自動走行で求められるIT人材 〜自動走行IT人材戦略から
経済産業省は2019年4月8日、「自動走行IT人材戦略」を公表しました。
自動化やコネクテッド化等の自動車業界の潮流に伴い、制御系に加え、知能系(認識、判断、パス計画等)、情報系(地図情報、マルチメディア等)、基盤系(OS、セキュリティ、数学等)の IT 人材不足が今後深刻になると予想されています。
特に、AI 人材不足は自動走行の競争力を左右しうる喫緊の課題であることに加え、コネクテッド化が進み、自動走行の安全を担保する上でも重要な課題となったセキュリティ分野は高度な専門性を要し、人材不足感が強いと指摘しています。
加えて、自動車開発プロセスの上流でシステムの全体理解に基づく要求分析のできるアーキテクト、機能安全(ISO26262 への対応)、自動走行時代を見据えた新しい安全性評価など業界の地力を高める上で基盤となる分野でも引き続き、人材を確保していくことが重要であるとしています。
政府では、今後の取り組みとして、以下の方向感を示しています。
1.トップ人材(AI 等)の引き込み・育成
自動運転の競争力を左右しかねないトップ AI 人材については、喫緊の課題である一方で、自動車業界・国内で一長一短に育成することは困難であることから、2018年度に実施した自動運転 AI チャレンジのように情報系の学生や自動車業界外のトップ人材を引き付けるイベントを、引き続き、産学の連携をいっそう強化しつつ、業界大で実施し、国際的な取組につなげていくなど、他業界・海外からの AI 人材の引き込みを狙っていく。
さらに、政府の各種戦略で AI 人材育成が位置付けられ、様々な施策が行われていることを自動車業界としても好機ととらえ、2018 年度は、未踏アドバンスト事業のプロジェクトマネージャを自動車業界から推薦する等の連携を進めたところ。中長期的に国内の AI 人材を自動車業界に引き込むことを狙って、トップ AI 人材の育成に係る各種施策との連携の在り方について検討していく。
2.マス人材の自動車×IT の人材エコシステムの構築
自動化やコネクテッド化等の自動車業界の潮流に伴い、顕在化する IT 人材の不足感に対し、2018 年度は、自動走行に焦点を当て自動車ソフトウェア人材に求めら
れる新しいスキルを体系的に整理・見える化し、産学官がスキル領域について、共通の認識を持って、人材の育成・確保の取組を進めるインフラとして、自動走行ソフト開発スキル標準(以下、「スキル標準」)を策定した。スキル標準の最上位のスキル階層においては、自動走行ソフトウェアのスキル全体を網羅しつつ、JASPAR 版 ETSS(JASPAR 版組込みスキル標準、2010 年)からの差分を対象として、技術動向調査、有識者意見を参考に主要なスキル項目を特定し、スキル標準最上位の第1階層に対して、技術の成熟度、緊急性、必要性に基づき3領域(認知系技術、システムズエンジニアリング、新しい安全性評価)を特定して具体化した。
3.自動走行×IT の人材エコシステムのグローバル化
今後国内の労働力市場もひっ迫し、ソフトウェア・IT の分野も例外ではないことから、自動車業界においても、国内にとどまらず、海外での IT 人材の育成・確保を視野
に入れることが必要である。とりわけ、AI 人材が量質ともに豊富な米中印等からの引き込みを意識し、自動車業界による海外のトップ大学でのジョブフェア、寄付講座といった人材確保・育成の取組を後押しするとともに、海外の AI 系のスタートアップとの協業機会の創出を図っていく。
さらに、今後インド、ASEAN 等のアジア諸国が巨大な IT 人材プールとなってくることを見据えながら、将来的なアジアでの自動車×IT の人材エコシステムにつなげて
いく視点が必要である。その際は、米国等で高度 IT 人材育成のためのオンライン講座や評価体系としてインフラになりつつある民間の取組(Udacity、Kaggle)などグローバル動向を参考にしながら、同時に整合を図っていく。
本戦略では、自動走行IT人材取り組みの工程表を策定しています。
・開発の核となるサイバーセキュリティを含むソフトウェア人材の不足解消に向け、発掘・確保・育成の推進を目指す。
・2018年度はスキル標準策定等を実施。2019年度はスキル標準を活用した講座開発を進める。
・サイバーセキュリティについて2017年度に講座を実施。今後は人材の必要性や職の魅力を業界協調で発信する取組を検討する。
出所:自動走行IT人材戦略 2019.4.8