スマート革命と新聞、雑誌の運命、アップルの故ジョブズ氏肝いりのiPad専用新聞、デイリーの失敗の訳
<序文>
一人が七台のスマートデバイスを使いこなし「モノ支配論理からサービス支配論理」への転換を促進するスマート革命はメディアや機器、店舗や家庭、車などの再発明=創造的破壊を推し進めていますが、どうやら産業として消えゆく運命のメディアも存在するようです。
メディア王、ルパート・マードック氏(ニュースコープのCEO)とアップルの故スティーブ・ジョブズ氏、現在のアップルサービス部門のトップ、エディ・キュー氏が鳴り物入りで作り上げた「iPad専用新聞、デイリー」が12月15日をもってサービス廃止です。2011年2月創刊以来、2年も持ちませんでした。
新聞、雑誌にとってはアップルのニューススタンドも中々ビジネス面では活用が難しいようです。
一人一台のパソコン+ブラウザーからの移行が始まったスマート革命も電子新聞や電子雑誌の事業は、再発明ではなく、創造すら効果がない破壊に終わるのでしょうか?
★★News Corp to close iPad newspaper The Daily
★★ The Daily Drops Dead: What Murdoch's Failure Means For iPad Publishing
<出所:readwriteweb>
<どんなビジネスモデルだったのか>
ニュースコープはサービス開始時には約1.3憶ドルを投資しました。そして約20万人の有料定期購読者の獲得を目指していたようです。しかし実際にはその半分の10万人の定期購読者しか獲得できませんでした。定期購読料金は1週間に0.99ドル、年間39.99ドルです。そして売り上げの30%はアップルがカットします。その結果、年間約3千ドルの赤字であったといわれています。
今年の7月には170人のスタッフの内、50人をレイオフするなど改善努力はしていたようですが、及びませんでした。
<やっぱりコンテンツが王様!!>
色々な記事が出ており、そこでさまざまな失敗の理由が挙げられています。アップルの30%のカットが大き過ぎるとか、開始後たった4週間で「壁の中の花園」にする(外から見えなくする)のは記事の評価ができないし、宣伝にならないとかiPad専用が問題だとか、色々論じられています。
しかし最大の指摘は「コンテンツが一般記事と変わらない」といった点でしょぅ。最新式のタブレットであれ、アプリであれ、一般記事と大差ないコンテンツでは、有料電子新聞としての魅力がありません。(有料の価値がある記事は、経済記事と地方記事だけという見方もあります。)
フィナンシャルタイムスのようにHTML5にすればよいと言う見方もありますが、やはり記事の内容がまず第一だと考えられます。
また幾つかの調査によれば、タブレットの場合、一般記事はブラウザーで無料の記事をネットサーフィンにより読むのが一般的と指摘されています。わざわざお金をかけて読むのは、「コンテンツにその価値がある記事」や電子書籍のような「どうしても読みたい記事」だというわけです。この点はパソコンかスマート機器かと言った議論以前の話だと考えられます。
★★Survey: Tablet Owners Prefer Browsers to Native Apps
<出所:readwriteweb>
<電子新聞も電子雑誌も成功は難しい>
一部の有名なブランド紙(ニューヨークタイムス、フィナンシャルタイムス、ウオールストリートジャーナル紙)などを除いては、電子新聞が成功するのは中々困難なようです。電子新聞への移行により多くの一般紙が広告や紙の読者を失っています。(無論、中には少数の成功例もありますが)
電子雑誌ではハフントンポスト誌が2012年8月、一誌1ドルの値段をつけたiPad-based magazine(iPad専用雑誌)を廃止しています。わずか5週間の命でした。
こうみるとアップルのニューススタンドも新聞や雑誌の大きな運命(時代とともに大きく滅びる運命)を変えることはできず、生き残りをかけた最終レースの狭い窓口という気がします。無論、上記の調査によればニューススタンドで一部の電子新聞や電子雑誌が読まれている点は間違いありませんが。
★★Huffington's Quick Leap From Pay Wall