日本の半導体産業復活の基本戦略と全体像
生成系AIの登場と量子コンピュータやAIコンピュータ等の情報処理の異次元の飛躍が相まってデータセンターにおける計算処理も更に圧倒的に拡大/用途別化が進んでいます。
また、エッジ領域における分散情報処理の拡大が見込まれ、さらに、消費電力の削減も求められています。日本の産業全体として真のDXを実現する最後の機会であり、また、自動車・ロボティクスをはじめとするものづくり産業の競争力にとっても絶好機であるとともに、この流れに取り残されることは死活問題となっています。
新たなデジタル社会におけるユーザー産業の競争力の強化に向けて、その付加価値の源泉となる半導体・デジタル産業基盤を日本に整備・確保することが不可欠となっています。
こういった状況の中、経済産業省は2023年11月29日、「第10回 半導体・デジタル産業戦略検討会議」を開催し、半導体・デジタル産業戦略の現状と今後などについて、議論・検討を行っています。
今回はこの中から、日本の半導体産業復活の基本戦略と全体像についてとりあげたいと思います。
半導体産業復活の基本戦略
日本における半導体産業復活の基本戦略では3つのステップを計画しています。
IoT用半導体生産基盤の緊急強化(Step:1)
日米連携による次世代半導体技術基盤(Step:2)
グローバル連携による将来技術基盤(Step:3)
これにより、2020年の市場規模全体の50兆円から、2030年には約100兆円の市場を目指しています。
出典:経済産業省 第10回 半導体・デジタル産業戦略検討会議 2023.11.29
今後の半導体戦略の全体像では、先端ロジック半導体、先端メモリ半導体、産業用スペシャリティ半導体、先端パッケージのそれぞれの取組で、3つのステップをまとめています。私自身が注目しているのが、先端ロジック半導体におけるステップ3つの光電融合等ゲームチェンジとなる将来技術の開発です。
光電融合が進展すれば、データセンターから自動運転、スマートフォンまで、さまざまなゲームチェンジが起こる可能性があるでしょう。
出典:経済産業省 第10回 半導体・デジタル産業戦略検討会議 2023.11.29
出典:経済産業省 第10回 半導体・デジタル産業戦略検討会議 2023.11.29
続いて、人材育成と国際連携、そしてグリーンへの対応です。
人材育成
・地域の特性に合わせた地域単位での産学官連携による人材育成(人材育成コンソ等)
・次世代半導体の設計・製造を担うプロフェッショナル・グローバル人材の育成
国際連携
・日米関係では、日米半導体協力基本原則に基づき、共同タスクフォース等の枠組みを活用し、米NSTCとLSTCを起点に連携を深め、次世代半導体の開発等に取り組む
・EU・ベルギー・オランダ・英国・韓国・台湾等の諸外国・地域と、次世代半導体のユースケース作りや研究開発の連携等に関し、相手国・地域のニーズ等に応じて進める
グリーン
・PFAS規制への対応
・半導体の高集積化・アーキテクチャの最適化・次世代素材開発により、半導体の高性能化・グリーン化を実現
生成AIの進展や経済安全保障などの観点から半導体戦略の重要性が高まっており、これらの動きにには今後も注視していきたいと思います。