量子技術イノベーション戦略 ロードマップ改訂(案)
内閣府は2022年4月22日、「統合イノベーション戦略推進会議(第11回)」を開催しました。
この中から、量子技術イノベーション戦略 ロードマップ改訂(案)について、とりあげたいと思います。
量子技術イノベーション戦略 ロードマップ改訂(案)では、
1.技術ロードマップ
(1)量子コンピュータ・量子シミュレーション
①量子コンピュータ(超伝導量子ビット)
②量子ソフトウェア(ゲート型)
③量子ソフトウェア(アニーリング型)
④量子シミュレーション(冷却原子)
⑤量子アニーリングマシン(超伝導量子ビット)
⑥量子コンピュータ(イオントラップ量子ビット)
⑦量子コンピュータ(シリコン量子ビット)
⑧量子コンピュータ(光量子ビット)
(2)量子計測・センシング
⑨固体量子センサ(ダイヤモンドNV中心等)
⑩量子慣性センサ
⑪光格子時計
⑫量子もつれ光センサ
⑬量子スピントロニクスセンサ(トンネル磁気抵抗セン
サ・スピン熱流センサ)
(3)量子通信・暗号
⑭量子通信・暗号リンク技術
⑮量子中継技術(量子メモリ・量子もつれ等)
⑯ネットワーク化技術(構築、運用、保守等)
2.融合領域ロードマップ
(1)量子コンピュータ・量子シミュレーション
①量子AI技術
(2)量子計測・センシング
②量子生命科学(生体ナノ量子センサ)
③量子生命科学(量子技術を用いた超高感度MRI/NMR)
④量子生命科学(量子論的生命現象の解明・模倣)
(3)量子通信・暗号
⑤量子セキュリティ技術
で目次を整理しています。
すべては紹介できないので、いくつかピックアップして紹介をしたいと思います。
①量子コンピュータ(超伝導量子ビット)
○ 大規模で複雑な計算を高速・高精度で実行可能な誤り耐性汎用量子コンピュータを実現
○ 2030年以降、1,000個程度の物理量子ビットを実装。さらに、量子誤り訂正された50個程度の論理量子ビットを実装
○ 大規模化に向けた設計支援技術や冷凍・低温技術開発により、大規模化を進める
出典:統合イノベーション戦略推進会議(第11回) 2022.4.22
②量子ソフトウェア(ゲート型)
○ 大きな原子・分子系の物理・化学計算が実現し、材料・医学・創薬・機械学習、金融、セキュリティなど幅広い応用が可能に
○ 1,000個以上の量子ビットを実装した量子超越性の実証、誤り訂正量子コンピュータに実装
○ 物理・化学・計算科学の基礎理論に基づき量子計算に適したアルゴリズムの創出、融合領域を開拓
出典:統合イノベーション戦略推進会議(第11回) 2022.4.22
③量子ソフトウェア(アニーリング型)
○ 交通や工場プロセス、製造スケジュールの最適化から、自動車の自動運転技術への応用まで、様々な最適化問題に対応
○ 2025-2030年以降、組合せ最適化問題に組み込む課題のモデル化やイジングモデルの機械学習、交通や工場プロセス、自動車技術などへの適用
○ ユーザ向けのツールの開発、多様な分野に適用可能なミドルウェア・ソフトウェア技術の高度化より、大規模社会実装を進める
出典:統合イノベーション戦略推進会議(第11回) 2022.4.22
⑤量子アニーリングマシン(超伝導量子ビット)
○ 2030年以降、高いコヒーレンス性能の1万量子ビット級の量子アニーリングマシンの実用化により、物流・交通流最適化、金融、機械学習、レコメンデーション等のリアルタイム性向上
○ 低温エレクトロニクス及び3次元実装技術の開発により、量子アニーリングマシンの大規模集積化を進める
○ 長期的には、量子コンピュータ及び古典コンピュータとのハイブリッドクラウド化による社会実装を追求していく
出典:統合イノベーション戦略推進会議(第11回) 2022.4.22
⑥量子コンピュータ(イオントラップ量子ビット)
○ イオントラップモジュール間の光接続技術を確立し、大規模誤り耐性量子計算を実現
○ イオントラップ製造技術を確立、それをベースにしてイオントラップモジュール製造・制御技術を確立し、小型化・量産化を実現
○ 量子計算の大規模化に必要なレーザー技術・低温技術・真空技術を発展させ、広い理学・工学分野研究領域、産業へ応用
出典:統合イノベーション戦略推進会議(第11回) 2022.4.22
⑦量子コンピュータ(シリコン量子ビット)
○ シリコン量子ビットアレイ集積化技術を確立し、大規模量子演算を実現できる小型な量子コンピュータを実現
○ 2030年以降、量子コンピュータ処理ニーズの拡大に対応し、小型の強みを生かしたエッジコンピューティング(※ユーザエンドに近いネットワーク位置での処理)等の分散処理にユースポイントを拡大
○ シリコン量子コンピュータの開発は半導体技術を高めるものであり、研究開発実施に伴って高度半導体技術人材が輩出される副次的効果も得られる
出典:統合イノベーション戦略推進会議(第11回) 2022.4.22
⑧量子コンピュータ(光量子ビット)
○ ボソニック符号光量子ビットと連続量量子ゲートを用いて大規模光量子コンピュータを実装、さらに超高速動作可能な全光学式量子コンピュータも狙う
○ 光を用いた他の量子情報処理技術(量子インターネット・量子センシング・大容量通信など)にスムーズに応用・接続
○ 高効率・高速動作の量子光源・光回路・光検出技術と、低遅延・高速動作エレクトロニクスにより高速化・大規模化を進める
出典:統合イノベーション戦略推進会議(第11回) 2022.4.22
⑭量子通信・暗号リンク技術
○ 量子暗号装置の製品化によって、様々なセキュリティアプリケーションの安全性を強化
○ 2025年までに都市圏で10Mbpsの量子暗号通信、2030年までに都市間スケールへの拡張(長距離化)の実証
○ 高性能な単一光子検出器や量子もつれ光源、乱数源等の研究開発。加えて、QKDの新方式の研究開発
出典:統合イノベーション戦略推進会議(第11回) 2022.4.22
⑮量子中継技術(量子メモリ・量子もつれ等)
○ 量子インターネット接続による秘匿量子計算や分散量子計算を実現することで、データ処理を高速化
○ 2030年までに3地点間量子もつれ配信、2040年までに量子もつれ配信を用いた 1 kbps を超える鍵生成、量子コンピュータネットワークを実現
○ 量子中継器を実現するための量子メモリ実装、量子もつれ生成及び光との接続技術等の研究開発
出典:統合イノベーション戦略推進会議(第11回) 2022.4.22
⑯ネットワーク化技術(構築、運用、保守等)
○ 地上系・衛星系を統合した量子暗号ネットワーク、深宇宙量子通信ネットワーク及び量子インターネットを構築、安全で高効率なネットワークを実現
○ 2030年までに都市圏メッシュ、2040年までにグローバル量子暗号ネットワークを実現、深宇宙量子通信及び量子インターネットを実証
○ リンク技術・量子中継技術を駆使した量子通信・暗号のネットワーク化技術や古典NWとの融合を含む量子インターネット基盤技術等に関する研究開発
出典:統合イノベーション戦略推進会議(第11回) 2022.4.22
⑤量子セキュリティ技術
○ 政府機関等のアーリアダプタによる利用や、企業ユーザ及び一般ユーザ向けの高セキュリティ通信サービスを実現
○ 2025年までに量子セキュアクラウドを実現、2035年までに量子セキュアクラウドとレガシー認証基盤の統合及び広域化
○ 量子暗号技術と計算量に依らないセキュリティ技術(秘密分散技術等)の有機的融合、これらと認証基盤との連携を推進
出典:統合イノベーション戦略推進会議(第11回) 2022.4.22