スマートシティなど社会インフラ事業に舵を切るIT事業者
2011年になってから、「スマートシティ」や「スマートコミュニティ」などというキーワードをよく目にするようになりました。これまで議論されていた「スマートグリッド」よりも広い定義で、環境とITが融合する街の全体の社会インフラづくりが今求められるようになっています。さらに、社会インフラモデルを海外に展開する動きも出てきています。
これらの市場の動向を背景、IT各社のスマートシティなど社会インフラビジネスに軸足を移した取組みが見られるようになってきています。いくつかIT事業者の取組みを紹介したいと思います。
日本IBMは2011年2月8日、従来の研究開発部門を再編し、交通システムやエネルギーなど社会インフラ向けのIT関連技術の中核拠点として計画していることを明らかにしています。再編により、1件あたり数十億円規模の受注となる大型新規事業の受注を目指しています。IBMでは、Smarter Planetというスローガンのもと、「現在、都市のスマート化を図る"Smarter Cities"と企業のスマート化を図る"Smarter Enterprise"の2つに分けて取り組んでいます(関連記事、報道発表資料)。
NTTデータは1月25日、2月1日付けでグループ経営企画本部内に「スマートビジネス推進室」を設置することを発表しています。NTTデータでは、本組織を中核に、NTTデータグループとしては国内外におけるスマートコミュニティ関連プロジェクトの推進を目指しています(報道発表資料)。
日立製作所では、2月1日付けで「海外プロジェクトファイナンス本部」を設置し、スマートグリッドや水処理事業など、複数の事業分野を融合した提案やファイナンスへの対応など複合的な事業に対応できるような体制を構築しています。天津エコシティの建設や広州など環境都市のプロジェクトなどに参画しているように、グローバル規模での社会インフラ事業の受注獲得を目指しています(関連記事)。また、日立製作所では、国内9拠点に分散する主要研究所を3つの組織に統合し、ITと社会インフラを中心とした再編を2011年4月に実施する予定です。日立では2010年~12年度で計1兆2000億円の研究開発投資を予定しており社会インフラとIT事業のてこ入れを図っていく計画です(関連記事)。
その他、東芝なども社会インフラ事業に力をいれており、マーケットからも社会インフラ関連銘柄は成長分野として注目を集めています。
社会インフラ市場は、2030年までに合計40兆円を超える巨大市場に成長するといわれています。また、IDC Japanが1月31日公表した「スマートシティに関連する国内IT市場の支出額予測」によると、国内スマートシティ関連IT市場の規模は、2010年が2407億円だったと推定され、2015年には5352億円にまで拡大すると予測しています。スマートシティを支えるには、クラウドコンピューティングなどIT関連技術やサービスも必要となります。スマートシティなどの社会インフラビジネスは、グローバル市場の中で業界横断的な対応が必要とされるため、研究開発や体制整備、提携や投資など、巨大社会インフラ市場を見据えた事業モデルや体制の再構築が求められていくのかもしれません。