オルタナティブ・ブログ > 『ビジネス2.0』の視点 >

ICT、クラウドコンピューティングをビジネスそして日本の力に!

日本における半導体産業の製造基盤とサプライチェーン

»

経済産業省は2023年11月29日、「第10回 半導体・デジタル産業戦略検討会議」を開催し、半導体・デジタル産業戦略の現状と今後などについて、議論・検討を行っています。

今回は、日本における半導体の製造基盤とサプライチェーンに焦点をあてて紹介したいと思います。

半導体産業に係る地方自治体が行うインフラ整備

大規模な生産拠点を整備する半導体企業が立地する地元自治体から、関連インフラの整備に関わる支援要望が届いており、関係府省が連携して、半導体等の大規模な生産拠点整備に必要な関連インフラ整備を推進する新たな支援制度を創設しています。

スクリーンショット 2024-01-07 143938.png

半導体産業に係る地方自治体が行うインフラ整備について
出典:経済産業省 第10回 半導体・デジタル産業戦略検討会議 2023.11.29

政府の支援により動き出している大規模な国内投資案件(半導体関係)では、

◼サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金(R2補正等5,168億円)
◼ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業(R3補正1,100億円、R4補正4,850億円)
◼先端半導体の国内生産拠点の確保(R3補正6,170億円、R4補正4,500億円)
◼サプライチェーン上不可欠性の高い半導体の生産設備の脱炭素化・刷新事業(R3補正470億円)
◼経済環境変化に応じた重要物資サプライチェーン強靱化支援事業(R4補正3,686億円)

スクリーンショット 2024-01-07 144611.png

政府の支援により動き出している大規模な国内投資案件(半導体関係)
出典:経済産業省 第10回 半導体・デジタル産業戦略検討会議 2023.11.29

パワード半導体の展開

パワー半導体は、様々な電気機器の制御に使用されており、電化社会に向けてその省エネ性能向上が不可欠(シリコンから、より省エネ性能に優れたシリコンカーバイドへの転換等)となっています。

日本では、国内企業が複数社でシェアを分け合い、個社単位ではシェア1位(27%)のインフィニオン(独)に大きく劣後しています。激化する国際競争を勝ち抜くため、個社の技術的優位性を活かしつつ、国内での連携・再編を図ることで、日本全体としてパワー半導体の競争力を向上する必要があり、今後も、グローバルにおいて、日本を欧州・米国と並ぶ世界の第三極の拠点とすることを目指しています。

スクリーンショット 2024-01-07 144904.png

日本列島をパワー半導体の世界拠点に
出典:経済産業省 第10回 半導体・デジタル産業戦略検討会議 2023.11.29

先端半導体の製造基盤確保

先端半導体の製造基盤整備への投資判断を後押しすべく、5G促進法およびNEDO法を改正し、令和4年3月1日に施行。同法に基づく支援のため、令和3年度補正予算で6,170億円、令和4年度補正予算で4,500億円を計上しています。

2023年10月までに、先端半導体の生産施設の整備および生産を行う計画につき、経済産業大臣による認定を4件実施しています。

スクリーンショット 2024-01-07 142503.png

先端半導体の製造基盤確保
出典:経済産業省 第10回 半導体・デジタル産業戦略検討会議 2023.11.29

JASM等による熊本への投資による各種効果

JASM等による熊本への投資による効果も期待されています。九州ファイナンシャルグループによる経済波及効果試算を紹介したいと思います。

①JASMによる熊本県への効果

熊本工場が稼働する2024年から2年間の経済波及効果を約1.8兆円と試算(2022年5月発表)。

2022年から10年間の経済波及効果を約4.3兆円と試算(2022年9月発表)。
 •経済波及効果は、①半導体関連産業の生産効果:約2.9兆円、②半導体関連産業の投資効果:約1.2兆円、③工業団地・土地造成の投資効果:約780億円、④住宅の投資効果:約1,360億円
 •約80社が熊本県内に拠点施設・工場増設
 •雇用効果:全体で約7,500人※このうちJASMによる直接雇用:1,700人

②電子デバイス産業全体(JASM、ソニー、三菱電機等)による熊本県への効果

TSMC進出を起点とした経済波及効果に対し、対象を電子デバイス産業全体に広げた結果、2022年から10年間の経済波及効果を約6.9兆円と試算(2023年8月発表)。
 •経済波及効果は、①半導体関連産業の生産効果:約4.1兆円、②半導体関連産業の投資効果:約2.4兆円、③工業団地・土地造成の投資効果:約1,010億円、④住宅の投資効果:約2,050億円
 •約90社が熊本県内に拠点施設・工場増設
 •雇用効果:全体で約10,700人

スクリーンショット 2024-01-07 142915.png

JASM等による熊本への投資による各種効果(試算)
出典:経済産業省 第10回 半導体・デジタル産業戦略検討会議 2023.11.29

JASM等による熊本への投資による各種効果(既に顕在化した効果)では、九州7県での2023年度の設備投資額(計画値)は前年度実績に比べ61.7%増の1兆105億円となり、伸び率は1956年の調査開始以降で最大となるなど、大きな効果が出ています。

スクリーンショット 2024-01-07 143034.png

JASM等による熊本への投資による各種効果(既に顕在化した効果)
出典:経済産業省 第10回 半導体・デジタル産業戦略検討会議 2023.11.29

半導体関連企業の主な設備投資計画・立地協定をまとめていますが、九州が半導体の集積地となっています。

スクリーンショット 2024-01-07 143245.png

出典:経済産業省 第10回 半導体・デジタル産業戦略検討会議 2023.11.29

経済安保推進法に基づく半導体サプライチェーンの強靭化も重要となっています。

経済産業省では、経済安全保障推進法に基づき、特定重要物資として指定された半導体(従来型半導体及び、半導体のサプライチェーンを構成する製造装置・部素材・原料)の製造能力の強化等を図ることで、各種半導体の国内生産能力を維持・強化していく方針です。

半導体サプライチェーン強靭化支援事業(令和4年度補正予算、合計3,686億円)において、従来型半導体1件、製造装置1件、部素材5件、原料9件の供給確保計画を認定済(令和5年10月末時点)。16件合計で、事業総額は約6,000億円、助成額は最大約2,000億円となっています。

半導体製造装置や部素材のサプライチェーン上流にある部品や素材等の中には、装置や部素材の性能を左右する重要なものが存在しています。もしこれらの供給が途絶すれば、装置や部素材、ひいては半導体自体の製造が困難となる懸念があるため、その生産基盤を強化することは重要な課題となります。

スクリーンショット 2024-01-07 144114.png

経済安保推進法に基づく半導体サプライチェーンの強靭化
出典:経済産業省 第10回 半導体・デジタル産業戦略検討会議 2023.11.29

経済安保推進法に基づく認定供給確保計画(半導体)では、以下のようにサプライチェーン確保に取り組んでいます。

スクリーンショット 2024-01-07 143510.png

経済安保推進法に基づく認定供給確保計画(半導体)
出典:経済産業省 第10回 半導体・デジタル産業戦略検討会議 2023.11.29

半導体「安定供給確保取組方針」改定案では、、2030年に、国内で半導体を生産する企業の合計売上高(半導体関連)として、15兆円超を実現し、我が国の半導体の安定的な供給を確保するすることを目標とし、安定供給確保に向けた施策の取り組み指針も示しています。

スクリーンショット 2024-01-07 144302.png

半導体「安定供給確保取組方針」改定案
出典:経済産業省 第10回 半導体・デジタル産業戦略検討会議 2023.11.29

Comment(0)