的に創出する経済効果を指しています。

スタートアップの経済活動はサプライチェーン全体に影響

スタートアップによる経済効果の試算結果は、直接効果として10.47兆円、間接波及効果として8.92兆円が示され、総計19.39兆円のGDP創出効果を見込んでいます。この試算では、スタートアップの経済活動がサプライチェーン全体に及ぼす影響を包括的に評価しています。

また、スタートアップは52万人の雇用を創出し、3.17兆円の所得を生み出しており、スタートアップが日本の労働市場に与えるポジティブな影響があることを強調しています。特に、スタートアップによる新規雇用は、若者や技術者に新たな職業機会を提供し、地域経済の活性化にも寄与するといいます。

日本政府は2013年の「日本再興戦略」以来、スタートアップ支援に力を入れてきました。当時、国内でイノベーションを起こし、付加価値の高い新たな事業や産業を生み出すベンチャー企業への投資を促進する方針を示しました。その結果、日本のCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)活動が活性化し、スタートアップへの出資が拡大しつつあります。

本調査では、スタートアップのうち約70%がベンチャーキャピタル(VC)からの出資を受けているといいます。VC出資を受けたスタートアップは、創出GDPの72%を占め、5.01兆円の所得を生み出しています。これらの企業は、国内のスタートアップ経済において重要な役割を果たしていると言えるでしょう。

出典:「スタートアップによる経済波及効果」の調査概要 2024.7.22

これまでの10年間で、スタートアップが買い手となったM&A(企業買収)の件数が増加しています。スタートアップ自身が他のスタートアップを買収することで、企業規模を拡大し、より大きな経済効果を生み出していますす。特に、EXIT済企業(IPOまたはM&A済み)の存在感が際立っており、これらの企業が創出するGDPの大部分を占めています。

産業別に見ると、情報通信産業が最も大きな経済効果を生み出しており、スタートアップによる創出GDPの29%を占めています。次いで、商業(19%)、対事業所サービス(16%)、不動産(9%)、金融・保険(5%)と続きます。これら上位5つの産業で全体の78%を占めています。

出典:「スタートアップによる経済波及効果」の調査概要 2024.7.22

情報通信産業におけるスタートアップの活躍は、特にデジタル技術の進展と密接に関連しています。AI、IoT、ビッグデータ解析などの分野での革新が、情報通信産業全体の成長を牽引しています。商業分野では、eコマースやフィンテックのスタートアップが新たな市場を開拓し、消費者行動の変革を促しています。

スタートアップによる経済効果を他国とも比較していますが、日本のスタートアップは累積調達総額で見ると他国よりも低い水準にあります。その一方で、GDP創出効果の絶対額や対全体GDP比率では一定の成果を上げています。

日本のスタートアップによるGDP創出額は10.47兆円であり、全体GDPに占める割合は1.85%です。一方、イギリスのスタートアップによるGDP創出額は24.7兆円であり、全体GDPに占める割合は5.92%となっています。この差は、資金調達のスケールやスタートアップの成長環境の違いに起因しているといいます。

出典:「スタートアップによる経済波及効果」の調査概要 2024.7.22

今後の展望

経済産業省が示す「スタートアップによる経済波及効果」調査は、スタートアップが日本経済にもたらす重要な役割を示しています。

今後、政府はこの調査結果を基に、スタートアップの成長をさらに支援する政策を推進していく方針です。スタートアップの成長は、日本経済の発展に不可欠な要素であり、引き続き注目される分野となるでしょう。個人的にも、このスタートアップの動きにはウオッチしていきたいと思います。

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