急増するデータ量への対応:次世代グリーンデータセンターの革新技術
生成AIの急拡大で次世代グリーンデータセンターの技術開発が急務となっています。
経済産業省は2024年4月24日、「第23回 産業構造審議会 グリーンイノベーションプロジェクト部会 産業構造転換分野ワーキンググループ」を開催しました。
本審議会の中では、次世代デジタルインフラ構築における主な成果と今後の展開について、議論・検討を行っています。
急増する計算量への対応
生成AIの登場等により、学習に必要な計算能力は加速度的に増加。今後、生成AIの開発を進めていくためには、大規模な計算資源の確保が急務となっています。
必要な計算量の急増に伴い、消費電力量も急速に増加しています。AI開発を行う計算能力の確保とともに、低消費電力化も早急に進めていく必要を指摘しています。
グリーンデータセンターの市場規模
グローバルDC市場規模は2021年時点で552億米ドルと推定されており、2030年には1,241億米ドルまで拡大する見込み(CAGR+9.2%)となっています。また、2018年時点でグリーンデータセンターの市場規模は65億米ドルであり、2026年には350億米ドルまで拡大すると予想しています(CAGR+23.4%)。
グリーンデータセンターに関する明確な定義はありませんが、本審議会では、
一般的には、通常のデータセンターの同等の機能を前提とし、環境への影響に配慮して、スペース及び消費エネルギーの抑制を図るデータセンター
と整理しています。
次世代グリーンデータセンターの技術開発
DXや生成AIの普及によりデータ量が急増する中、経済産業省では省エネ化かつ効率的に処理するためのデータセンターの省エネ化及び革新的エッジコンピューティング技術を開発する計画です。
これまでの次世代グリーンデータセンターの技術開発の主な成果では、
①CPU省電力化に向けた低電圧駆動回路の基本設計を完了
②100℃以上の高温に耐える光電融合デバイスの開発
③AIによりアプリに応じて計算リソースを最適配置する、ディスアグリ制御ソフトの初期版を実装し、一部を公開
といった取組をしています。
今後は、省電力CPU・メモリ、光電融合デバイス、ディスアグリゲーション、光NWインタフェースカードの開発により、データセンターの40%以上の省エネ化を目標としています。この次世代グリーンデータセンターの開発には、814.2億円の予算を計上しています。
データセンターの革新的省エネ化に向けてゲームチェンジ技術として登場したのが「光電融合技術」です。
光電融合技術は、電子デバイスに光エレクトロニクスを融合し、電気配線を光配線に置きかえることで、省エネ化・大容量化・低遅延化を実現(ネットワークシステム全体で電力消費1/100)するとしています。
本プロジェクトでは、サーバ内等の電気配線を光配線化する革新的な光電融合技術によりデータ集約拠点であるデータセンターの40%以上の大幅な省エネ化を目指しています。
次世代グリーンデータセンター開発進捗
次世代グリーンデータセンターの開発進捗は、以下の状況となっています。
サーバーを構成するCPU、メモリなど要素デバイスの高性能化・省エネ化、チップ間光配線化を実現する光電融合技術技術の開発、CPUやメモリなどの計算負荷を最適配置するディスアグリゲーション技術の研究開発を実施。システム全体で省電力40%削減を目指す。
CPUについて、最先端半導体TEG(2nm)による搭載カスタムマクロの設計を行うことで、低電圧回路動作の目処がたち、CPUの省電力1/10に向けた3D実装設計を実施中。
光電融合技術について、PCIe5.0光モジュールで動作環境温度100℃を達成し、サーバーへのシステムに供給が開始。
ディスアグリゲーションについて、効率的なリソース、配置の組み合わせをAI/MLで探索・自律適用する方式等を取り入れ、自律的に制御するソフトウェア開発を実施。2026年度以降のシステム実証において、消費電力を20%削減できる見込み。
今後の展望
経済産業省では「次世代グリーンデータセンター技術の発信」というテーマで、プロジェクトの成果により実現される、未来社会の一端を体験する展示を、大阪万博で出展を予定しています。
今後の生成AIの普及によるデータ量の爆発的増加により、データセンターの省エネ化や効率化への対応が急務となっています。これらの解決するためには、光電融合技術技術やディスアグリゲーション技術の開発と、量産化、さらには、市場への普及が重要となっています。
環境負荷への軽減と、経済成長という相反することを両立して取り組んでいくためには、次世代グリーンデータセンター技術開発と普及への対応を急いでいく必要があるでしょう。