欧州におけるデータ連携、Catena-Xについて
経済産業省は2024年1月17日、「第19回 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会」を開催しました。
今回はこの中から、欧州におけるデータ連携基盤の一つとなる、Catena-Xについて取り上げたいと思います。
EUでは、データ主権やデジタルプラットフォーム間の相互運用性の確保、ソースコードのオープン化を実現しながら、連邦型の基盤を通じて安全にデータを連携する取組が、EU規則ベースのトップダウンと民間ベースのボトムアップの双方で進められています。
サステナビリティ、サプライチェーンのレジリエンス強化等への対応を目的とするものであると同時に、ビジネスコストの最小化やイノベーション促進ほか、産業競争力向上の実現も企図するものです。
欧州におけるデータ連携の取組の概観は以下のとおりです。
この中で、Catena-Xの目指す姿をとりあげます。
Catena-Xは、世界の自動車業界に共通する以下の課題解決から着手し、2024年以降ユースケースを拡大させており、以下の取組を実施しています。
‒マスターデータサービス、企業のユニークID
‒脱炭素とESGレポーティング
‒資源循環とプロダクト・パスポート
‒需要・キャパシティマネジメント
‒部品のトレーサビリティ
‒ライフサイクルでの品質管理・根本原因分析
Catena-Xへの参加企業が享受出来る参加メリットとしては、以下の内容を挙げています。
〈デジタル主権の提供/獲得〉
•自社データのコントロール
•プロバイダーの選択権
•データの保管、運用方法
•自己管理とトラスト
〈価値創出までの時間短縮〉
•組織のデジタルレディネスの向上
•ユースケースを通じた自社ビジネスのエンパワーメント
〈DX/ビジネスコスト最小化〉
• ITインターフェースの統合
•業界内でのサービスシェア
•ユースケース間のシナジー創出
〈DX/イノベーションの促進〉
•新たなバリュープールへの参加と競争優位性の獲得
出典:経済産業省 第19回 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 2024.1.17
Catena-Xについて、もう少し解説していきたいと思います。
Catena-Xは当初はドイツ企業中心だったが、現在はボードメンバーにルノー(仏)・Valeo(仏)・IBM(米)が、アドバイザリー委員会にGALIA(仏自動車工業会)・HUAWEI(中)が参画しています。
また、22年11月にフランス、23年5月にスウェーデンに、国際ハブ拠点が設立。さらに、日本、米国、中国等への働きかけを強化しており、特に中国が強い関心を示している模様です。
出典:経済産業省 第19回 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 2024.1.17
Catena-X、Manufacturing-Xの関係もみていきましょう。
19年10月、ドイツ・フランス両政府は、欧州独自のデータインフラ構築に向けたプロジェクトとしてGAIA-X構想を発表。21年1月、独仏の企業や研究機関によってGAIA-Xが設立されています。
21年5月、BMWやSAP等によってCatena-X協会が設立。同年8月、ドイツ政府が本プロジェクトへの支援を発表。GAIA-Xのうち、自動車向けデータエコシステムに係るプロジェクトとなります。
そして、22年8月、ドイツ政府は、Catena-Xの取組を他の製造業に横展開するため、Manufacturing-X構想を発表。現在、具体化が進められています。
出典:経済産業省 第19回 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 2024.1.17